繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

文字の大きさ
上 下
70 / 135
エピソード・オブ・お嬢ちゃん

10

しおりを挟む
 確かにアリシアが言うように族が去っていったのは鞭を使った護身術がかなり大きな理由としてあるけれど、俺が思うにあの不良のような凄い剣幕もかなり大きな理由としてありそうだったが。

「でも、趣味で作った物を売ってお金を貰ってるなら仕事と言えなくもないね!」

「うん……まあ、そうと言えばそうなんだけど」

「何かあるのかい? アリシア」

「そう言えば、さっきここの木はとても良い木で町のみんなにも人気だって言ってたけれど特別な木なの?」

「ええ。特別みたい。見た目はどれも同じに見えるし実際同じ品種の木なんだけど森の奥の方に生える木、つまりちょうどこの家の辺りの木から特別製みたい。森の入り口付近の木は至って普通な木なんだけど、奥側の木と入り口側の木と何がどう違ってあんなに差が出るのかは、さっぱり分からないんだけどね」

「ほう……。この森の何かしらの不思議な力が作用しているとでも?」

「あー。だから町で人気もあってあまりみんなの手に回らないんだね。みんなで取り合っちゃうから」

「うん。半分合ってる。確かにみんなで取り合っちゃうから回らないって理由もある。だけど、それなら自分達でここまで取りに来れば良いじゃない? だけど、みんな何故かは分からないけど木を取りに来ないの。わざわざ取り合わなくても、こんなにいっぱい生えてるのに。みんな遠慮してるのかな? でも寄ってたかって木を切られちゃうと困るから、助かってもいるんだけどね」

「町のみんながこの森の奥までこない。その理由は明らかだろう」

「うーん。僕はベネツィにずっと住んでるけど、この森の木がすごい木だなんて聞いたこともなかったよ? もちろん木に詳しいってわけでもないけれど、普通に生活しててそんな話を耳にした事は一度もないと思う。みんな知らないんじゃない? ここの木が良い木だって……」

「そうなのかしら……」

「やはりこの森の名前に何か秘密があるのかもしれないね……」

「ところでお姉ちゃんは何でここの木が良い木だって知ってるの? 誰かに聞いたの?」

「うん、聞いたのは町の人達からかな。町に木工品を売りに行った時に『これはあの木だ! あの木で出来てるぞ!』とか『この木をいったいどこで⁉︎』とか聞かれてビックリしちゃった。私はただお父さんが仕事で切ってきた木の切れ端を少し貰って作ってただけで、この木材が凄い木材だなんてまったく知らなかったから……。それで詳しく聞いてみたら町で人気のめったに手に入らない凄い上質な木材だって教えてくれたの」

「まさに謎が謎を呼ぶ不思議な木だね」

「ふぅん。それで……みんなどこに生えてるんだっ⁉︎ 教えろっ⁉︎ とか、聞いて来なかったの?」

「すっごい聞いてきた。それはもう怖いくらいに。だからその時は、たまにやって来る旅の人から木材の切れ端を貰ってるだけですって伝えたの」

「みんなが喉から手が出るほど欲しがる魅惑の木材。こんなにも目の前にあるのになぜ探さない? その答えはね……」

「それで納得してくれたの?」

「ううん。じゃあその旅人は誰だ、どこから来るんだって何度もしつこく聞いてくるの」

「それはこの森がーーーーって、ちゃんと聞いてる? さっきから俺の話ちゃんと聞いてる?」

「みんな欲しくて欲しくて仕方がないんだね。その木を」

「やっぱり教えてあげた方がいいのかしら? でも私が教えなくても町の近くにある森なんだからすぐに見つかると思うんだけど……」

「うーん……。お姉ちゃんがさっき言ったみたいに、町の人が来てたくさん切っていっちゃうかもしれないよ?」

「あれー? やっぱり聞いてないよねー? 俺の話。なんか話が噛み合わないなーって思ってたんだー実は。9話の後半ぐらいから変だなーって思ってたんだー。俺なんか悪い事しちゃったかなー?」

「ん? でもちょっと待って! お父さんーーーーお姉ちゃんのお父さんはその木が特別な木だって知ってるの?」

「うーん。どうだろう。でも私が作った物は町に持って行くといつも良い木だって言われてる。それを毎回持って来るお父さんは……どうなんだろう?」

「ふっふっふっ……。これはお父さんが何か知ってーーーー」

「そもそもお姉ちゃんのお父さんは何の仕事をしてるの?」

「木こりだよ。この森に住んでこの森と一緒に生きてるの。お父さんが言うには『俺とこの森は一心同体みたいなものだから、どうやっても切れねえ縁なのさ』って、いつも得意げに言ってる」

「もう、まともに喋らせてももらえーーーー」

「へぇ……お父さん、大好きなんだね。この森が」

「ーーーーじゃねえ。一心同体なんだよバカヤロウ」

 低く図太い声が新たに会話に参加した。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する

真義あさひ
ファンタジー
名門貴族家に生まれながらも、妾の子として虐げられ、優秀な兄の下僕扱いだった貴公子ケイは正妻の陰謀によりすべてを奪われ追放されて、貴族からスラム街の最下層まで落ちぶれてしまう。 絶望と貧しさの中で母と共に海に捨てられた彼は、死の寸前、海の底で出会った謎のサラマンダーの魔法により過去へと回帰する。 回帰の目的は二つ。 一つ、母を二度と惨めに死なせない。 二つ、海の底で発現させた勇者の力を覚醒させ、サラマンダーの望む海底神殿の浄化を行うこと。 回帰魔法を使って時を巻き戻したサラマンダー・ピアディを相棒として、今度こそ、不幸の連鎖を断ち切るために── そして母を救い、今度こそ自分自身の人生を生きるために、ケイは人生をやり直す。 第一部、完結まで予約投稿済み 76000万字ぐらい ꒰( ˙𐃷˙ )꒱ ワレダイカツヤクナノダ~♪

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...