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終章 私達の物語
10 噂に違わぬ、
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「ーーんっ? ベオウルフ卿と……君は……?」
「ーーほぇ? ローレライにベオウルフ……何をやって……って、あぁぁぁっー!」
怪訝な表情を浮かべ小首を傾げたキングス王太子殿下と、驚きの表情を惜しげもなく顔に浮かべたジェシカ様が私達二人を見つめます。
「ベッ、ベッ、ベオウルフ! 君はまた性懲りもなくローレライに近付いたりして……ローレライを泣かせたら許さないってあの時あれほどーー」
「ーー何を勘違いしているんだいジェシカ嬢。僕は数多くの男性諸君に取り囲まれて困っていたローレライ嬢を助けて差しあげただけだよ?」
「ーーん? ローレ……ライ……?」
「そんな見え透いた嘘までついてローレライにいったい何をしようってーー」
「ああ! もしかして、あなたが噂に聞くあのローレライ嬢ですか!」
キングス王太子殿下は軽快な足取りでこちらへと歩を進めます。
「ーー初めまして、ローレライ嬢。噂はかねてより聞いています」
「はっ、初めまして……キングス王太子殿下。ローレライ・ポーンドットでございます。この度は本当におめでとうございます」
「ふふっーーありがとう。けれどそんなに畏まらなくてもいいよ。それにしても……君が本当にあの噂のローレライ嬢なのかい?」
先ほどからずっと気になっていたんですが、あの噂のローレライとはいったい何でしょう?
私の知らない所でいったいどんな噂が広まっているのでしょうか? 自身の事なので当然気になって気になって仕方がないのですが、そもそも良い噂が広まる筈もないので内容を聞くのがとても怖くもあります。
けれど、もし仮に根も葉もない悪い噂ならばこの場で誤解を解いておきたいとも思います……。だって、殿下とこうして直にお会いして話す機会なんて一生の内にあと何度あるか分かりませんからね。
私は自身の中にある全ての勇気を振り絞って、言葉を口にします。
「……どのような噂なのかは存じませんが、恐らくそのローレライで間違いないと思います」
「ーーふむ。だとすると、私の予想は当たっていたのかな?」
「…………?」
「うら若き聖母が現れた。美しくも儚い小さな一輪花ーーそんな話を度々耳にしていた……」
「ーーっ⁉︎」
「だから私は自身の頭の中でローレライ嬢の姿を日々思い描いていたんだ。きっとこんな人なんだろうなって……」
「…………」
「けれどある日、どういう訳かそんな噂とは対照的な噂も耳にするようになったんだ」
「…………」
「自分より優れた人に嫉妬して周囲の人達に当たり散らすとか、男性を見れば誰かれ構わず色目を使うだとか、そんな噂話をね……」
「…………」
「そんな両極端な噂がたつ人物っていったいどんな人物で、どっちが正解なんだろうなって、気になるじゃない? やっぱり……」
「ーーでっ、殿下! そろそろ行きましょう? 他の方々がお待ちになっていますわ!」
「ああーーうん……。それでね、今日、ここであなたと出会って、全てが分かったよ……」
「…………」
「ーー殿下っ!」
「ローレライ嬢ーーあなたは私が頭に思い描いていた人物よりも、ずっと清らかで美しい」
「…………」
「そんなあなたが悪い噂のような人間であろう筈がない。私はそう思うよ」
「ーー殿下っ! 皆様がお待ちです! 早く皆様のもとに参りましょう! あまりお待たせしては悪いですもの、ほらっ! 早く参りましょう!」
「ーーああ、ごめんジェシカ。ついつい話こんでしまった。では、行こうか。それではまたね、ローレライ嬢」
爽やかな笑みを私に向け殿下はゆっくりと歩を進めます。
私達を取り囲む多くの人達の視線が殿下とジェシカ様の姿を追います。
その途端、鎮まりかえっていた周囲が殿下の歩みに合わせて再び騒がしくなったような気がしました。
すっかりと通り過ぎた殿下の背中に感謝を込めて小さくお辞儀をし、ゆっくりと視線を上げると私の視界には信じられない光景が映り込みました。
いつだって美しく、可憐なジェシカ様が顔を真っ赤に染めてこちらをじっと睨みつけていたのです。
「ーーほぇ? ローレライにベオウルフ……何をやって……って、あぁぁぁっー!」
怪訝な表情を浮かべ小首を傾げたキングス王太子殿下と、驚きの表情を惜しげもなく顔に浮かべたジェシカ様が私達二人を見つめます。
「ベッ、ベッ、ベオウルフ! 君はまた性懲りもなくローレライに近付いたりして……ローレライを泣かせたら許さないってあの時あれほどーー」
「ーー何を勘違いしているんだいジェシカ嬢。僕は数多くの男性諸君に取り囲まれて困っていたローレライ嬢を助けて差しあげただけだよ?」
「ーーん? ローレ……ライ……?」
「そんな見え透いた嘘までついてローレライにいったい何をしようってーー」
「ああ! もしかして、あなたが噂に聞くあのローレライ嬢ですか!」
キングス王太子殿下は軽快な足取りでこちらへと歩を進めます。
「ーー初めまして、ローレライ嬢。噂はかねてより聞いています」
「はっ、初めまして……キングス王太子殿下。ローレライ・ポーンドットでございます。この度は本当におめでとうございます」
「ふふっーーありがとう。けれどそんなに畏まらなくてもいいよ。それにしても……君が本当にあの噂のローレライ嬢なのかい?」
先ほどからずっと気になっていたんですが、あの噂のローレライとはいったい何でしょう?
私の知らない所でいったいどんな噂が広まっているのでしょうか? 自身の事なので当然気になって気になって仕方がないのですが、そもそも良い噂が広まる筈もないので内容を聞くのがとても怖くもあります。
けれど、もし仮に根も葉もない悪い噂ならばこの場で誤解を解いておきたいとも思います……。だって、殿下とこうして直にお会いして話す機会なんて一生の内にあと何度あるか分かりませんからね。
私は自身の中にある全ての勇気を振り絞って、言葉を口にします。
「……どのような噂なのかは存じませんが、恐らくそのローレライで間違いないと思います」
「ーーふむ。だとすると、私の予想は当たっていたのかな?」
「…………?」
「うら若き聖母が現れた。美しくも儚い小さな一輪花ーーそんな話を度々耳にしていた……」
「ーーっ⁉︎」
「だから私は自身の頭の中でローレライ嬢の姿を日々思い描いていたんだ。きっとこんな人なんだろうなって……」
「…………」
「けれどある日、どういう訳かそんな噂とは対照的な噂も耳にするようになったんだ」
「…………」
「自分より優れた人に嫉妬して周囲の人達に当たり散らすとか、男性を見れば誰かれ構わず色目を使うだとか、そんな噂話をね……」
「…………」
「そんな両極端な噂がたつ人物っていったいどんな人物で、どっちが正解なんだろうなって、気になるじゃない? やっぱり……」
「ーーでっ、殿下! そろそろ行きましょう? 他の方々がお待ちになっていますわ!」
「ああーーうん……。それでね、今日、ここであなたと出会って、全てが分かったよ……」
「…………」
「ーー殿下っ!」
「ローレライ嬢ーーあなたは私が頭に思い描いていた人物よりも、ずっと清らかで美しい」
「…………」
「そんなあなたが悪い噂のような人間であろう筈がない。私はそう思うよ」
「ーー殿下っ! 皆様がお待ちです! 早く皆様のもとに参りましょう! あまりお待たせしては悪いですもの、ほらっ! 早く参りましょう!」
「ーーああ、ごめんジェシカ。ついつい話こんでしまった。では、行こうか。それではまたね、ローレライ嬢」
爽やかな笑みを私に向け殿下はゆっくりと歩を進めます。
私達を取り囲む多くの人達の視線が殿下とジェシカ様の姿を追います。
その途端、鎮まりかえっていた周囲が殿下の歩みに合わせて再び騒がしくなったような気がしました。
すっかりと通り過ぎた殿下の背中に感謝を込めて小さくお辞儀をし、ゆっくりと視線を上げると私の視界には信じられない光景が映り込みました。
いつだって美しく、可憐なジェシカ様が顔を真っ赤に染めてこちらをじっと睨みつけていたのです。
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