繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・お嬢ちゃん

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 帰らずの森というものがある。

 その森に不用意に足を踏み入れし者、森の魔力に魅了され決して帰る事叶わず。己が意思で木となり森となり森は更に深みを増して行く。

 ベネツィの町をはじめその近辺ではとても有名な話で大昔から語り継がれる物語である。

 行きはよいよい帰りは怖い、怖くなければ入りゃんせ、森の仲間に入りゃんせ。

 といえば幼い子供を戒めるための昔話としてあまりにも有名である。どんなに言うことを聞かない跳ねっかえりの子供だって『帰らずの森に連れていく』や『森の魔女に食べさせる』といえば大抵はその場で大泣きして親の足にしがみついて許しを請うのである。

 だが、どんな物事にも必ずと言っていいほど例外は存在するもので、過去に跳ねっかえり中の跳ねっかえり、親の言う事を全て聞かずむしろ逆の事しかしでかさない天邪鬼、子供界のスーパースター、小さな侠客、キングオブ悪餓鬼、というか逆に神、等という子供達の憧れでもある名誉ある通り名をこれでもかと総なめにした子供がいた。

 言っても聞かず、ゲンコツも石頭なので効かず、森の入口へと連れて行けば自ら嬉々として走って入っていくほどにぶっ飛んだ子供であった。

 慌てた両親はすぐに後を追って森へと入ったが、見つける事叶わずベネツィの町に戻り護衛騎士団に助け求め、大捜索団を結成し捜索したが遂に発見する事は出来なかった。

 夜も更け捜索は一旦打ち切り明朝から再度開始される運びとなり、両親は放心状態のまま自宅へと帰った。
 
 自宅の扉を開け、中へと入った両親はそこで驚愕の光景を目にする事になった。

 自宅のダイニングテーブルに座り、熱加工済みの肉塊にかぶり付く我が子の姿がそこにあったのだ。

 驚きと安堵と怒りと笑いが一気に押し寄せた父親が言い放った第一声は『それは贈り物用だ!』だったとか。

 その後、肉塊を決して離そうとしない我が子を連れてタイクーン城へと赴き、カルロス陛下並びに護衛騎士団に謝罪を行った。多少のお咎めは覚悟していったのだがカルロス陛下は『面白い!』と大笑いするだけで特に何のお咎めもなく、むしろ新しい肉塊を一つ貰って帰る事態となった。

 城からの帰り道。両手に肉塊を持って歩くその姿を見た一番街の老人はこう呟いたという『ワイルド坊や。ワイルド坊やじゃ!』

 つまりこれがベネツィ七不思議の一つ《肉塊持ちて夜の町を徘徊するワイルド坊や》の正体である。

 そんな数々のドラマを生んできた帰らずの森。

 そんな帰らずの森へとやって来た俺と少年パティ。

 なので今回はこの帰らずの森で何か楽しい事が起こるようだ。

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