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エピソード・オブ・タケル
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ドーグさんの毒消し草が起こしたHP全回復という奇跡をその身に受けて俺はとりあえず次の村に向かう。
背の低い草原の中を特に警戒する事なく歩いていく、草が靴と地面にすり潰されて青々しい匂いが柔らかい風に乗って俺の辺りを包んでいた。
突如、
《モンスターがあらわーーーー》
宙へ舞い上がる小石、吸い込まれるような青空を覆い隠す砂埃、大気の壁をぶち抜くように低姿勢からの猛ダッシュ、そして、
ーーーー蹴った。
たぶんスライムだったと思う、あの見慣れた青色具合は。
顔の中心を蹴り飛ばされたスライムらしき物体は遥か前方の草むらへと消えていく。
ダッシュの勢いが落ち着く間もなく次の獲物を発見する。
《モンスターはまだこちらに気づいてーーーー》
ーーーー蹴った。
今度は間違いなくスライムだった。
まるまるとした案外可愛い系な顔をしたスライムの横っ面に靴の先端が突き刺さる。
インパクトの瞬間『ぐぇ』という断末魔の叫びは大地を蹴る足音に掻き消された。
蹴り飛ばされたスライムはまたも遥か前方の草むらへと消えていく。
全力疾走中の俺の視界正面に突如として牙を向いたスライムが飛びかかる。
《モンスターの先制攻ーーーー》
ーーーー蹴った。
一方的に《モンスターの先制攻撃》と言われても、こちらもすでに先制攻撃中である。攻撃の準備、動作はすでに完了している。後はどちらが速いのか?
ーーーー俺だった。
スライムの可愛い系な見た目のせいで端から見ると、道端でくつろいでいる犬とか猫とかを力任せに無差別に蹴り飛ばしているように見えるかもしれないが、忘れないで欲しい。
どんなに可愛かろうがスライムはどこまで行ってもスライムだし。
勇者はどこまで行っても勇者だし。
勇者はモンスターを倒すのが定めである。
だから絵面は酷いだろうが仕方ないのだ。
どうしても可愛いスライムを蹴る事に納得出来ないのなら、こう考えてはどうだろう。
世界を平和に、安全に。そんな事が出来る唯一無二の新感覚スポーツ、それが。
《スライムサッカー》なのだ。
俺は先ほど蹴り飛ばしたスライムのものと思しきお金とか薬草などのドロップアイテムを回収しながら、その後もスライムサッカーに精を出した。
約1時間後、さすがに走り疲れたので一旦立ち止まり休憩がてらステータスを確認してみる。
「はぁ……はぁ……ステータス!」
お馴染みの画面が出現する。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
勇猛
Lv 5
HP 43/43
MP 21
職業 100回目の勇者
装備 旅人の服
お金 461G
状態 通常
魔法 下級火炎魔法
ーーーーーーーーーーーーーーーー
うん、強くなった。
お金も少し貯まったし次の村ーーーーは、無理だから次の次の村でナイフを買おう。
スライムサッカーであらかたのスライムを蹴り終えたこの辺一帯は随分とスッキリし平和な雰囲気に満ち満ちていた。
「さて……」
俺はようやく整った呼吸で一声漏らし、ここから少し東の方角。深い深いウッディールの森の端にある、とてつもなく巨大な樹に寄り添うように存在するこの世界で1番危険な村、ガネーシャ村を目指してゆっくりと歩き出した。
冷たい風がふわりと吹いて草原の草木と俺の火照った身体を優しく撫でた。
秋の乾いた風はスライムサッカーで火照った俺の身体にはとても気持ちよかった。
エピソード・オブ・タケル
終わり。
背の低い草原の中を特に警戒する事なく歩いていく、草が靴と地面にすり潰されて青々しい匂いが柔らかい風に乗って俺の辺りを包んでいた。
突如、
《モンスターがあらわーーーー》
宙へ舞い上がる小石、吸い込まれるような青空を覆い隠す砂埃、大気の壁をぶち抜くように低姿勢からの猛ダッシュ、そして、
ーーーー蹴った。
たぶんスライムだったと思う、あの見慣れた青色具合は。
顔の中心を蹴り飛ばされたスライムらしき物体は遥か前方の草むらへと消えていく。
ダッシュの勢いが落ち着く間もなく次の獲物を発見する。
《モンスターはまだこちらに気づいてーーーー》
ーーーー蹴った。
今度は間違いなくスライムだった。
まるまるとした案外可愛い系な顔をしたスライムの横っ面に靴の先端が突き刺さる。
インパクトの瞬間『ぐぇ』という断末魔の叫びは大地を蹴る足音に掻き消された。
蹴り飛ばされたスライムはまたも遥か前方の草むらへと消えていく。
全力疾走中の俺の視界正面に突如として牙を向いたスライムが飛びかかる。
《モンスターの先制攻ーーーー》
ーーーー蹴った。
一方的に《モンスターの先制攻撃》と言われても、こちらもすでに先制攻撃中である。攻撃の準備、動作はすでに完了している。後はどちらが速いのか?
ーーーー俺だった。
スライムの可愛い系な見た目のせいで端から見ると、道端でくつろいでいる犬とか猫とかを力任せに無差別に蹴り飛ばしているように見えるかもしれないが、忘れないで欲しい。
どんなに可愛かろうがスライムはどこまで行ってもスライムだし。
勇者はどこまで行っても勇者だし。
勇者はモンスターを倒すのが定めである。
だから絵面は酷いだろうが仕方ないのだ。
どうしても可愛いスライムを蹴る事に納得出来ないのなら、こう考えてはどうだろう。
世界を平和に、安全に。そんな事が出来る唯一無二の新感覚スポーツ、それが。
《スライムサッカー》なのだ。
俺は先ほど蹴り飛ばしたスライムのものと思しきお金とか薬草などのドロップアイテムを回収しながら、その後もスライムサッカーに精を出した。
約1時間後、さすがに走り疲れたので一旦立ち止まり休憩がてらステータスを確認してみる。
「はぁ……はぁ……ステータス!」
お馴染みの画面が出現する。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
勇猛
Lv 5
HP 43/43
MP 21
職業 100回目の勇者
装備 旅人の服
お金 461G
状態 通常
魔法 下級火炎魔法
ーーーーーーーーーーーーーーーー
うん、強くなった。
お金も少し貯まったし次の村ーーーーは、無理だから次の次の村でナイフを買おう。
スライムサッカーであらかたのスライムを蹴り終えたこの辺一帯は随分とスッキリし平和な雰囲気に満ち満ちていた。
「さて……」
俺はようやく整った呼吸で一声漏らし、ここから少し東の方角。深い深いウッディールの森の端にある、とてつもなく巨大な樹に寄り添うように存在するこの世界で1番危険な村、ガネーシャ村を目指してゆっくりと歩き出した。
冷たい風がふわりと吹いて草原の草木と俺の火照った身体を優しく撫でた。
秋の乾いた風はスライムサッカーで火照った俺の身体にはとても気持ちよかった。
エピソード・オブ・タケル
終わり。
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