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3章 同性愛と崩壊する心
28 苛立ち
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「ーーーーっ! だから、ローレライは綺麗なのよ!」
「なんです急に⁉︎」
「最初話してた事、たった今思い出したから忘れないうちに急いで口に出したのよ!」
「そっ、そんなお話してました?」
「そうよ、そうだわ! ローレライは綺麗で、周りの人達も綺麗だって言ってて、ベオウルフがここに来た理由こそがその証明だって話をしていたのよ! あのスーパーフェミニストは美人の所にしか現れない! つまり今日ここに来たと言う事はあのスーパーフェミニストに認められたって事なのよ! だからって何か得する訳でもないけれど……。あー! すっきりしたー! 胸のもやもやが消え去ったわー!」
ジェシカ様はとても気持ちがよさそうに言います。
「で、ベオウルフには気を付けてね?」
「はい? 気を付けるとはどういう……」
「だから、ベオウルフって見た目がそこそこ良いから結構人気があるのよね。浮気とか平気でやっちゃいそうじゃない?」
「はあ……」
「まあでも、ローレライのタイプではなさそうよね、ベオウルフって」
「でも、すごくお美しい方ですよね、やっぱり」
「ーーーー嘘っ⁉︎ ローレライはベオウルフが好きなのっ⁉︎」
「ーーーー違っ! 好きとかじゃないんです。ただ綺麗だなって……」
「うーん……男性らしからぬ顔立ちをしているからねぇ。男性と女性の中間にいるって感じかな?」
「でしょうか?」
「まあまあ、忠告だけはしておくわ。ローレライがそれでも良いって言うなら好きにすればいいよ。私にそれを止める権利はないものね」
「はい……でも、たぶん大丈夫ではないかと……」
「そう? だったらいいわ。あっ、そうそう! 今日はそんな事を言いにわざわざ来たわけじゃないのよ! ミーティア!」
ジェシカ様がそう口にすると今までどこに控えていたのか、肩口まで伸びた艶やかな黒髪の侍女の方が小さな袋を大事そうに抱えて現れました。
背丈が小さなとても可愛らしい方です。
「ーー失礼します」
小さくお辞儀をしながら放たれたその声は、今にも消え入りそうな儚い美しさを感じる声でした。
「ありがとう、ミーティア」
ジェシカ様はそうおっしゃるとミーティアさんという方から小さな袋を受け取り、それをそのまま私の方へと差し出しました。
「これは……?」
「あげる。クッキーよ。ほらっ、先日ニルヴァーナ邸で一緒に食べたじゃない。あれ美味しかったから私も隣国から取り寄せたのよ、だから少し分けてあげる」
「よろしいんですかっ⁉︎ すごく高価な物では……」
「うーん……分かんない! でもいっぱい取り寄せたから平気よ。それに貰ってくれないとさすがに私、太っちゃいそうだから! あ、それとさっきいた栗色の髪の可愛いメイドさんにも分けてあげてね。きっと喜んでくれると思うから!」
栗色の髪の可愛いメイド。間違いなくアンナの事ですね。
大切な友人の事を可愛いと褒めてもらえた事がまるで自分の事のようにとても嬉しいです。
ですが何でしょう?
嬉しいと思う反面、それと同じくらい胸に漂う嫌なこの感じは……。
考えれば考えるほどに、その嫌な感じが次第に胸の中で大きくなっていくのを感じます。
とても嫌な感じです。以前ーーはっきりと覚えてはいませんが数年前にもこれと同じような感情を抱いたような気がします。
身体が内面から震えます。思考が定まりません。血液が脈を打ちながらものすごい勢いで身体中を巡っています。身体が燃えるように熱いです。どんどん体温が天井知らずに上がっていくようです。頭が、意識が痺れぼんやりとします。
これはーー苛立ちでしょうか?
私は今、苛立っている?
何に?
誰に?
アンナに?
私は今ーーーーアンナに苛立っている?
「なんです急に⁉︎」
「最初話してた事、たった今思い出したから忘れないうちに急いで口に出したのよ!」
「そっ、そんなお話してました?」
「そうよ、そうだわ! ローレライは綺麗で、周りの人達も綺麗だって言ってて、ベオウルフがここに来た理由こそがその証明だって話をしていたのよ! あのスーパーフェミニストは美人の所にしか現れない! つまり今日ここに来たと言う事はあのスーパーフェミニストに認められたって事なのよ! だからって何か得する訳でもないけれど……。あー! すっきりしたー! 胸のもやもやが消え去ったわー!」
ジェシカ様はとても気持ちがよさそうに言います。
「で、ベオウルフには気を付けてね?」
「はい? 気を付けるとはどういう……」
「だから、ベオウルフって見た目がそこそこ良いから結構人気があるのよね。浮気とか平気でやっちゃいそうじゃない?」
「はあ……」
「まあでも、ローレライのタイプではなさそうよね、ベオウルフって」
「でも、すごくお美しい方ですよね、やっぱり」
「ーーーー嘘っ⁉︎ ローレライはベオウルフが好きなのっ⁉︎」
「ーーーー違っ! 好きとかじゃないんです。ただ綺麗だなって……」
「うーん……男性らしからぬ顔立ちをしているからねぇ。男性と女性の中間にいるって感じかな?」
「でしょうか?」
「まあまあ、忠告だけはしておくわ。ローレライがそれでも良いって言うなら好きにすればいいよ。私にそれを止める権利はないものね」
「はい……でも、たぶん大丈夫ではないかと……」
「そう? だったらいいわ。あっ、そうそう! 今日はそんな事を言いにわざわざ来たわけじゃないのよ! ミーティア!」
ジェシカ様がそう口にすると今までどこに控えていたのか、肩口まで伸びた艶やかな黒髪の侍女の方が小さな袋を大事そうに抱えて現れました。
背丈が小さなとても可愛らしい方です。
「ーー失礼します」
小さくお辞儀をしながら放たれたその声は、今にも消え入りそうな儚い美しさを感じる声でした。
「ありがとう、ミーティア」
ジェシカ様はそうおっしゃるとミーティアさんという方から小さな袋を受け取り、それをそのまま私の方へと差し出しました。
「これは……?」
「あげる。クッキーよ。ほらっ、先日ニルヴァーナ邸で一緒に食べたじゃない。あれ美味しかったから私も隣国から取り寄せたのよ、だから少し分けてあげる」
「よろしいんですかっ⁉︎ すごく高価な物では……」
「うーん……分かんない! でもいっぱい取り寄せたから平気よ。それに貰ってくれないとさすがに私、太っちゃいそうだから! あ、それとさっきいた栗色の髪の可愛いメイドさんにも分けてあげてね。きっと喜んでくれると思うから!」
栗色の髪の可愛いメイド。間違いなくアンナの事ですね。
大切な友人の事を可愛いと褒めてもらえた事がまるで自分の事のようにとても嬉しいです。
ですが何でしょう?
嬉しいと思う反面、それと同じくらい胸に漂う嫌なこの感じは……。
考えれば考えるほどに、その嫌な感じが次第に胸の中で大きくなっていくのを感じます。
とても嫌な感じです。以前ーーはっきりと覚えてはいませんが数年前にもこれと同じような感情を抱いたような気がします。
身体が内面から震えます。思考が定まりません。血液が脈を打ちながらものすごい勢いで身体中を巡っています。身体が燃えるように熱いです。どんどん体温が天井知らずに上がっていくようです。頭が、意識が痺れぼんやりとします。
これはーー苛立ちでしょうか?
私は今、苛立っている?
何に?
誰に?
アンナに?
私は今ーーーーアンナに苛立っている?
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