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ベネツィ大食い列伝
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「私を待っていた、だと?」
「あ、いや。正確には今待ってたのは違う人なんだけどね。だけどもデュークの事を心のどこかで待っていたのも事実だよ」
俺は自然と子供のような笑顔でデュークを見上げて言う。
「ふむ。愛い奴。どれタケルよ、仲間にーーーーむ? その子供はなんだ? たまたま隣に居合わせただけの子供か?」
デュークは少し首を傾げて怪訝そうな表情でパティを見ながら言う。
「こんな深夜の森の中でたまたま寝ている少年に出くわすか!」
「? 現に出くわしたではないか?」
ぬぅ……。
確かにそうだ、俺はともかくデュークからすれば、深夜の森の中でたまたま寝ている少年に出くわしている。
「この子はパティ。俺の仲間だよ。そして今はもう一人の仲間の女の子を待ってるんだ」
「何と……仲間が出来たのか」
心底意外そうな驚きの表情で俺を見るデューク。
そんなに驚くほどの事でもないだろうに。
「ふむ。友達など出来なさそうに見えたが、俺の目に狂いがあったか……」
「友達くらい普通に出来るわっ!」
そんな風に思われていたのか……俺。
もしかして、仲間に誘ってくれていたのは独りぼっちで可愛そうだからとか、そんな哀れみの気持ちからだったりして……。
「ははは! 相変わらず面白いなタケル。仲間にしてやろう」
「いや……お誘いはやっぱり嬉しいんだけど、俺のパーティも実はもう一人いるから既に四人なんだよね。デュークとシドと合わせて六人、完全に定員オーバーだよ」
「ふむ。タケルは屋台を知らないのか?」
デュークの言葉に俺の頭の上には大きな《?》が浮かぶ。
「屋台……?」
「そう、屋台だ。最近ベネツィの町で発表された新商品でな。屋台があれば普通のパーティの上限である五人という制限が解除されて一つのパーティは八人編成が可能となる訳だ」
「何ぃぃぃ⁉︎ 八人編成だとぉぉぉう⁉︎」
「ふふふ……驚くのはまだ早い。屋台にはある特殊な機能が備わっている」
「あ……ある特殊な機能、とは……?」
「ふふふ……。知りたいか? タケルよ」
「ーーーー知りたい!」
「その、機能とは……」
「その、機能とは……?」
「食事システムだ!」
「食事システム⁉︎」
「長い旅路では町から町までの間、保存食ばかりでろくな食事を取ることが出来ないが、この屋台に備わる食事システムがあればいつでもどこでも出来たての暖かな食事にありつく事が出来るのだ!」
「ふぁっ⁉︎ あ、ああっ……ががが……何……何という画期的な新発明。屋台さえあれば町を出る際に無理して死ぬほど食事をしなくても済む。どんなに寒い所でも常に暖かい食事がお腹いっぱい食べられる! 旅の弱点を完璧になくす事が出来る!」
「それだけではない!」
「んなにぃぃぃー! まだ何かあるのかぁぁぁー⁉︎」
「戦闘時、残りHPが少なくなり命の危険が迫った時、屋台に控えている食事中もしくは食後の仲間と戦闘を交代する事が出来るのだ!」
「はぁっ! そうか! 常に他の仲間が屋台で待機しているから戦闘時、仲間が危機的状況になった際すぐに態勢を整える事が出来る! 屋台に戻ったピンチの仲間は食事をして体力を回復し、他の仲間がピンチになれば、また……」
「考えるだけで恐ろしいだろう? 屋台さえあれば向かう所、敵なしだ!」
「確かに、確かにそうだ。し、しかし……そこまで完璧な戦闘態勢をとる事が出来る食事システムを備える屋台ともなれば、お値段の方もかなりのものなんじゃないのか? デュークよ」
「まぁ、開発者も今回はかなり頑張ってくれたようでな、値段はかなり低く設定されている」
「そうなのか⁉︎ いくらだ? いったいいくらなんだ⁉︎」
「今紹介した食事システムを備えた動く宿屋とも言える屋台なのだが、開発者の頑張りもあって、カルロスちゃんの全面協力もあって、今回特別価格、一台限定の、出血大サービスでーーーー」
「……で?」
デュークは得意げな、ややドヤ顔で俺の顔を見ながらなにやらタイミングを取っておりそして、
「1000000000G……」
「絶対、買えねぇぇぇー!」
買える訳あるか、そんなもん。
これだけ期待を煽っといて何なんだよ。
しかも金額の言い方が何か腹立つ。
「私も是非とも購入しようと努力しているのだが、中々そう上手く事は運ばないな」
「因みに……いくら貯めたんだ?」
「ふんっーーーー3000Gだ」
「髪を掻き上げながら言うな! 大人の所持金にしちゃ少なすぎるだろうが!」
全くもう……。
見た目だけは相変わらず俺の次くらいに格好いいのに中身が、というか頭の方が残念すぎる。
それでもまぁ、シドが財布を落とした時の所持金0に比べればかなりマシではあるんだろうけれど。
「あれ? そう言えば……デューク。シドはどうしたの?」
「む? あぁ、シドか……。そうだ俺は今、シドとはぐれてしまっていてな、今はシドの捜索中というわけだ」
事件はすでに始まっていたようだ。
「あ、いや。正確には今待ってたのは違う人なんだけどね。だけどもデュークの事を心のどこかで待っていたのも事実だよ」
俺は自然と子供のような笑顔でデュークを見上げて言う。
「ふむ。愛い奴。どれタケルよ、仲間にーーーーむ? その子供はなんだ? たまたま隣に居合わせただけの子供か?」
デュークは少し首を傾げて怪訝そうな表情でパティを見ながら言う。
「こんな深夜の森の中でたまたま寝ている少年に出くわすか!」
「? 現に出くわしたではないか?」
ぬぅ……。
確かにそうだ、俺はともかくデュークからすれば、深夜の森の中でたまたま寝ている少年に出くわしている。
「この子はパティ。俺の仲間だよ。そして今はもう一人の仲間の女の子を待ってるんだ」
「何と……仲間が出来たのか」
心底意外そうな驚きの表情で俺を見るデューク。
そんなに驚くほどの事でもないだろうに。
「ふむ。友達など出来なさそうに見えたが、俺の目に狂いがあったか……」
「友達くらい普通に出来るわっ!」
そんな風に思われていたのか……俺。
もしかして、仲間に誘ってくれていたのは独りぼっちで可愛そうだからとか、そんな哀れみの気持ちからだったりして……。
「ははは! 相変わらず面白いなタケル。仲間にしてやろう」
「いや……お誘いはやっぱり嬉しいんだけど、俺のパーティも実はもう一人いるから既に四人なんだよね。デュークとシドと合わせて六人、完全に定員オーバーだよ」
「ふむ。タケルは屋台を知らないのか?」
デュークの言葉に俺の頭の上には大きな《?》が浮かぶ。
「屋台……?」
「そう、屋台だ。最近ベネツィの町で発表された新商品でな。屋台があれば普通のパーティの上限である五人という制限が解除されて一つのパーティは八人編成が可能となる訳だ」
「何ぃぃぃ⁉︎ 八人編成だとぉぉぉう⁉︎」
「ふふふ……驚くのはまだ早い。屋台にはある特殊な機能が備わっている」
「あ……ある特殊な機能、とは……?」
「ふふふ……。知りたいか? タケルよ」
「ーーーー知りたい!」
「その、機能とは……」
「その、機能とは……?」
「食事システムだ!」
「食事システム⁉︎」
「長い旅路では町から町までの間、保存食ばかりでろくな食事を取ることが出来ないが、この屋台に備わる食事システムがあればいつでもどこでも出来たての暖かな食事にありつく事が出来るのだ!」
「ふぁっ⁉︎ あ、ああっ……ががが……何……何という画期的な新発明。屋台さえあれば町を出る際に無理して死ぬほど食事をしなくても済む。どんなに寒い所でも常に暖かい食事がお腹いっぱい食べられる! 旅の弱点を完璧になくす事が出来る!」
「それだけではない!」
「んなにぃぃぃー! まだ何かあるのかぁぁぁー⁉︎」
「戦闘時、残りHPが少なくなり命の危険が迫った時、屋台に控えている食事中もしくは食後の仲間と戦闘を交代する事が出来るのだ!」
「はぁっ! そうか! 常に他の仲間が屋台で待機しているから戦闘時、仲間が危機的状況になった際すぐに態勢を整える事が出来る! 屋台に戻ったピンチの仲間は食事をして体力を回復し、他の仲間がピンチになれば、また……」
「考えるだけで恐ろしいだろう? 屋台さえあれば向かう所、敵なしだ!」
「確かに、確かにそうだ。し、しかし……そこまで完璧な戦闘態勢をとる事が出来る食事システムを備える屋台ともなれば、お値段の方もかなりのものなんじゃないのか? デュークよ」
「まぁ、開発者も今回はかなり頑張ってくれたようでな、値段はかなり低く設定されている」
「そうなのか⁉︎ いくらだ? いったいいくらなんだ⁉︎」
「今紹介した食事システムを備えた動く宿屋とも言える屋台なのだが、開発者の頑張りもあって、カルロスちゃんの全面協力もあって、今回特別価格、一台限定の、出血大サービスでーーーー」
「……で?」
デュークは得意げな、ややドヤ顔で俺の顔を見ながらなにやらタイミングを取っておりそして、
「1000000000G……」
「絶対、買えねぇぇぇー!」
買える訳あるか、そんなもん。
これだけ期待を煽っといて何なんだよ。
しかも金額の言い方が何か腹立つ。
「私も是非とも購入しようと努力しているのだが、中々そう上手く事は運ばないな」
「因みに……いくら貯めたんだ?」
「ふんっーーーー3000Gだ」
「髪を掻き上げながら言うな! 大人の所持金にしちゃ少なすぎるだろうが!」
全くもう……。
見た目だけは相変わらず俺の次くらいに格好いいのに中身が、というか頭の方が残念すぎる。
それでもまぁ、シドが財布を落とした時の所持金0に比べればかなりマシではあるんだろうけれど。
「あれ? そう言えば……デューク。シドはどうしたの?」
「む? あぁ、シドか……。そうだ俺は今、シドとはぐれてしまっていてな、今はシドの捜索中というわけだ」
事件はすでに始まっていたようだ。
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