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エピソード・オブ・村長
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名前を呼びあう二人。
どうやら二人は知り合いらしい。まあ、同じ村の60才を超えているであろう老人二人だからそれなりに親交があってもなんら不思議はないのだけど。
もしかして村長の兄弟とか、親友とかかも知れない。
トムというのが村長の名前で、あちらの老人はパウロという名前らしい。
「トム。お前もジーナの墓参りか?」
「ああ……そうじゃ」
「…………」
村長はなぜか視線を地面へと落としている。
「そっちの人は、知り合いか?」
「あ……ああ。さっき出会ったばかりじゃが、旅の、勇者殿じゃ」
「はじめまして。俺はタケルと言います」
「おお! 勇者様かっ! そうかそうか。それでは旅に必要な物があったら是非とも隣の村にあるワシの店で買って行っておくれ。サービスするぞい」
「あっ! あのお店のご主人なんですね⁉︎ いつもお世話になってます」
「はて……勇者様うちの店に来たことがあったかのう?」
「あ……ああ、いや。すみません……間違いでした」
パウロさんの言葉で俺はいつも利用する武器、道具屋がパウロさんの店だった事を知った。
基本は若いお兄さんが店番なのだが、そういえばたまにおじいさんが店番をしている時があった気がしたが、そうか、あれはパウロさんだったのか。じゃあ、お兄さんの方は息子さんかな?
意外な事実に驚いたがしかし、パウロさんの言葉に違和感を感じた。
ん? 隣の村? ここの隣って、村とかあったっけ?
「あの……隣の村って……?」
「ん? ああ。ここはガネーシャ村だが、ホレッそこに策がしてあるじゃろう? あの柵より向こう側はアネーシャ村なんじゃよ。そしてワシはアネーシャ村の村長じゃ」
柵より向こう側は別の村って……。
全体で一つの村だとばかり思っていたけれど、違ったのか。しかし、村と村の境がなさすぎるだろう、こんなにも近くに隣り合う村とかあるのか?
それに、名前もそっくりだし。
色々な新事実に戸惑う俺だったが、そこで今まで口を閉ざしていたトム村長が口を開く。
「のう……パウロや。やはりお主がーーーー」
「ーーーー帰る」
トム村長の言葉を遮るようにして一言放つと、パウロさんは踵を返してしっかりとした足どりで歩き、柵の向こう側のアネーシャ村へと去っていった。
パウロさんの背中を見送ってから、村長の方をちらりと見てみる。
村長はやはりどこか寂しげで、見ようによっては悲しみの底に沈んでいっているかのように表情がなく肩を落としている。
例により余計なお節介発動。
「どうしたんだい村長? 元気がないじゃないか」
「んん……。何でもないんじゃ。なんでも……」
村長は視線を反らせて言葉を濁す。
「村長らしくないな。いつも元気な村長はどこへいったのやら……。なに? あの人、パウロさんとケンカでもしたの?」
「タケル殿……」
村長は俺の方をちらりと見て、強がりにしか見えない笑みを少しだけ浮かべて、
「本当にタケル殿は物好きな人じゃな。老人の、ワシの話は長いぞ? 覚悟はできておるか?」
「知ってるよ。村長の話が長いことも、話すのが好きなことも」
そんなの当たり前だ。
「それに、村長の方こそ知ってるのか? 俺がとんでもない聞き上手な事」
村長は照れ笑いにも似た笑みを浮かべて、足元の小石を見つめる。
「ふう……」
と、呼吸を整えるように息をひとつ吐いて、村長は俺と向き合うようにした。
どうやら二人は知り合いらしい。まあ、同じ村の60才を超えているであろう老人二人だからそれなりに親交があってもなんら不思議はないのだけど。
もしかして村長の兄弟とか、親友とかかも知れない。
トムというのが村長の名前で、あちらの老人はパウロという名前らしい。
「トム。お前もジーナの墓参りか?」
「ああ……そうじゃ」
「…………」
村長はなぜか視線を地面へと落としている。
「そっちの人は、知り合いか?」
「あ……ああ。さっき出会ったばかりじゃが、旅の、勇者殿じゃ」
「はじめまして。俺はタケルと言います」
「おお! 勇者様かっ! そうかそうか。それでは旅に必要な物があったら是非とも隣の村にあるワシの店で買って行っておくれ。サービスするぞい」
「あっ! あのお店のご主人なんですね⁉︎ いつもお世話になってます」
「はて……勇者様うちの店に来たことがあったかのう?」
「あ……ああ、いや。すみません……間違いでした」
パウロさんの言葉で俺はいつも利用する武器、道具屋がパウロさんの店だった事を知った。
基本は若いお兄さんが店番なのだが、そういえばたまにおじいさんが店番をしている時があった気がしたが、そうか、あれはパウロさんだったのか。じゃあ、お兄さんの方は息子さんかな?
意外な事実に驚いたがしかし、パウロさんの言葉に違和感を感じた。
ん? 隣の村? ここの隣って、村とかあったっけ?
「あの……隣の村って……?」
「ん? ああ。ここはガネーシャ村だが、ホレッそこに策がしてあるじゃろう? あの柵より向こう側はアネーシャ村なんじゃよ。そしてワシはアネーシャ村の村長じゃ」
柵より向こう側は別の村って……。
全体で一つの村だとばかり思っていたけれど、違ったのか。しかし、村と村の境がなさすぎるだろう、こんなにも近くに隣り合う村とかあるのか?
それに、名前もそっくりだし。
色々な新事実に戸惑う俺だったが、そこで今まで口を閉ざしていたトム村長が口を開く。
「のう……パウロや。やはりお主がーーーー」
「ーーーー帰る」
トム村長の言葉を遮るようにして一言放つと、パウロさんは踵を返してしっかりとした足どりで歩き、柵の向こう側のアネーシャ村へと去っていった。
パウロさんの背中を見送ってから、村長の方をちらりと見てみる。
村長はやはりどこか寂しげで、見ようによっては悲しみの底に沈んでいっているかのように表情がなく肩を落としている。
例により余計なお節介発動。
「どうしたんだい村長? 元気がないじゃないか」
「んん……。何でもないんじゃ。なんでも……」
村長は視線を反らせて言葉を濁す。
「村長らしくないな。いつも元気な村長はどこへいったのやら……。なに? あの人、パウロさんとケンカでもしたの?」
「タケル殿……」
村長は俺の方をちらりと見て、強がりにしか見えない笑みを少しだけ浮かべて、
「本当にタケル殿は物好きな人じゃな。老人の、ワシの話は長いぞ? 覚悟はできておるか?」
「知ってるよ。村長の話が長いことも、話すのが好きなことも」
そんなの当たり前だ。
「それに、村長の方こそ知ってるのか? 俺がとんでもない聞き上手な事」
村長は照れ笑いにも似た笑みを浮かべて、足元の小石を見つめる。
「ふう……」
と、呼吸を整えるように息をひとつ吐いて、村長は俺と向き合うようにした。
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