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エピソード・オブ・お嬢ちゃん
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確かにアリシアが言うように族が去っていったのは鞭を使った護身術がかなり大きな理由としてあるけれど、俺が思うにあの不良のような凄い剣幕もかなり大きな理由としてありそうだったが。
「でも、趣味で作った物を売ってお金を貰ってるなら仕事と言えなくもないね!」
「うん……まあ、そうと言えばそうなんだけど」
「何かあるのかい? アリシア」
「そう言えば、さっきここの木はとても良い木で町のみんなにも人気だって言ってたけれど特別な木なの?」
「ええ。特別みたい。見た目はどれも同じに見えるし実際同じ品種の木なんだけど森の奥の方に生える木、つまりちょうどこの家の辺りの木から特別製みたい。森の入り口付近の木は至って普通な木なんだけど、奥側の木と入り口側の木と何がどう違ってあんなに差が出るのかは、さっぱり分からないんだけどね」
「ほう……。この森の何かしらの不思議な力が作用しているとでも?」
「あー。だから町で人気もあってあまりみんなの手に回らないんだね。みんなで取り合っちゃうから」
「うん。半分合ってる。確かにみんなで取り合っちゃうから回らないって理由もある。だけど、それなら自分達でここまで取りに来れば良いじゃない? だけど、みんな何故かは分からないけど木を取りに来ないの。わざわざ取り合わなくても、こんなにいっぱい生えてるのに。みんな遠慮してるのかな? でも寄ってたかって木を切られちゃうと困るから、助かってもいるんだけどね」
「町のみんながこの森の奥までこない。その理由は明らかだろう」
「うーん。僕はベネツィにずっと住んでるけど、この森の木がすごい木だなんて聞いたこともなかったよ? もちろん木に詳しいってわけでもないけれど、普通に生活しててそんな話を耳にした事は一度もないと思う。みんな知らないんじゃない? ここの木が良い木だって……」
「そうなのかしら……」
「やはりこの森の名前に何か秘密があるのかもしれないね……」
「ところでお姉ちゃんは何でここの木が良い木だって知ってるの? 誰かに聞いたの?」
「うん、聞いたのは町の人達からかな。町に木工品を売りに行った時に『これはあの木だ! あの木で出来てるぞ!』とか『この木をいったいどこで⁉︎』とか聞かれてビックリしちゃった。私はただお父さんが仕事で切ってきた木の切れ端を少し貰って作ってただけで、この木材が凄い木材だなんてまったく知らなかったから……。それで詳しく聞いてみたら町で人気のめったに手に入らない凄い上質な木材だって教えてくれたの」
「まさに謎が謎を呼ぶ不思議な木だね」
「ふぅん。それで……みんなどこに生えてるんだっ⁉︎ 教えろっ⁉︎ とか、聞いて来なかったの?」
「すっごい聞いてきた。それはもう怖いくらいに。だからその時は、たまにやって来る旅の人から木材の切れ端を貰ってるだけですって伝えたの」
「みんなが喉から手が出るほど欲しがる魅惑の木材。こんなにも目の前にあるのになぜ探さない? その答えはね……」
「それで納得してくれたの?」
「ううん。じゃあその旅人は誰だ、どこから来るんだって何度もしつこく聞いてくるの」
「それはこの森がーーーーって、ちゃんと聞いてる? さっきから俺の話ちゃんと聞いてる?」
「みんな欲しくて欲しくて仕方がないんだね。その木を」
「やっぱり教えてあげた方がいいのかしら? でも私が教えなくても町の近くにある森なんだからすぐに見つかると思うんだけど……」
「うーん……。お姉ちゃんがさっき言ったみたいに、町の人が来てたくさん切っていっちゃうかもしれないよ?」
「あれー? やっぱり聞いてないよねー? 俺の話。なんか話が噛み合わないなーって思ってたんだー実は。9話の後半ぐらいから変だなーって思ってたんだー。俺なんか悪い事しちゃったかなー?」
「ん? でもちょっと待って! お父さんーーーーお姉ちゃんのお父さんはその木が特別な木だって知ってるの?」
「うーん。どうだろう。でも私が作った物は町に持って行くといつも良い木だって言われてる。それを毎回持って来るお父さんは……どうなんだろう?」
「ふっふっふっ……。これはお父さんが何か知ってーーーー」
「そもそもお姉ちゃんのお父さんは何の仕事をしてるの?」
「木こりだよ。この森に住んでこの森と一緒に生きてるの。お父さんが言うには『俺とこの森は一心同体みたいなものだから、どうやっても切れねえ縁なのさ』って、いつも得意げに言ってる」
「もう、まともに喋らせてももらえーーーー」
「へぇ……お父さん、大好きなんだね。この森が」
「ーーーーみたいじゃねえ。一心同体なんだよバカヤロウ」
低く図太い声が新たに会話に参加した。
「でも、趣味で作った物を売ってお金を貰ってるなら仕事と言えなくもないね!」
「うん……まあ、そうと言えばそうなんだけど」
「何かあるのかい? アリシア」
「そう言えば、さっきここの木はとても良い木で町のみんなにも人気だって言ってたけれど特別な木なの?」
「ええ。特別みたい。見た目はどれも同じに見えるし実際同じ品種の木なんだけど森の奥の方に生える木、つまりちょうどこの家の辺りの木から特別製みたい。森の入り口付近の木は至って普通な木なんだけど、奥側の木と入り口側の木と何がどう違ってあんなに差が出るのかは、さっぱり分からないんだけどね」
「ほう……。この森の何かしらの不思議な力が作用しているとでも?」
「あー。だから町で人気もあってあまりみんなの手に回らないんだね。みんなで取り合っちゃうから」
「うん。半分合ってる。確かにみんなで取り合っちゃうから回らないって理由もある。だけど、それなら自分達でここまで取りに来れば良いじゃない? だけど、みんな何故かは分からないけど木を取りに来ないの。わざわざ取り合わなくても、こんなにいっぱい生えてるのに。みんな遠慮してるのかな? でも寄ってたかって木を切られちゃうと困るから、助かってもいるんだけどね」
「町のみんながこの森の奥までこない。その理由は明らかだろう」
「うーん。僕はベネツィにずっと住んでるけど、この森の木がすごい木だなんて聞いたこともなかったよ? もちろん木に詳しいってわけでもないけれど、普通に生活しててそんな話を耳にした事は一度もないと思う。みんな知らないんじゃない? ここの木が良い木だって……」
「そうなのかしら……」
「やはりこの森の名前に何か秘密があるのかもしれないね……」
「ところでお姉ちゃんは何でここの木が良い木だって知ってるの? 誰かに聞いたの?」
「うん、聞いたのは町の人達からかな。町に木工品を売りに行った時に『これはあの木だ! あの木で出来てるぞ!』とか『この木をいったいどこで⁉︎』とか聞かれてビックリしちゃった。私はただお父さんが仕事で切ってきた木の切れ端を少し貰って作ってただけで、この木材が凄い木材だなんてまったく知らなかったから……。それで詳しく聞いてみたら町で人気のめったに手に入らない凄い上質な木材だって教えてくれたの」
「まさに謎が謎を呼ぶ不思議な木だね」
「ふぅん。それで……みんなどこに生えてるんだっ⁉︎ 教えろっ⁉︎ とか、聞いて来なかったの?」
「すっごい聞いてきた。それはもう怖いくらいに。だからその時は、たまにやって来る旅の人から木材の切れ端を貰ってるだけですって伝えたの」
「みんなが喉から手が出るほど欲しがる魅惑の木材。こんなにも目の前にあるのになぜ探さない? その答えはね……」
「それで納得してくれたの?」
「ううん。じゃあその旅人は誰だ、どこから来るんだって何度もしつこく聞いてくるの」
「それはこの森がーーーーって、ちゃんと聞いてる? さっきから俺の話ちゃんと聞いてる?」
「みんな欲しくて欲しくて仕方がないんだね。その木を」
「やっぱり教えてあげた方がいいのかしら? でも私が教えなくても町の近くにある森なんだからすぐに見つかると思うんだけど……」
「うーん……。お姉ちゃんがさっき言ったみたいに、町の人が来てたくさん切っていっちゃうかもしれないよ?」
「あれー? やっぱり聞いてないよねー? 俺の話。なんか話が噛み合わないなーって思ってたんだー実は。9話の後半ぐらいから変だなーって思ってたんだー。俺なんか悪い事しちゃったかなー?」
「ん? でもちょっと待って! お父さんーーーーお姉ちゃんのお父さんはその木が特別な木だって知ってるの?」
「うーん。どうだろう。でも私が作った物は町に持って行くといつも良い木だって言われてる。それを毎回持って来るお父さんは……どうなんだろう?」
「ふっふっふっ……。これはお父さんが何か知ってーーーー」
「そもそもお姉ちゃんのお父さんは何の仕事をしてるの?」
「木こりだよ。この森に住んでこの森と一緒に生きてるの。お父さんが言うには『俺とこの森は一心同体みたいなものだから、どうやっても切れねえ縁なのさ』って、いつも得意げに言ってる」
「もう、まともに喋らせてももらえーーーー」
「へぇ……お父さん、大好きなんだね。この森が」
「ーーーーみたいじゃねえ。一心同体なんだよバカヤロウ」
低く図太い声が新たに会話に参加した。
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