繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・お嬢ちゃん

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「その女の子は俺に『何してるの?』って聞いてきたんだ。歳は俺と同じくらいなのに妙に物静かで落ち着きのある大人びた感じの子でな、ベネツィの町の子供だろうに町ではあまり見ねえような珍しい格好してるもんだから、もしかしたらタイクーン城のお姫様が迷い込んで来やがったのか、あるいは子供に化けた魔女なんじゃねぇのかと思ってな正直言ってビビったぜ。で、その子の顔をよくよく見た瞬間に俺は全てを理解した。子供離れっつーか、人間離れっつーか、端整な顔立ちとその子を取り巻く雰囲気が子供の俺でも分かるほどに普通じゃなかった。この子は魔女じゃねぇ、もちろんお姫様でもねぇ。正体はよく分からねぇが、特別な何かなんだって思ったよ。何か理由があってこの森に迷い込んじまってて絶対俺がこの子を助けださなきゃならねぇって不思議とそう思ったよ。そう思っちまったら暗い森の恐怖なんてぶっ飛んじまって、気が付いたらその子の手を引いてひたすら歩き回ってた。もちろん道なんざ分かりゃしねぇが、俺がフラフラしてちゃこの子が不安になっちまうと思って、気丈に振る舞ってたな。道中、言葉は交わさなかった。俺は振り返りもせず、ただただ前を向いてその子の手を引きつづけた。そうして一時間くらい歩いたところで木々の隙間からタイクーン城の明かりが少し先の方に見えたんだ。それを見た途端に安心したのか腹の虫が馬鹿みたいなデカさで鳴き始めてよ、慌てて女の子に何とか言い訳しようと振り返ったんだがそこには女の子の姿は無かったんだ。ずっと、手ぇ繋いでたってのに女の子が消えたんだ。俺の手にはまだあの子の手の感覚と体温が残ってたんだが、それもだんだんと消えていっちまった。信じられるか? 握ったままだったんだぜ⁉︎」

「それで……お父さんはどうしたの?」

「あの子の体温がだんだんと消えていく手をしばらく見つめて、そして、タイクーン城目指して走って帰ったよ。これはかなり矛盾した話なんだが、森の中じゃ俺がずっと前に立ってあの子の手を引っ張って歩いてたんだが……本当は逆で、俺があの子に引っ張られてたんじゃねぇかと思ってる。つまり森の出口まで道案内してくれたんじゃねぇかと思っててな……。案内してくれて、役目を終えたから消えたんだって思った。だから俺は俺のやるべき事をした。ちゃんと真っ直ぐ家に帰ったんだ」

「それがお母さんとの……出会い?」

「だな」

「何だか不思議な話……」

「で、まぁこれは関係ない話しだとは思うんだが。その後、俺は無事に家に帰りついたがどういう訳か両親は不在でな、家の近くを探しても見つからねぇし待ってても帰ってこねぇし腹は減ったしで再び大ピンチよ! 仕方ねぇから家中の棚を引っ張り出して、見つけたでっけえ加工肉にかじりついてたら両親が帰ってきてよ、どうなったと思う? かなりマジな感じで叱られたぜ! 何だか食べちゃダメな大切な物だったらしくてな。つってもよ、俺も腹減って死にそうだったから仕方ねぇよな! なっはははははは! で、その後、なぜかタイクーン城に連れてかれて、なぜか新しい加工肉をもう一個貰って帰ったんだ。でも、お城の中にはやっぱりあの子はいなかったがな」

「ぷっーーーーお父さん、昔っから無茶苦茶なのね」

「あ? 男は大抵がこんなもんだ。大抵バカで、大抵ワイルドだ」

「それからどうなったの? その子と……お母さんと離れ離れになっちゃったけど」

「おお、それでな。後日、朝一番であの子にお礼を言いにまた森の中に入っていったんだ、今回はちゃんと目印を付けてからな。森に行けばまたあの子と逢えるような気がしてな」

「そこで逢えたのね?」

「いや。逢えなかった」

「何で⁉︎ そこで逢うのが普通でしょ⁉︎」

「アホかお前……現実と本は違うんだよ、そんなに上手くはいかねぇよ」

「でも……だったらじゃあ、どうしてまたお母さんと出逢えたの?」

「それから何度も森に足を運んだ。何度も何度も何度も何度も。ダチの誘いも全部断って、朝日が昇る前から行って陽が落ち始める頃までずっと森の中を歩いて探し回った。でも見つからねぇんだ。何日、どこをどれだけ探しても見つからねぇ。でも、なぜだろうな? 不思議と逢える気がする、不思議とすぐ近くにいる気がする、不思議とあの子の体温さえこの手に感じてたんだ。こんなに探してるのに見つからねぇ。毎日、朝早くから探してんのに見つからねえ。だから俺は無い知恵絞って考えたんだ。どうすりゃまた逢えるかってな」

「どう……したの……?」

「なに。今までとアプローチを逆にしてみたんだ」



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