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2章 お茶会
21 無茶なお願い
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うつむいて首を横に振る私を見てジェシカ様は、それまで覗き込むようにしていた姿勢を真っ直ぐに伸ばし額に手を当て言います。
「あー……ごめん。それはそうだよね。辛い事があったばかりなんだから今は一人になりたいよね。本当、私ったらデリカシーのかけらもないんだから……ごめんね、ローレライ」
「そんなっ! 謝らないでくださいジェシカ様! ジェシカ様は何も悪くありません! ジェシカ様のそのお優しいお気持ちだけありがたく頂きます!」
「そ、そう……?」
「はい!」
咄嗟の事だったとは言え、かなり語気が強くなってしまいました。ジェシカ様が若干びっくりしています。
「ーーーーあ、それとさローレライ」
「はい、何でしょう。ジェシカ様」
「うん。そのジェシカ様ってやめない? 私達って同じ年なんだし普通にジェシカって呼んーーーー」
「ダメです! 絶対にダメです! どう考えたってダメです! ジェシカ様は高貴なお方で、同じ貴族とはいえ私は男爵家の娘で、身分が大違いで、本来ならこんな素敵なお茶会に参加しているのもおこがましいくらいで、男爵家の中でも特に力も何もなくて、財力を少し得ただけの平民の方々と同じで、見た目も全然……比べる事自体が不遜なくらいです。そんな私とジェシカ様が、無礼にも、程遠く、そんな事は決して誰も許してくれなくて、お父様にだってすごく叱られて、ジェシカ様がお喋りになっている途中に口を挟むようなとんでもない無礼者で、それに、それにーーーー」
「ちょっ! ちょっと、ちょっと! 落ち着いて、ローレライ! どうしたの? 後半の方なんて、何言ってるのか全く分かんないよ……」
ジェシカ様は私の両腕を掴んで呆れたような苦笑いを浮かべています。
テーブルの向こうではベアトリック様達も呆気にとられたような表情でこちらの様子を見ています。
「ごっ、ごめんなさい……」
「もう……。別にあんなに興奮する事ないでしょう? たかが呼び捨てにするくらいなんだから」
私は今すぐ反論したくなる気持ちをグッと堪えて、首を力強く横に振って意思を示します。
ジェシカ様を呼び捨てにするなんて絶対に無理です。してはいけないんです。それだけは。
「えー……。なんでよーいいじゃない、同じ年なんだしー。ねーえー、ローレライー」
「ジェ、ジェシカ様、さすがにそれは……」
「こういう時だけよ? さすがに公の場で呼び捨てにしちゃったらローレライが非難されちゃうだろうけど、こういった仲良しだけが集まった秘密のお茶会だけだったら問題ないんじゃない?」
「しかし……」
「よしっ、じゃあ決定! さっそく呼んでみて、ローレライ」
ジェシカ様は得意げに腕組みしながらそう言うと、私に催促します。困り果てた私は覚悟を決めてジェシカ様を呼ぼうとしますが、呼ぼうとすればするほどうつむいてしまいます。
なのできっと、ベアトリック様達からは私がものすごくジェシカ様から叱られているように見えているのかも知れません。
「ジェ……ジェシ……ジェシカ……様」
「様は要らない。禁止なの!」
「ジェシカ……陛下」
「いつから私は女王様になったのよ……」
「ジェシカ……殿下」
「だから私は王族じゃないってば!」
「アヴァドニア公爵令嬢……ジェシカ」
「んー、なんか違う。そういうんじゃない」
「レディージェシカ」
「うーん……もうちょっと! 頑張って!」
ジェシカ様は可憐なその両手をグッと握りしめて応援してくれました。
ベアトリック様達も嬉々としてこちらの様子を伺っています。
身体が熱いです。変な汗が出ます。心臓が爆発してしまいそうです。そして、
「ジェシ……カ嬢」
「え?」
ジェシカ様は可愛いらしく小首を傾げて聞き返してきました。
「ジェシカ嬢、これ以上は本当に無理です。許してください……」
「そっかー。うーん……まあ仕方ないか。無理に呼ばせるのも可哀想だもんね」
「ごめんなさい……」
「まあ、いいわ。でも、慣れてきたらジェシカって呼んでね?」
「は……はい……努力します……」
「じゃあ、ローレライ。私の事、ベアトリックって呼んでね」
「ーーーー無理ですっ!」
その後、しばらくみなさんから同じ内容の事を催促され、たじたじするしか無かった私でした。
「あー……ごめん。それはそうだよね。辛い事があったばかりなんだから今は一人になりたいよね。本当、私ったらデリカシーのかけらもないんだから……ごめんね、ローレライ」
「そんなっ! 謝らないでくださいジェシカ様! ジェシカ様は何も悪くありません! ジェシカ様のそのお優しいお気持ちだけありがたく頂きます!」
「そ、そう……?」
「はい!」
咄嗟の事だったとは言え、かなり語気が強くなってしまいました。ジェシカ様が若干びっくりしています。
「ーーーーあ、それとさローレライ」
「はい、何でしょう。ジェシカ様」
「うん。そのジェシカ様ってやめない? 私達って同じ年なんだし普通にジェシカって呼んーーーー」
「ダメです! 絶対にダメです! どう考えたってダメです! ジェシカ様は高貴なお方で、同じ貴族とはいえ私は男爵家の娘で、身分が大違いで、本来ならこんな素敵なお茶会に参加しているのもおこがましいくらいで、男爵家の中でも特に力も何もなくて、財力を少し得ただけの平民の方々と同じで、見た目も全然……比べる事自体が不遜なくらいです。そんな私とジェシカ様が、無礼にも、程遠く、そんな事は決して誰も許してくれなくて、お父様にだってすごく叱られて、ジェシカ様がお喋りになっている途中に口を挟むようなとんでもない無礼者で、それに、それにーーーー」
「ちょっ! ちょっと、ちょっと! 落ち着いて、ローレライ! どうしたの? 後半の方なんて、何言ってるのか全く分かんないよ……」
ジェシカ様は私の両腕を掴んで呆れたような苦笑いを浮かべています。
テーブルの向こうではベアトリック様達も呆気にとられたような表情でこちらの様子を見ています。
「ごっ、ごめんなさい……」
「もう……。別にあんなに興奮する事ないでしょう? たかが呼び捨てにするくらいなんだから」
私は今すぐ反論したくなる気持ちをグッと堪えて、首を力強く横に振って意思を示します。
ジェシカ様を呼び捨てにするなんて絶対に無理です。してはいけないんです。それだけは。
「えー……。なんでよーいいじゃない、同じ年なんだしー。ねーえー、ローレライー」
「ジェ、ジェシカ様、さすがにそれは……」
「こういう時だけよ? さすがに公の場で呼び捨てにしちゃったらローレライが非難されちゃうだろうけど、こういった仲良しだけが集まった秘密のお茶会だけだったら問題ないんじゃない?」
「しかし……」
「よしっ、じゃあ決定! さっそく呼んでみて、ローレライ」
ジェシカ様は得意げに腕組みしながらそう言うと、私に催促します。困り果てた私は覚悟を決めてジェシカ様を呼ぼうとしますが、呼ぼうとすればするほどうつむいてしまいます。
なのできっと、ベアトリック様達からは私がものすごくジェシカ様から叱られているように見えているのかも知れません。
「ジェ……ジェシ……ジェシカ……様」
「様は要らない。禁止なの!」
「ジェシカ……陛下」
「いつから私は女王様になったのよ……」
「ジェシカ……殿下」
「だから私は王族じゃないってば!」
「アヴァドニア公爵令嬢……ジェシカ」
「んー、なんか違う。そういうんじゃない」
「レディージェシカ」
「うーん……もうちょっと! 頑張って!」
ジェシカ様は可憐なその両手をグッと握りしめて応援してくれました。
ベアトリック様達も嬉々としてこちらの様子を伺っています。
身体が熱いです。変な汗が出ます。心臓が爆発してしまいそうです。そして、
「ジェシ……カ嬢」
「え?」
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「ジェシカ嬢、これ以上は本当に無理です。許してください……」
「そっかー。うーん……まあ仕方ないか。無理に呼ばせるのも可哀想だもんね」
「ごめんなさい……」
「まあ、いいわ。でも、慣れてきたらジェシカって呼んでね?」
「は……はい……努力します……」
「じゃあ、ローレライ。私の事、ベアトリックって呼んでね」
「ーーーー無理ですっ!」
その後、しばらくみなさんから同じ内容の事を催促され、たじたじするしか無かった私でした。
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