34 / 125
2章 お茶会
25 悪魔的な笑み
しおりを挟む
「本当のお茶会を始めましょう。ねえ……ローレライ」
絡みついてくるような粘着性を帯びたその声質に、私の背中には言い知れぬ悪寒が走りました。
瞬時に胸の鼓動が際限なく高鳴ります。
また……変わった?
ついさっき、侍女の方が訪れた事でそれまでの楽しいお茶会の雰囲気は一変し、妙に静まり返ったどこかわざとらしい空気感に包まれていました。
ですがそれは、お茶会中のテーブルマナーが私達以外の他の人にはとても見せられない姿だったから取り繕うためにそうしていたはずなんです。
ですから、侍女の方が席を外した今はさっきまでのリラックスした雰囲気に戻ると思っていたのですが……今の薔薇園の雰囲気は何というか……重苦しく、極度の緊張感が漂っていて、下手に動けば取り返しがつかなくなってしまうような、そんな印象を受けました。
私は自然と呼吸が荒くなり、身体がわずかに震えだしました。
これは……この感覚は……恐怖心……。
そうです。お父様に叱られた時のような極度の緊張と恐怖心から身体が萎縮してしまい、まともに動く事すら出来ません。
しかし、私は何に対して恐怖しているのでしょう。さっきまであんなに楽しい時間を過ごしていたのに。
このーーーー今のこの薔薇園の雰囲気だってきっと気のせいで……そうです、右手に感じたあの違和感のせいです。私の右手に薔薇の蔓が巻きついた映像が一瞬見えたから、だから急にびっくりしたというか怖くなって……そうだ、これは怖い話を聞いた後にちょっとした物音が恐ろしく感じてしまうあの現象と同じです。そうです、絶対にそうです。全部私の気のせいです。その証拠に後ろを振り返れば、にこやかなベアトリック嬢がテーブルで紅茶を飲んで楽しくお話をしているはずです。
私は懸命に作り上げた笑顔で後ろを振り返りベアトリック嬢の方へ視線を送ります。
そこには先程と同じようにテーブルについたベアトリック嬢がいました。
ですが、ベアトリック嬢の表情は決してにこやかなものではなく、代わりにーーーー
とても、
とても凄惨な、悪魔的な笑みを浮かべてこちらを見ていたのです。
絡みついてくるような粘着性を帯びたその声質に、私の背中には言い知れぬ悪寒が走りました。
瞬時に胸の鼓動が際限なく高鳴ります。
また……変わった?
ついさっき、侍女の方が訪れた事でそれまでの楽しいお茶会の雰囲気は一変し、妙に静まり返ったどこかわざとらしい空気感に包まれていました。
ですがそれは、お茶会中のテーブルマナーが私達以外の他の人にはとても見せられない姿だったから取り繕うためにそうしていたはずなんです。
ですから、侍女の方が席を外した今はさっきまでのリラックスした雰囲気に戻ると思っていたのですが……今の薔薇園の雰囲気は何というか……重苦しく、極度の緊張感が漂っていて、下手に動けば取り返しがつかなくなってしまうような、そんな印象を受けました。
私は自然と呼吸が荒くなり、身体がわずかに震えだしました。
これは……この感覚は……恐怖心……。
そうです。お父様に叱られた時のような極度の緊張と恐怖心から身体が萎縮してしまい、まともに動く事すら出来ません。
しかし、私は何に対して恐怖しているのでしょう。さっきまであんなに楽しい時間を過ごしていたのに。
このーーーー今のこの薔薇園の雰囲気だってきっと気のせいで……そうです、右手に感じたあの違和感のせいです。私の右手に薔薇の蔓が巻きついた映像が一瞬見えたから、だから急にびっくりしたというか怖くなって……そうだ、これは怖い話を聞いた後にちょっとした物音が恐ろしく感じてしまうあの現象と同じです。そうです、絶対にそうです。全部私の気のせいです。その証拠に後ろを振り返れば、にこやかなベアトリック嬢がテーブルで紅茶を飲んで楽しくお話をしているはずです。
私は懸命に作り上げた笑顔で後ろを振り返りベアトリック嬢の方へ視線を送ります。
そこには先程と同じようにテーブルについたベアトリック嬢がいました。
ですが、ベアトリック嬢の表情は決してにこやかなものではなく、代わりにーーーー
とても、
とても凄惨な、悪魔的な笑みを浮かべてこちらを見ていたのです。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる