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エピソード・オブ・村長
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『もちろんじゃとも』村長がそう言った。
そう言ってくれた。
その事がとてつもなく、たまらなく嬉しかった。
もし、仮に断られていたら俺はどうなっていたんだろう。泣いていたかも。
この村で過ごした、たった数日間の間に俺の中では村長という存在がかなり大きなものとなっていた。
とにかく、良かった。
本当に良かった。
俺は自然と出した右手で村長と握手を交わした。
と、そこで村長が口を開いた。
「タケル殿が誘ってくれて良かったよ。ワシとしても是非ともついて行きたいと言いたくて仕方がなかったからの。ジーナの仇は討てたが世界にはワシと同じ思いをして泣いておる人々がたくさんおるじゃろうから、これ以上そんな人々が増えぬよう各地を回りモンスター退治をやりたいと思っておった。が、ワシが一緒だと迷惑をかけるのはまず間違いないから、なかなか言い出せなくてのう」
「村長……迷惑だなんてそんな。俺の方こそ迷惑かけちゃうよ、きっと」
事実。スライム二匹同時襲撃の際、すでにとんでもない迷惑かけちゃってるんだから。
「とは言ってもじゃ。村のゴタゴタが今ようやく片付き村が再び一つに戻ろうとしておる。この大事な時期に村長たるワシが村を留守にしてしまうわけにはいかん。それに旅に出るとなると村をかなり長い間空ける事になるじゃろうし、次の者に村長の仕事を任せねばいかんしの」
まあ、それはすでに最高の適任者がおるから何も問題はないんじゃが。と、村長は村の方をちらりと見て笑う。
「じゃから、今すぐタケル殿の仲間になりたいのはやまやまなのじゃが、まずは近辺整理をする時間が欲しい。そんなに長い時間は掛からんと思うが、全てやり終え身軽になったその時こそ、タケル殿の大冒険に連れて行ってくれい! ダメかの?」
「ダメじゃないさ! いいよ。俺、待ってるから。でも、ただ待つのも暇だから……そうだな、うん。俺も修行したりしてしばらく経ったら、またこの村に帰ってくるよ」
「すまんのう。すぐに片付けるから少しだけ待ってておくれ。それにワシだって手が空いた時には修行に励むぞい! タケル殿が帰ってくる頃には超人の如き存在になっておるやもしれんぞ⁉︎ ホッホッホ!」
「じゃあ、なおさらまた会うのが楽しみだ!」
ガネーシャ村の出口で白い歯むき出しの笑顔で手を振って見送ってくれる村長に、俺は全力で手を振りかえして、そして。
芸術的なほど赤や黄に彩られた木々の葉を眺めながら、どこまでも続く大草原をゆっくりと歩き出した。
エピソード・オブ・村長
終わり。
そう言ってくれた。
その事がとてつもなく、たまらなく嬉しかった。
もし、仮に断られていたら俺はどうなっていたんだろう。泣いていたかも。
この村で過ごした、たった数日間の間に俺の中では村長という存在がかなり大きなものとなっていた。
とにかく、良かった。
本当に良かった。
俺は自然と出した右手で村長と握手を交わした。
と、そこで村長が口を開いた。
「タケル殿が誘ってくれて良かったよ。ワシとしても是非ともついて行きたいと言いたくて仕方がなかったからの。ジーナの仇は討てたが世界にはワシと同じ思いをして泣いておる人々がたくさんおるじゃろうから、これ以上そんな人々が増えぬよう各地を回りモンスター退治をやりたいと思っておった。が、ワシが一緒だと迷惑をかけるのはまず間違いないから、なかなか言い出せなくてのう」
「村長……迷惑だなんてそんな。俺の方こそ迷惑かけちゃうよ、きっと」
事実。スライム二匹同時襲撃の際、すでにとんでもない迷惑かけちゃってるんだから。
「とは言ってもじゃ。村のゴタゴタが今ようやく片付き村が再び一つに戻ろうとしておる。この大事な時期に村長たるワシが村を留守にしてしまうわけにはいかん。それに旅に出るとなると村をかなり長い間空ける事になるじゃろうし、次の者に村長の仕事を任せねばいかんしの」
まあ、それはすでに最高の適任者がおるから何も問題はないんじゃが。と、村長は村の方をちらりと見て笑う。
「じゃから、今すぐタケル殿の仲間になりたいのはやまやまなのじゃが、まずは近辺整理をする時間が欲しい。そんなに長い時間は掛からんと思うが、全てやり終え身軽になったその時こそ、タケル殿の大冒険に連れて行ってくれい! ダメかの?」
「ダメじゃないさ! いいよ。俺、待ってるから。でも、ただ待つのも暇だから……そうだな、うん。俺も修行したりしてしばらく経ったら、またこの村に帰ってくるよ」
「すまんのう。すぐに片付けるから少しだけ待ってておくれ。それにワシだって手が空いた時には修行に励むぞい! タケル殿が帰ってくる頃には超人の如き存在になっておるやもしれんぞ⁉︎ ホッホッホ!」
「じゃあ、なおさらまた会うのが楽しみだ!」
ガネーシャ村の出口で白い歯むき出しの笑顔で手を振って見送ってくれる村長に、俺は全力で手を振りかえして、そして。
芸術的なほど赤や黄に彩られた木々の葉を眺めながら、どこまでも続く大草原をゆっくりと歩き出した。
エピソード・オブ・村長
終わり。
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