繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・お嬢ちゃん

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「アニキなにソワソワしているの?」

「なっ⁉︎ 何を言っておるのかね⁉︎ 俺はいつも通り、いたってクールだよ」

「ふぅん……」

 パティは何やら訝しげな表情で俺を見る。

「それはそうとパティ君!」

「何? どうしたの?」

 前を歩くパティは振り向きながら言う。

「どうしたの。は、俺の台詞だと思うんだけど……」

「ん? どう言う事?」

「いや、だってさ。君は武道大会で優勝したんだよ? 特典の《一日名誉団長》やらなくていいの? 護衛騎士団に入りたいって言ってなかったっけ?」

「ああ、それはいいよ。団長には自分でなるから」

「ほう……。お子様向けの戯れなどは必要ないと?」

「だね」

「町を回った後、タイクーン城でカルロス陛下から高級お菓子が頂けるそうだが……それも必要ないと?」

「……い……いら……ないっ!」

 パティの放ったその一言に腹を立てたのか、じろうは激しく猫パンチをパティの頭頂部へと叩きつける。

「いてててて……」

「まあ、一日団長の件については別にいいんだけど、この帰らずの森へはいったい何しにきたのだろう?」

「修行だよ、修行。修行といえば山か森って相場は決まってるじゃん。ここからじゃ山は少し遠いし、ちょうど近場に森があるし、だったらじゃあ森でいいかなって……」

「そうなのかい……? しかしなぜまた修行などと……」

「もっと強くなりたいから。それだけさ!」

 それだけさ! って……。

「それに強くないと団長になれないし、アニキとしても弱いじゃ困るでしょ?」

「えっ……何、本当に着いてくんの⁉︎」

 武道大会表彰式後、拍手喝采が鳴り響くなかでパールさんとティナさんに抱きしめられ祝福を受けるパティ。

 俺はパティに別れを告げて立ち去ろうとしていた。

 だが、パティは俺を呼び止めこう言ったのだ。『待ってよアニキ。まだ修行は終わってないよ? 父さんと母さんには旅に出るってちゃんと言ってきたからさ! 早く旅に出ようよ!』とか。

「もしかして……僕、お邪魔かな……?」

「何を馬鹿な事を……いくらありえない程に短期間といえど君を一人前に仕上げる事が出来なかった事に内心へこんでいたんだ。それを親元を離れてまで着いてきてくれると言うのならば大歓迎だよ」

「本当……?」

「無論だ」

 そこでふと、仲間に加わるにあたっての最重要確認事項を思い出し聞いてみる。

「あの……パティはお年寄りは好きかい?」

「へ? お年寄り?」

「お爺ちゃんなんだけれども……」

「うん。僕ってスーパーお爺ちゃんっ子だよ」

「実は俺の仲間にトム村長っていうお爺ちゃんがいるんだけど平気かな? 今は色々あって別行動なんだけど後で迎えに行く約束なんだよ。あ、でもその時はもう村長じゃないのか……」

「うん。もちろん平気だよ。ていうかアニキ仲間いたんだね、友達とか居なさそうだから絶対一人だと思ってた!」

「ほっとけ!」

 これでも熱心な勧誘受けてんだぞ。

「とにかく! そこが大丈夫ならこちらとしては大歓迎さ!」

「えへへ……じゃあ、よろしくお願いします!」

「こちらこそ」

 新たな仲間が増えた瞬間だった。

「で、具体的にどんな修行をするつもりなのかね?」

「え……分かんない。そういうのも教えてくれるんじゃないの?」

 丸投げなのだね……。

「まあ、修行をするといっても君は結構強いからね。先の大会での反省点……というか君に足りないものを補うとしよう」

「僕に足りないもの……力かな。やっぱり」

「それも大いにあるが、そこは君の利点にも繋がっているからね。それは置いといて、決勝で戦ったデスパウロ君。彼との勝負で一番苦戦した事と言えば?」

「負けそうになったら、わざと土を飛ばしてくる卑怯なところ!」

「で、す、が! その次に苦戦したところは?」

「んー。ちょこまか動き回るところ!」

「そうだね。彼のフットワークは見事だった。素早く動き回る相手と戦うのはとても困難だ、反撃のタイミングが掴み辛かったろう?」

「うんうん!」

「なので素早く動き回る相手と戦って経験を蓄えよう!」

「なるほど! その相手とは……?」

 俺は帰らずの森の地面を注意深く観察しながら歩き回り、とあるものを発見する。

 草木が生い茂る地面で一部だけ隆起した場所。

 土や小石が積み上げられて造られたその小山は標高40センチ程度の高さで、山頂部分には直径20センチくらいのポッカリとした穴が空いている。

 俺はその小山の山肌を落ちていた枝先で優しく擦ってみる。

 すると、

《モンスターが現れた!》

 本当。久しぶりの登場である。

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