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2章 お茶会
33 終わる本当のお茶会
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「……ひっ……ひぐっ……」
こんなに泣いたのはいつぶりでしょう……。今まで色々な事があってすごく大変な思いをしてきましたが、こんなにも泣いたのはそうありません。
そうですね……。八年前、お母様がお亡くなりになった、あの時以来でしょうか?
当時の私はまだ七歳でしたし、お父様が何故あんなにも泣いているのか? お母様は何故いつまで経ってもベッドから起きてこないのか? 何故、使用人の皆さんが珍しくお母様の寝室にお集まりになっているのか? その全てが全く理解出来ずにいました。
そんな私は部屋全体を包むいつもと違う雰囲気を子供ながらに感じ戸惑いながらも、お母様と遊びたくってベッドに駆け寄りお母様の手を握ったんです。しかし、その時に衝撃を受けました。
あんなにも温かくて柔らかかったお母様の手が信じられないほど、冷たくなってしまっていたのです。
それはまるでお母様の姿形をした全くの別のものであるかのように、異質なものでした。
その事で私は大泣きしてしまいました。
悲しかった訳ではありません。
ただ、怖くて不安だったんだと思います。
私のお母様が今までとは違う別の何かになってしまったんだって……、もう会えないんだって……、だからお父様も皆さんもあんなに悲しそうなんだって……、そんな風に感覚的に思ってしまったんです。
あの時以来、ですかね……。
「ーーーーさて、アレンビー嬢、ルークレツィア嬢。お茶会をお開きにしますわよ! 二人とも集まって!」
ベアトリック様のお声掛けに御二方はすぐにこちらへと歩み寄り、四人で小さな輪になります。
それは、奇しくもお茶会開始時の光景にそっくりなものでした。ただ一人、ジェシカ様の姿はありませんが。
ベアトリック様は私達三人の顔を順番に見つめると、こくりと一度うなずき、口を開きます。
「では、これにて本日のお茶会は終了とします。皆さん、よろしいですね?」
「「「…………」」」
アレンビー様とルークレツィア様は無言のまま、こくりとうなずきました。
やっとーーーーやっと、終わった。
痛みと恐怖が渦巻く本当のお茶会が……。
やっと、お家に帰る事が出来る。
私は内心、ホッと胸を撫で下ろす思いでした。
ですが、
「ーーーーそれで、ローレライ嬢? その姿はいったいどうしたのですか?」
と、ベアトリック様から想像だにしない質問を投げかけられました。
その姿とは、今の私の身なりの事でしょう。
どうしたの? とは、私の今の姿がどうしてそうなったのか、という事でしょうか?
つまり。
いつ、どこで、誰が、何をして、どうなったから、そうなったのかーーーーその理由を聞いているのでしょうか?
それはつまり、
私の身体が傷だらけの理由。
私の心が傷だらけの理由。
お母様のドレスが傷だらけの理由。
まさか、それらについて質問しているのでしょうか。私はまたしても状況がよく理解出来ません。
というか、状況なんて本当のお茶会が始まってからずっと理解出来ていません。
いえ。それを言うならお茶会開催のお手紙を頂いた時点から、状況なんてまるっきり分からないままです。
でも、ベアトリック様はいったい何が聞きたいのでしょう? 今日、ここであった事は全部その目ではっきりと見ている筈なのに。どころか、主犯ーーーーいいえ。もしかして、何かの理由で少し変になってしまっていたのが今やっといつもの状態に戻って、でも記憶が曖昧になっていて……みたいな事でしょうか。
なのであればベアトリック様には真実をお伝えしなくては……とてもお伝えしづらい事ではありますが……。
私は最後の勇気をふりしぼって言いました。
こんなに泣いたのはいつぶりでしょう……。今まで色々な事があってすごく大変な思いをしてきましたが、こんなにも泣いたのはそうありません。
そうですね……。八年前、お母様がお亡くなりになった、あの時以来でしょうか?
当時の私はまだ七歳でしたし、お父様が何故あんなにも泣いているのか? お母様は何故いつまで経ってもベッドから起きてこないのか? 何故、使用人の皆さんが珍しくお母様の寝室にお集まりになっているのか? その全てが全く理解出来ずにいました。
そんな私は部屋全体を包むいつもと違う雰囲気を子供ながらに感じ戸惑いながらも、お母様と遊びたくってベッドに駆け寄りお母様の手を握ったんです。しかし、その時に衝撃を受けました。
あんなにも温かくて柔らかかったお母様の手が信じられないほど、冷たくなってしまっていたのです。
それはまるでお母様の姿形をした全くの別のものであるかのように、異質なものでした。
その事で私は大泣きしてしまいました。
悲しかった訳ではありません。
ただ、怖くて不安だったんだと思います。
私のお母様が今までとは違う別の何かになってしまったんだって……、もう会えないんだって……、だからお父様も皆さんもあんなに悲しそうなんだって……、そんな風に感覚的に思ってしまったんです。
あの時以来、ですかね……。
「ーーーーさて、アレンビー嬢、ルークレツィア嬢。お茶会をお開きにしますわよ! 二人とも集まって!」
ベアトリック様のお声掛けに御二方はすぐにこちらへと歩み寄り、四人で小さな輪になります。
それは、奇しくもお茶会開始時の光景にそっくりなものでした。ただ一人、ジェシカ様の姿はありませんが。
ベアトリック様は私達三人の顔を順番に見つめると、こくりと一度うなずき、口を開きます。
「では、これにて本日のお茶会は終了とします。皆さん、よろしいですね?」
「「「…………」」」
アレンビー様とルークレツィア様は無言のまま、こくりとうなずきました。
やっとーーーーやっと、終わった。
痛みと恐怖が渦巻く本当のお茶会が……。
やっと、お家に帰る事が出来る。
私は内心、ホッと胸を撫で下ろす思いでした。
ですが、
「ーーーーそれで、ローレライ嬢? その姿はいったいどうしたのですか?」
と、ベアトリック様から想像だにしない質問を投げかけられました。
その姿とは、今の私の身なりの事でしょう。
どうしたの? とは、私の今の姿がどうしてそうなったのか、という事でしょうか?
つまり。
いつ、どこで、誰が、何をして、どうなったから、そうなったのかーーーーその理由を聞いているのでしょうか?
それはつまり、
私の身体が傷だらけの理由。
私の心が傷だらけの理由。
お母様のドレスが傷だらけの理由。
まさか、それらについて質問しているのでしょうか。私はまたしても状況がよく理解出来ません。
というか、状況なんて本当のお茶会が始まってからずっと理解出来ていません。
いえ。それを言うならお茶会開催のお手紙を頂いた時点から、状況なんてまるっきり分からないままです。
でも、ベアトリック様はいったい何が聞きたいのでしょう? 今日、ここであった事は全部その目ではっきりと見ている筈なのに。どころか、主犯ーーーーいいえ。もしかして、何かの理由で少し変になってしまっていたのが今やっといつもの状態に戻って、でも記憶が曖昧になっていて……みたいな事でしょうか。
なのであればベアトリック様には真実をお伝えしなくては……とてもお伝えしづらい事ではありますが……。
私は最後の勇気をふりしぼって言いました。
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