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エピソード・オブ・お嬢ちゃん
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《モンスターが現れた!》
「うわっ⁉︎ モンスターが出たってよアニキ! ていうか、このナレーション何⁉︎ どこから聞こえてきたの⁉︎」
そう言って一目散に俺の背後へと隠れる少年パティ。
「そりゃモンスターくらい出るだろう、ここはもう町を離れたフィールドなんだから」
ナレーションについては察してくれ。
そういう仕様で、仕組みなのだ。
とにかく、
小山の山頂のポッカリと空いた穴から這い出るように現れた、通常の蟻では考えられないような馬鹿みたいにバカでっかい一匹の蟻。
キラーアント登場である。
キラーアントは凶暴な肉食系モンスターで、気性が荒く、巨体に似合わない素早い動きで仲間を呼んでは大群で襲いかかり、自慢の大顎で食らいついてくる厄介な相手だ。まかり間違って巣の中に強制的に運ばれでもしたら全身くまなく完全包囲されてあっという間に骨だけにされてしまう。森の小動物はもちろん、人間もその被害に会うのはそう珍しいものではない。また、キラーアントは別名、森の掃除屋とも呼ばれていてキラーアントの被害に関係のない朽ちた死骸を巣へと持ち帰り食料としている。
そんな凶悪、凶暴極まりないキラーアントが触覚をピンとこちらに向けて大顎をギリギリと鳴らしている。
どうやらロックオンされたようである。
キラーアントは地面を素早く縦横無尽に動き回り襲いかかる。
「うわわわわわわわっ⁉︎ アニキ、来たよっ⁉︎」
「落ち着け! キラーアントの変則的な素早い動きをよく見て」
キラーアントの大顎が目の前に迫るーーーー
「今だっ! 全力で踏みつけなさぁぁぁーい!」
ブチッ。
「…………」
《戦闘に勝利した!》
俺はパティの肩に手を置いて言う。
「対モンスター戦、初勝利おめでとう!」
「勝ったのっ⁉︎ これでいいのっ⁉︎」
人間はある意味、凶暴な肉食系モンスターで、気性が荒く、巨体に似合わない素早い動きで仲間を呼んでは大群で襲いかかり、卑怯な手段でもって戦う厄介な相手だ。つまりはキラーアントよりも生態系の上位者なのだ。
それにいくら通常の蟻と比べて馬鹿みたいにバカでかいとは言っても、全長はせいぜい10センチいかないくらいである。
人間は160センチは優に超えるのである。
階級が、仕様が、世界が、次元が違うのである。
「うん。いいよ。もちろん剣で一匹ずつ倒していってもいいんだけれど……面倒だろう?」
それになにより、今は素早い相手の動きを見切って制する修行中なのだ。
「へぇ……。僕、モンスターとの戦いはもっと危険で血生臭いものだとばかり思ってたよ。お父さんもこんな感じで戦ってたんだね意外だよ」
「あ……いや……それは多分違う……」
パールさん達、護衛騎士団の方々は誠心誠意まじめに戦いに取り組んでいるはずだ。
俺はただ、楽しくバトルしているだけだ。不謹慎と思う人も中にはいるかもしれないが、誠心誠意まじめに一生懸命、無言で愚直に戦いに取り組んでいてはどうしても肩が凝ってしまうのである。
どんな事でも楽しい方が楽しいのである。ふざけちゃいけない場面くらいは心得ているのである。
これでも、そこそこの大人なのである。
「雰囲気は大体掴めたよね? コツはキラーアントの進行ルートの先読み。おおかた目星をつけた場所にジャンプしたら、そこにキラーアントが自分から滑り込んで来る感じ。分かったね?」
「うん……イメージは出来た」
「よしよし、イメトレは成功確率を格段に跳ね上げてくれるから、やりすぎるくらいにやっておいてね。じゃあ第2ラウンドーーーー開始!」
俺は枝をキラーアントの巣に向かって投げた。
バチッと乾いた音が鳴って枝は地面にパタリと落ちた。
やがて小山がわずかに振動しだして、徐々に大きくなる振動が足下に伝わってくる頃、小山からはおびただしい程のキラーアントの群れが這い出てきた。
ゴクリっとパティが生唾を飲む音が聞こえて来たが、すぐにキラーアントの大顎の奏でる音にかき消された。
「落ち着いていけよ、パティ。リズムを掴め、リズムを」
「うんっ!」
ブチッブチッブチッ! ブブブブチン! ブチッ! ブブブチッ!
「さすがアニキ! ナイスステップ! イカしてる! 僕もビートを刻むよ!」
ブチッブブチッ! ブブブブチン! ブッチチッブブブブチン! ブブブブチンッ!
「パティ刻んでんな! でも、あまり飛ばしすぎるなよ」
それから約小一時間、俺とパティはキラーアントを踏み続けた。
念のために言っておくが、これはれっきとした修行であり、決して遊びではないのだ。
その後、巣穴からキラーアントがでてこなくなった頃、森の掃除屋キラーアントの遺していった遺品の数々を俺達は綺麗に掃除した。
「うわぁ! お金がいっぱい落ちてる!」
「アイテムとかもあるから、取り忘れないようにな!」
「何だかアニキとの修行はいつも驚かされるけど、とっても楽しいね!」
楽しんで貰えたのなら何よりなのであった。
「うわっ⁉︎ モンスターが出たってよアニキ! ていうか、このナレーション何⁉︎ どこから聞こえてきたの⁉︎」
そう言って一目散に俺の背後へと隠れる少年パティ。
「そりゃモンスターくらい出るだろう、ここはもう町を離れたフィールドなんだから」
ナレーションについては察してくれ。
そういう仕様で、仕組みなのだ。
とにかく、
小山の山頂のポッカリと空いた穴から這い出るように現れた、通常の蟻では考えられないような馬鹿みたいにバカでっかい一匹の蟻。
キラーアント登場である。
キラーアントは凶暴な肉食系モンスターで、気性が荒く、巨体に似合わない素早い動きで仲間を呼んでは大群で襲いかかり、自慢の大顎で食らいついてくる厄介な相手だ。まかり間違って巣の中に強制的に運ばれでもしたら全身くまなく完全包囲されてあっという間に骨だけにされてしまう。森の小動物はもちろん、人間もその被害に会うのはそう珍しいものではない。また、キラーアントは別名、森の掃除屋とも呼ばれていてキラーアントの被害に関係のない朽ちた死骸を巣へと持ち帰り食料としている。
そんな凶悪、凶暴極まりないキラーアントが触覚をピンとこちらに向けて大顎をギリギリと鳴らしている。
どうやらロックオンされたようである。
キラーアントは地面を素早く縦横無尽に動き回り襲いかかる。
「うわわわわわわわっ⁉︎ アニキ、来たよっ⁉︎」
「落ち着け! キラーアントの変則的な素早い動きをよく見て」
キラーアントの大顎が目の前に迫るーーーー
「今だっ! 全力で踏みつけなさぁぁぁーい!」
ブチッ。
「…………」
《戦闘に勝利した!》
俺はパティの肩に手を置いて言う。
「対モンスター戦、初勝利おめでとう!」
「勝ったのっ⁉︎ これでいいのっ⁉︎」
人間はある意味、凶暴な肉食系モンスターで、気性が荒く、巨体に似合わない素早い動きで仲間を呼んでは大群で襲いかかり、卑怯な手段でもって戦う厄介な相手だ。つまりはキラーアントよりも生態系の上位者なのだ。
それにいくら通常の蟻と比べて馬鹿みたいにバカでかいとは言っても、全長はせいぜい10センチいかないくらいである。
人間は160センチは優に超えるのである。
階級が、仕様が、世界が、次元が違うのである。
「うん。いいよ。もちろん剣で一匹ずつ倒していってもいいんだけれど……面倒だろう?」
それになにより、今は素早い相手の動きを見切って制する修行中なのだ。
「へぇ……。僕、モンスターとの戦いはもっと危険で血生臭いものだとばかり思ってたよ。お父さんもこんな感じで戦ってたんだね意外だよ」
「あ……いや……それは多分違う……」
パールさん達、護衛騎士団の方々は誠心誠意まじめに戦いに取り組んでいるはずだ。
俺はただ、楽しくバトルしているだけだ。不謹慎と思う人も中にはいるかもしれないが、誠心誠意まじめに一生懸命、無言で愚直に戦いに取り組んでいてはどうしても肩が凝ってしまうのである。
どんな事でも楽しい方が楽しいのである。ふざけちゃいけない場面くらいは心得ているのである。
これでも、そこそこの大人なのである。
「雰囲気は大体掴めたよね? コツはキラーアントの進行ルートの先読み。おおかた目星をつけた場所にジャンプしたら、そこにキラーアントが自分から滑り込んで来る感じ。分かったね?」
「うん……イメージは出来た」
「よしよし、イメトレは成功確率を格段に跳ね上げてくれるから、やりすぎるくらいにやっておいてね。じゃあ第2ラウンドーーーー開始!」
俺は枝をキラーアントの巣に向かって投げた。
バチッと乾いた音が鳴って枝は地面にパタリと落ちた。
やがて小山がわずかに振動しだして、徐々に大きくなる振動が足下に伝わってくる頃、小山からはおびただしい程のキラーアントの群れが這い出てきた。
ゴクリっとパティが生唾を飲む音が聞こえて来たが、すぐにキラーアントの大顎の奏でる音にかき消された。
「落ち着いていけよ、パティ。リズムを掴め、リズムを」
「うんっ!」
ブチッブチッブチッ! ブブブブチン! ブチッ! ブブブチッ!
「さすがアニキ! ナイスステップ! イカしてる! 僕もビートを刻むよ!」
ブチッブブチッ! ブブブブチン! ブッチチッブブブブチン! ブブブブチンッ!
「パティ刻んでんな! でも、あまり飛ばしすぎるなよ」
それから約小一時間、俺とパティはキラーアントを踏み続けた。
念のために言っておくが、これはれっきとした修行であり、決して遊びではないのだ。
その後、巣穴からキラーアントがでてこなくなった頃、森の掃除屋キラーアントの遺していった遺品の数々を俺達は綺麗に掃除した。
「うわぁ! お金がいっぱい落ちてる!」
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