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2章 お茶会
19 浮気は男の代名詞?
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「浮気とか?」
アレンビー様の放った一言が辺りに響き渡り、妙にしんとした空気になってしまいました。
浮気……。
浮ついた気持ち……。
浮かれた状態……。
それも当然、脳裏をよぎりましたがアシュトレイ様は本当に穏やかな人で私を常に気遣ってくださるお優しい方でした。結婚式を間近に控えお互いにそわそわして、それこそ浮かれていたのは事実です。ですが、浮気だなんてそんな事は……。
ベアトリック様は唇を真横にして口をつぐんでおり、アレンビー様の方へちらり視線を送ると、うぅーっと低い声で唸ってみせた。
それから少しして、重いため息と共にベアトリック様は口を開きました。
「浮気ねぇ……。アシュトレイ卿はそんなタイプの人間じゃないと思うんだけどなー」
「それについては私も同感です。ですが……」
ルークレツィア様は途中までそう言いかけると私の方をちらりと見て、ごめんなさいねローレライと言いました。そして、
「所詮ーーーー男は男ですわ」
ルークレツィア様は端的に、そして的確にそうおっしゃいました。
どんなに優れた男性だろうと結局は男なのだと。
様々な女性の元をふらりふらりと渡り歩く根無し草なのだと。
分かっています。理解しています。そう考えれば全て辻褄が合うんです。理解できないあの状況にも説明がつくんです。
でも、そう結論付けてしまったらアシュトレイ様にかけて頂いた数々のお言葉も、お手紙も全て偽りのものだったという事になってしまう。
そうなってしまうと私はもう、人を信じられなくなる。
あのアシュトレイ様の穏やかな笑顔が信じられなくなる。
私が中から崩れていってしまう。
だからーーーー真実は違うんです。
きっと私が気付いていないだけで、大変な失礼を働いてしまいお優しいアシュトレイ様は怒る事なく、ただ単純に私の事を嫌いになってしまわれただけ。
ただそれだけなんです。絶対。
「やっぱりアシュトレイ卿も紳士じゃなかったか……私の目に狂いはないと思ったんだけどねー」
「仕方ありません、ベアトリック嬢。やはり人間の本心を見抜くのは相当に困難なのです」
「はらわた引きずり出して見ないと分からないって言うくらいだし……こればっかりはどうしようもないわね。しっかし、あのアシュトレイ卿が浮気をねぇ……怖い怖い」
「うちのお父様は今でも複数の女性と関係を持っているようですし、それに関してお母様もさほど気にしてはいないようです」
「そうなの⁉︎ ルーク嬢のお母様すごいわね。達観してるというかなんというか。夫婦で上手くやっていくには見習うべきなのかも知れないわね」
「うちは少し特別なケースなのかも知れませんが……」
「アレンビー嬢。あなたのお父様はどうなの? あの寡黙なウェルズリー侯爵閣下も浮気なイメージがあまり無いと思うのだけれど……」
「そうねー。一見そう思いがちなんだけれど……」
「違うの⁉︎」
「ーーーーええ。数年前に少し……。その時、お母様はお父様の事をまるでゴミ屑でも見るような冷やかな目で見ていたわね。それがよほど辛かったんでしょうね……それからというもの、ずっとお父様は大人しくしているようだわ。身長もそうなんだけど、本当に情けないんだから。お父様がもっと身長が高ければ私もーーーー」
「なるほど、なるほど。そういう手もあるのか」
ベアトリック様は真剣にアレンビー様の話を聞いて、その内容を記憶として頭に深く刻み込んでいるようでした。
「やっぱり男ってーーーー」
「ええ。間違いないですわ。真の紳士なんているわけーーーー」
「でしょ⁉︎ 所詮は見せかけだけーーーー」
と、男女間の話に大盛り上がりの同年代御三方。
さすがは二つ年上のお姉様方ですね。恋愛話には一家言あるようでお喋りが止まりません。
対して、二つ年下の私とジェシカ様は完全に勢いに飲まれてしまいだんまり状態です。
クッキーを食べ終え、両手でカップを持ちながら上目遣いでお姉様方のお喋りの応酬に視線を泳がせているジェシカ様の姿は、同性の目から見てもとても可愛いらしく、愛らしく、羨ましい限りでした。
私もジェシカ様みたいに女の子らしく、可愛いくなりたいと切実に思ってしまいました。
アレンビー様の放った一言が辺りに響き渡り、妙にしんとした空気になってしまいました。
浮気……。
浮ついた気持ち……。
浮かれた状態……。
それも当然、脳裏をよぎりましたがアシュトレイ様は本当に穏やかな人で私を常に気遣ってくださるお優しい方でした。結婚式を間近に控えお互いにそわそわして、それこそ浮かれていたのは事実です。ですが、浮気だなんてそんな事は……。
ベアトリック様は唇を真横にして口をつぐんでおり、アレンビー様の方へちらり視線を送ると、うぅーっと低い声で唸ってみせた。
それから少しして、重いため息と共にベアトリック様は口を開きました。
「浮気ねぇ……。アシュトレイ卿はそんなタイプの人間じゃないと思うんだけどなー」
「それについては私も同感です。ですが……」
ルークレツィア様は途中までそう言いかけると私の方をちらりと見て、ごめんなさいねローレライと言いました。そして、
「所詮ーーーー男は男ですわ」
ルークレツィア様は端的に、そして的確にそうおっしゃいました。
どんなに優れた男性だろうと結局は男なのだと。
様々な女性の元をふらりふらりと渡り歩く根無し草なのだと。
分かっています。理解しています。そう考えれば全て辻褄が合うんです。理解できないあの状況にも説明がつくんです。
でも、そう結論付けてしまったらアシュトレイ様にかけて頂いた数々のお言葉も、お手紙も全て偽りのものだったという事になってしまう。
そうなってしまうと私はもう、人を信じられなくなる。
あのアシュトレイ様の穏やかな笑顔が信じられなくなる。
私が中から崩れていってしまう。
だからーーーー真実は違うんです。
きっと私が気付いていないだけで、大変な失礼を働いてしまいお優しいアシュトレイ様は怒る事なく、ただ単純に私の事を嫌いになってしまわれただけ。
ただそれだけなんです。絶対。
「やっぱりアシュトレイ卿も紳士じゃなかったか……私の目に狂いはないと思ったんだけどねー」
「仕方ありません、ベアトリック嬢。やはり人間の本心を見抜くのは相当に困難なのです」
「はらわた引きずり出して見ないと分からないって言うくらいだし……こればっかりはどうしようもないわね。しっかし、あのアシュトレイ卿が浮気をねぇ……怖い怖い」
「うちのお父様は今でも複数の女性と関係を持っているようですし、それに関してお母様もさほど気にしてはいないようです」
「そうなの⁉︎ ルーク嬢のお母様すごいわね。達観してるというかなんというか。夫婦で上手くやっていくには見習うべきなのかも知れないわね」
「うちは少し特別なケースなのかも知れませんが……」
「アレンビー嬢。あなたのお父様はどうなの? あの寡黙なウェルズリー侯爵閣下も浮気なイメージがあまり無いと思うのだけれど……」
「そうねー。一見そう思いがちなんだけれど……」
「違うの⁉︎」
「ーーーーええ。数年前に少し……。その時、お母様はお父様の事をまるでゴミ屑でも見るような冷やかな目で見ていたわね。それがよほど辛かったんでしょうね……それからというもの、ずっとお父様は大人しくしているようだわ。身長もそうなんだけど、本当に情けないんだから。お父様がもっと身長が高ければ私もーーーー」
「なるほど、なるほど。そういう手もあるのか」
ベアトリック様は真剣にアレンビー様の話を聞いて、その内容を記憶として頭に深く刻み込んでいるようでした。
「やっぱり男ってーーーー」
「ええ。間違いないですわ。真の紳士なんているわけーーーー」
「でしょ⁉︎ 所詮は見せかけだけーーーー」
と、男女間の話に大盛り上がりの同年代御三方。
さすがは二つ年上のお姉様方ですね。恋愛話には一家言あるようでお喋りが止まりません。
対して、二つ年下の私とジェシカ様は完全に勢いに飲まれてしまいだんまり状態です。
クッキーを食べ終え、両手でカップを持ちながら上目遣いでお姉様方のお喋りの応酬に視線を泳がせているジェシカ様の姿は、同性の目から見てもとても可愛いらしく、愛らしく、羨ましい限りでした。
私もジェシカ様みたいに女の子らしく、可愛いくなりたいと切実に思ってしまいました。
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