繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・タケル

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 ここは天界、転生の間。

 各世界で役目を終えた魂達が新たな肉体へと生まれ変わる場所。転生の詳細は教えられていないが大まかに言えば、すでに完結している物語の中に自分が転生するというもの。それは村人だったり、会社員だったり、虫だったり、そして勇者だったり……。

 そして今日、俺にとって記念すべき100回目の転生の儀となる。 

 因みに今までの俺の転生先は何の因果か宿命か99回連続の《勇者》だった。

 もはやただの嫌がらせである。

 とは言っても最初の内は……2回目ぐらいまではかなり嬉しかった。『俺には勇者としての真の素質があるんだ!』って、はしゃいでいた。

 それから回を重ね5、6回目くらいからさすがに様子がおかしい事に気付き始めた。何千何万とある候補の中からなぜ毎回《勇者》なのか?

 神に何度も相談したが真相は結局わからないまま今日に至る。

 100回目。

 キリが良く、三桁突入で、特別な数字。

 何かが起こる気がする。

 奇跡が起きる気がする。

 俺が言い知れぬ緊張感と期待に胸を踊らせている間にも転生の儀は進行していく。

「次、坂本龍馬! 前へ!」

 神の使いが転生者リストを読み上げる。

「はいぜよ! やっとワシの出番かや、待ちくたびれたきー!」

 名を呼ばれた者は神の前に立ち、次の転生先を決められる。

 しかし、どうやって転生先を決めるのかと言えば。今回は《くじ玉》だ。

 転生先の書かれた紙を玉の中に入れて更に箱の中に全ての玉を入れてかき混ぜる。箱に付いたハンドルを回せば、先程の玉が1つ出てきてそれが今回の転生先となる。

 何を隠そう、これは俺が考案した方法。名付けて、《ガチャシステム》だ!

 あまりに勇者ばかり続くので嫌気がさし、神に頼みこんで選考方法を変えてもらったんだ。

 因みに、最初は木の棒に転生先が書かれた物を順番に引くって言う、お粗末な物だった。

 しかし今回のガチャシステムならば完全にランダムに公平に平等に転生先を決められる。

 神はガチャシステムのハンドルを回す。

 ―――――ガチャ―――――


「坂本龍馬、君の次の転生先は――犬!」

「犬!? 犬じゃと!? 犬は初めてじゃ! これは楽しみじゃきー!」

「ノラにならないように精一杯頑張ってね!」

 そう言って神は坂本さんを激励した後、転生の間の片隅にある小部屋へと移動させ、どこかの世界へと転生させる。

「次、宮本武蔵! 前へ!」

「うむ」

「前回、君はかなりの人間を切ったみたいだね」

「剣豪ゆえに」

 ―――――ガチャ―――――

「うん。君は今度は魚を切りまくると良いよ。君の次の転生先は――魚屋主人!」

「有り難き幸せ」

「アニサキスには十分気を付けなよ!」

 そう言って宮本さんを例の小部屋に移動させ、どこかの世界へと転生させる。

「次、勇猛いさみたける前へ!」

 そして――遂に俺の記念すべき100回目の転生の儀がはじまった。

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