繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・少年

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 俺の言葉に対し二人は驚きの表情を浮かべると思ったのだがそんな予想は見事に外れたようで、何をバカな事を言っているのだと言わんばかりに呆れた表情でいた。

 さすがだぜこの二人。自分達の事を信じてやまない。

「しかし、タケルよ。私は確かに『仲間にどうですか』と、売り込まれたのだぞ? シドもそれを聞いているはずだ」

「ええ、確かに。私も聞きました」

「うん。それ……俺も言われた。それってつまりはさ、元気そうな君達二人じゃなくって別行動している、はたまた今後仲間になる人達への備えにどうですかって意味だと思うんだよね」

 私を仲間にどうですか? ではなく。

 薬草をお仲間の為にどうですか? なのだ。

 そんなの当たり前だ。

「じゃあ、無くなった私達の財布についてはどう説明をするつもりなのじゃ?」

「普通に考えて、流れの中で落としたんじゃないの?」

「そっ……そんな! そんなバカな事がっ! 確かに私は財布の管理を任されてはいるが、大の大人である私が財布を落としてしまうなどあり得るものかっ! デューク様! 騙されてはなりませぬぞ! 財布を落としたのは紛れもなくこやつ、タケルに違いありませんっ!」

 あ……こいつが財布落としたんだな。

 しかもそれを俺のせいにするだなんて、さすがにそれは無理があるんじゃなかろうか?

 お前達の財布を俺が落とすっていったいどんな状況なんだよ。

 取り乱し騒ぎ立てるシドにデュークは、

「落ち着けシド! 見苦しいぞ!」

「デュ……申し訳ありません」

「タケルにも何か事情があったに違いない。訳も聞かずにそう責め立てるな。タケルが可哀想だ」

 あれー。何で俺が犯人みたいな感じになってるのかなー。話しを理解できないのかなーこの二人は。あれなのかなー、この二人ってやっぱりあれなのかなー。もうご飯おごるのやめようかなー。この二人ここに置いていっちゃおうかなー。

 シドは胸に手を当てて、文字通りホッと胸を撫で下ろしている。

 はぁ……この二人は仕方ないのか。前回の転生の時でいうところのサージとパージのドタバタコンビと同じ枠に入る二人なのだろう。

 定期的に現れて時にイラつかせ、時に笑わせてくれるユニークキャラ。今回はこの二人がそんなコミックリリーフを担当してくれるようだ。

 と、すると長い付き合いになるのか。最終的にはエンディングにまで現れて場を盛り上げてくれるのだ。勝手に犯人にするなっ! と、今すぐ怒鳴り散らしたい限りではあるけれど、ここはグッと我慢してまだまだずっと先のエンディングを最高に盛り上げてもらえるように今のうちから恩を売っておいて損はあるまい。

「何で俺が君達の財布を落とすんだよー! このこのぉ!」

「…………」

「…………」

 本当に俺が犯人みたいな雰囲気じゃねえか。

 なぜか状況的にやや不利になって来たところで、運良く料理が運ばれて来て二人の意識が料理へと向いた。

「「「頂きます」」」

 三人で手を合わせ、香りと湯気が立ち上る料理を食す。

 調理場から時折、聞こえていた不安を煽る言葉達がかなり心配だったがテーブルへと運ばれてきた料理を見る限り心配は無用だったようだ。

 しっかりと美味しそうなお肉が乗った焼肉丼に、名前が判らないお魚の煮付けに、透明度の高いスープに白く細い麺が浸っている。

 デュークとシドは無言で料理を食べ進め、俺も無言でそれに続いた。

 俺とデュークはほぼ同じタイミングで食べ終え、少し遅れて器を持ち上げたシドがスープの最後の一滴を飲み終えた。

「「「ご馳走さまでした」」」

 俺達は各々の料理を食べ終え、まったりと過ごす。

「あのさ……デューク?」

「どうしたタケル? 仲間ーーーー」

「にはならないから大丈夫。あのさ、知り合いの事なんだけどさ……昔、とっても辛い事があってそれがトラウマになっちゃって、今も自信を取り戻せないでいる人がいるんだけど……どうしたらいいと思う?」

 俺はダメ元でパティの事を相談してみる。

「どうした急に? 何かあったのか?」

「うん……。ちょっとね。どうにか助けになれないかなって、思ってさ……」

「ふむ……」

 デュークは腕組みして俺の問いに対する答えを考える。やがて、

「それは何もできないな」

「え……」

「というよりも、正確には何もするべきではない」
  
 デュークは目を閉じて自分の発言を何度も確かめるようにして語る。

「何らかの問題があって辛い過去が出来てしまった。今はそれに怯えて生きている。しかし、たとえタケル。お前がその問題を解決してやったとしても次なる問題が目の前に現れた時、問題を抱える者はまた立ち止まり歩く事を止める。その度にお前が解決してやっても、いくらでも問題は次、また次とその者の前に無情にも立ちはだかる。問題を抱える本人が、その者が必死に立ち向かい壁を乗り越えねば何の意味もない」

 と、いつになく真剣な表情でデュークは語る。

「それでもどうしてもと言うのならば……まあ、背中のひと押しくらいならば出来るんじゃないのか? 戦いの場へ送り出すくらいの事ならな」

「背中のひと押し……」

 そうだ。これはパティの抱える問題なのだからパティ自身が解決しなくてはダメなのだ。

 図々しく、他人がしゃしゃり出る場面ではない。

 それでは何の問題の解決にはなり得ない。

 俺がパティのために出来る事があるとするならば、パティの事を信じて精一杯背中を押してやる事くらいか。

 デュークは真剣な表情のまま小首を傾げて、

「どうだ? 答えになっていたか?」

「ああ! 充分だよ。ありがとうデューク!」

「そうか」

 かなり失礼な話ではあるが、まさかデュークから真面目な解答を貰えるとは夢にも思っていなかったので、この結果自体は僥倖ぎょうこうといえた。

 デュークの事を少しだけ見直した俺であった。
 



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