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4章 おまじないがもたらすモノ
7 話術
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「アリー姉様は……魔法使い……なのですか?」
もっと序盤にしておくべき質問が、よくやく私の口から溢れ落ちました。
今の今まで何故それを口にしなかったのかは、さっきも言ったようにアリーお姉様が当たり前のようにどんどんと話を進めていくというのが大きな要因であると言えますが、それと同じくらい大きな要因である普通では常識では考えられない、絶対に有り得ないという思いが強かったからです。
私自身、幼い頃はよく魔法使いになる事を夢に見てはその小さな胸を高鳴らせていました。けれど、年齢を重ねるにつれてこの世に魔法なんてものは無いのだと知り、自身の幼い心がその幼さゆえに思い描いた絵空事のような儚い夢にいつしか区切りをつけたのです。
ですからこの年齢になった今、あなたは魔法使いなのですか? などという突飛な質問は通常ではなかなか出てくるものではありません。
それでも今回私がそれを口にしたのは、他でもないアリーお姉様ご本人がそう思わせる事を言ったからであって、決して私一人の考えによっての発言ではありません。
「ーー魔法使い? さてね……どうなのかしら? もしも私が魔法使いなのだとしたら、この世に生きる人全てが魔法使いだという事になりそうではあるけれど……レライはどうしてそう思うの?」
と、アリーお姉様はまたしても煙に巻くような事を口にします。
いつもそうなんです。アリーお姉様は。
ひとつ質問をすれば、ひとつの謎が追加されて返ってくると言うか何というか……。そうこうしているうちに、最初に何を聞こうとしていたのか忘れてしまって、最終的にうまく籠絡されてしまうんです。
なので、アリーお姉様と話しているとまるで会話の迷路に迷い込んだような不思議な気持ちになるんです。
出口が分からずに泣きそうになると、曲がり角の先からアリーお姉様の手が伸びて手招きされたり、時には名前を呼ばれてその声を頼りに歩いてみたり、足跡を辿ってみたり、落とし物を追ってみたり、匂いや気配を追うという時も間々あります。そうやってアリーお姉様に導かれてついに辿り着いた場所は、きっと私が目指していた場所ではなくアリーお姉様が意図的に向かわせた場所なんです。
きっとその場所に私を辿り着かせたは、アリーお姉様なりの理由があるはずなのでしょうが……。
私にはその理由が何なのかは正直分かりませんが、それでも分かる事もあります。それは、きっと私のためになる事だからです。
私のため、私の助けとなるからです。
アリーお姉様はそういうお方なのです。
「なぜってそれは……アリーお姉様って昔から不思議な感じがしますし、なによりアリーお姉様がおまじないを掛けたとか、おまじないが消えているって言っていたじゃないですか」
「ふむふむ。レライ、あなた子供の頃転んだりして怪我をした時にお母様に『痛いの痛いの飛んでいけ』って、やってもらわなかった?」
「ーーはい。すごく幼い頃に何度か。それが何か……?」
「ようはそれと同じよ」
アリーお姉様はごく当たり前の事を言うようにそう言います。
小さな子供がいる家庭ならそのほとんどの家で当たり前のようにやられている、民間療法と言うのも憚られてしまうほど幼稚な気休め程度のおまじない。
怪我や病気に対して何の根拠も効果もないただの迷信、いわば祈りのようなもの。
神に祈りを捧げる分、祈りの方がよほど神秘的な効果がありそうです。
アリーお姉様は、そんな気休め程度のおまじないを私に掛けて私を守ろうとしてくれたのでしょうか?
あくまでも魔法といったものではなく、私達にも馴染みの深いおまじないといったもので。
「でも……あれは怪我をした子供を安心させる為の気休め程度のものであって……アリー姉様のおっしゃる、反射とかそういうものでは……」
「同じよ」
と、アリー姉様は毅然とした態度できっぱりとそうおっしゃいます。
「やってる事は同じ。ただ、私の場合ーー結果が実現するだけ」
もっと序盤にしておくべき質問が、よくやく私の口から溢れ落ちました。
今の今まで何故それを口にしなかったのかは、さっきも言ったようにアリーお姉様が当たり前のようにどんどんと話を進めていくというのが大きな要因であると言えますが、それと同じくらい大きな要因である普通では常識では考えられない、絶対に有り得ないという思いが強かったからです。
私自身、幼い頃はよく魔法使いになる事を夢に見てはその小さな胸を高鳴らせていました。けれど、年齢を重ねるにつれてこの世に魔法なんてものは無いのだと知り、自身の幼い心がその幼さゆえに思い描いた絵空事のような儚い夢にいつしか区切りをつけたのです。
ですからこの年齢になった今、あなたは魔法使いなのですか? などという突飛な質問は通常ではなかなか出てくるものではありません。
それでも今回私がそれを口にしたのは、他でもないアリーお姉様ご本人がそう思わせる事を言ったからであって、決して私一人の考えによっての発言ではありません。
「ーー魔法使い? さてね……どうなのかしら? もしも私が魔法使いなのだとしたら、この世に生きる人全てが魔法使いだという事になりそうではあるけれど……レライはどうしてそう思うの?」
と、アリーお姉様はまたしても煙に巻くような事を口にします。
いつもそうなんです。アリーお姉様は。
ひとつ質問をすれば、ひとつの謎が追加されて返ってくると言うか何というか……。そうこうしているうちに、最初に何を聞こうとしていたのか忘れてしまって、最終的にうまく籠絡されてしまうんです。
なので、アリーお姉様と話しているとまるで会話の迷路に迷い込んだような不思議な気持ちになるんです。
出口が分からずに泣きそうになると、曲がり角の先からアリーお姉様の手が伸びて手招きされたり、時には名前を呼ばれてその声を頼りに歩いてみたり、足跡を辿ってみたり、落とし物を追ってみたり、匂いや気配を追うという時も間々あります。そうやってアリーお姉様に導かれてついに辿り着いた場所は、きっと私が目指していた場所ではなくアリーお姉様が意図的に向かわせた場所なんです。
きっとその場所に私を辿り着かせたは、アリーお姉様なりの理由があるはずなのでしょうが……。
私にはその理由が何なのかは正直分かりませんが、それでも分かる事もあります。それは、きっと私のためになる事だからです。
私のため、私の助けとなるからです。
アリーお姉様はそういうお方なのです。
「なぜってそれは……アリーお姉様って昔から不思議な感じがしますし、なによりアリーお姉様がおまじないを掛けたとか、おまじないが消えているって言っていたじゃないですか」
「ふむふむ。レライ、あなた子供の頃転んだりして怪我をした時にお母様に『痛いの痛いの飛んでいけ』って、やってもらわなかった?」
「ーーはい。すごく幼い頃に何度か。それが何か……?」
「ようはそれと同じよ」
アリーお姉様はごく当たり前の事を言うようにそう言います。
小さな子供がいる家庭ならそのほとんどの家で当たり前のようにやられている、民間療法と言うのも憚られてしまうほど幼稚な気休め程度のおまじない。
怪我や病気に対して何の根拠も効果もないただの迷信、いわば祈りのようなもの。
神に祈りを捧げる分、祈りの方がよほど神秘的な効果がありそうです。
アリーお姉様は、そんな気休め程度のおまじないを私に掛けて私を守ろうとしてくれたのでしょうか?
あくまでも魔法といったものではなく、私達にも馴染みの深いおまじないといったもので。
「でも……あれは怪我をした子供を安心させる為の気休め程度のものであって……アリー姉様のおっしゃる、反射とかそういうものでは……」
「同じよ」
と、アリー姉様は毅然とした態度できっぱりとそうおっしゃいます。
「やってる事は同じ。ただ、私の場合ーー結果が実現するだけ」
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