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終章 私達の物語
9 渦中の存在
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女性のようにしなやかで線の細い身体のライン、間近で見ても見紛うほどに中性的なお顔立ち、この国に住む全ての女性の憧れであり、最終目的とも言われる存在。
ベオウルフ・ハイウィンド様。
そんなお方に手を取られた今の私の状況は、さながら皆さんが見つめる中ひとしきりダンスを踊り終えた直後のような状態です。
胸の鼓動が高鳴る中、ベオウルフ様と自然と合ってしまった視線をすぐさま外します。
「ーーまったく、君はいつも物事の中心にいるんだね。まるで舞台の主役みたいだ……まあ、今は良いスポットライトが当たっているようではないけれど、それも生まれ持っての才能なのかもしれないね……」
「あっ……えっと……その……」
予想だにしない出来事の連続に私の思考はまったくと言っていいほど追いついていません。
「べッーーベオウルフ卿っ! あなた……ローレライ嬢の手をとって、いったい何を……」
「あなた達は、いっ……いったいどういったご関係なのですかっ⁉︎」
「まさかーーローレライ嬢はベオウルフ卿の事を好いておられるのかっ⁉︎」
「こっ、こっ……恋を……恋をしているのですか⁉︎」
「ーーローレライ嬢が僕に恋をだって? はーっはははは! まさか、まさか! そんな事がある訳ないじゃないか。まあ……僕自身、純粋にそうあって欲しいとは思うが残念ながらそれはない。だってーー」
ベオウルフ様はしなやかな指使いで私の顎をそっと持ち上げると、驚くほどに澄んだ瞳で真っ直ぐに私の目を見つめます。
その眼差しは私の目ではなく、まるで心のずっと奥の方を覗き込んでいるかのように思いました。
心の奥の方、あるいは奥底を徹底的に真っ直ぐに。
「ーーローレライ嬢はすでに恋をしているから」
「えっ……」
「そんな……」
「いったい誰に……」
「僕がローレライ嬢ときちんとお会いしたのはほんの少し前の事なんだけど、恐らくあの時点ですでにローレライ嬢は恋をしていた。ローレライ嬢の心の中には、すでにとある人物がいたーー僕はそう思うよ」
「ではやはり……未だにアシュトレイ卿を……?」
「じゃ、じゃあ……君とローレライ嬢の関係は……?」
「んー……友達……かな? 一応」
「「「と、友達……」」」
「ねえ、ローレライ嬢? 当たってる? 僕が言った事?」
「えっ……?」
「君が誰かに恋をしているって話……」
「そっ、それは……」
私が質問に答え兼ねていると、ただでさえ騒がしい周辺が何だか更に騒がしくなっている事に気付きました。
皆さんの視線が私達から外れ、別の騒ぎの方へと集中します。
「これはこれは殿下ーーまことにおめでとうございます」
「おめでとうございます、殿下。ジェシカ嬢も変わらず実にお美しいお姿でーー」
「お二人の幸せを心よりお祈りいたしております、殿下」
そんな言葉がポツリポツリと聞こえてきたかと思っていると、私達を取り囲んでいた人達の一部がその場で踵を返し、お辞儀を始めたのです。
「ーーありがとう」
「ーーありがとうございます」
私とベオウルフ様を取り囲んでいた円の一角が崩れ非常に歪な形となった頃、まるでこの場に引き寄せられるように今回の主役であるキングス王太子殿下とジェシカ様がおいでになりました。
「あっ……キングス殿下、ジェシカ様……」
「ーーんっ?」
「ーーほぇ?」
「あーあ……もう一人の主役が来ちゃったね……」
ベオウルフ様はそう呟きながら小さく肩を竦めました。
ベオウルフ・ハイウィンド様。
そんなお方に手を取られた今の私の状況は、さながら皆さんが見つめる中ひとしきりダンスを踊り終えた直後のような状態です。
胸の鼓動が高鳴る中、ベオウルフ様と自然と合ってしまった視線をすぐさま外します。
「ーーまったく、君はいつも物事の中心にいるんだね。まるで舞台の主役みたいだ……まあ、今は良いスポットライトが当たっているようではないけれど、それも生まれ持っての才能なのかもしれないね……」
「あっ……えっと……その……」
予想だにしない出来事の連続に私の思考はまったくと言っていいほど追いついていません。
「べッーーベオウルフ卿っ! あなた……ローレライ嬢の手をとって、いったい何を……」
「あなた達は、いっ……いったいどういったご関係なのですかっ⁉︎」
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「こっ、こっ……恋を……恋をしているのですか⁉︎」
「ーーローレライ嬢が僕に恋をだって? はーっはははは! まさか、まさか! そんな事がある訳ないじゃないか。まあ……僕自身、純粋にそうあって欲しいとは思うが残念ながらそれはない。だってーー」
ベオウルフ様はしなやかな指使いで私の顎をそっと持ち上げると、驚くほどに澄んだ瞳で真っ直ぐに私の目を見つめます。
その眼差しは私の目ではなく、まるで心のずっと奥の方を覗き込んでいるかのように思いました。
心の奥の方、あるいは奥底を徹底的に真っ直ぐに。
「ーーローレライ嬢はすでに恋をしているから」
「えっ……」
「そんな……」
「いったい誰に……」
「僕がローレライ嬢ときちんとお会いしたのはほんの少し前の事なんだけど、恐らくあの時点ですでにローレライ嬢は恋をしていた。ローレライ嬢の心の中には、すでにとある人物がいたーー僕はそう思うよ」
「ではやはり……未だにアシュトレイ卿を……?」
「じゃ、じゃあ……君とローレライ嬢の関係は……?」
「んー……友達……かな? 一応」
「「「と、友達……」」」
「ねえ、ローレライ嬢? 当たってる? 僕が言った事?」
「えっ……?」
「君が誰かに恋をしているって話……」
「そっ、それは……」
私が質問に答え兼ねていると、ただでさえ騒がしい周辺が何だか更に騒がしくなっている事に気付きました。
皆さんの視線が私達から外れ、別の騒ぎの方へと集中します。
「これはこれは殿下ーーまことにおめでとうございます」
「おめでとうございます、殿下。ジェシカ嬢も変わらず実にお美しいお姿でーー」
「お二人の幸せを心よりお祈りいたしております、殿下」
そんな言葉がポツリポツリと聞こえてきたかと思っていると、私達を取り囲んでいた人達の一部がその場で踵を返し、お辞儀を始めたのです。
「ーーありがとう」
「ーーありがとうございます」
私とベオウルフ様を取り囲んでいた円の一角が崩れ非常に歪な形となった頃、まるでこの場に引き寄せられるように今回の主役であるキングス王太子殿下とジェシカ様がおいでになりました。
「あっ……キングス殿下、ジェシカ様……」
「ーーんっ?」
「ーーほぇ?」
「あーあ……もう一人の主役が来ちゃったね……」
ベオウルフ様はそう呟きながら小さく肩を竦めました。
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