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2章 お茶会
12 吹き消す者
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大方の町づくりの手ほどきを終え漁に建築に商売に、その全てが軌道に乗った頃、若者は久しぶりとなる帰郷を果たし国王様に約半年間の活動を報告しました。
海賊との和解、生まれ変わった港町、すっかり治安の良くなった王国、貴重な魚の安定した供給ルート確保。
それら全ては国王様が切に願っていた事です。
そんなそれら全てが何の前触れもなく手に入ってしまった。王様は動揺し、歓喜し、感謝し、そしてある事を決意したのです。
自身を、そしてこの国に暮らす国民全てを困らせていた海賊達を一掃し、海賊達を困らせていた生活難を一掃し、僅かながらに起こり始めていた食糧難をも一掃した若者に称号を送る事に決めたのです。
「君。名前は何という?」
「イーンゴットです。シーサイド・イーンゴット」
「そうか。君の此度の目覚ましい活躍を讃え君に爵位を与えよう。ぜひ受け取ってくれたまえ」
「は、はいっ!」
「うむ。この土地に古くから伝わる言葉で、ニルヴァーナと言う言葉があるが知っているかね?」
「いえ……」
「そうかね。誰もが頭を悩ませていた様々な困難をまるで吹き消すように解決してみせた君のためにあるような言葉だ。私はそう思うよ。だからその言葉をそのまま君に送る。君にはニルヴァーナ公爵の称号を与える」
「こっ……公爵」
「うむ。かなり異例な事だが君の功績と今後を考えるとそれくらいでないとな」
「今後?」
「うむ。君が持つ類稀なる勇気と行動力、それに国を愛する心。それらは今後この国が発展していくにあたって、最も重要なものだ。そして君にならあの港町をもっともっと大きく発展させる事が出来る。国中に海の恵みを届ける事が出来る」
「はあ……」
「加えてあの港町はこのまま君が管理してくれ。彼等もその方が働きやすかろう」
「あの……思ってたんですが、彼等の罪は……」
「彼等が犯した罪は到底許されるものではない。だが、その罪を生み出したのは彼等を理解してやれなかった私自身の至らなさが原因。彼等の罪は私の罪だ。私も深く反省しなくてはいかんな」
「国王様…………」
「それでは君にはニルヴァーナ公爵として今後とも港町の発展、管理に尽力して欲しい。よろしく頼むよ、ニルヴァーナ公爵閣下」
「は、はいっ!」
こうして、勇気ある若者のおかげで荒れた土地は生まれ変わり、発展に発展を重ね他国にも類を見ない立派な港町が完成し若者はみんなに親しまれる偉い公爵様となって幸せに暮らしましたとさ。
勇気と知恵を兼ね備えた青年。ニルヴァーナ公爵物語。
私が大好きな物語の一つです。
この土地の海の香りを感じながら思い出すと、なんだか感慨深いものがあります。
物語に一区切りついたところで、馬車の速度が明確に落ちはじめ、窓の外に視線を送ると見事な薔薇園が私を迎えてくれました。
目が覚めるほど鮮やかな紅に身を染めた華々しい薔薇の花が庭園の至る所でまるで気高い貴婦人のように美しく咲き誇っています。
庭園の外からこうして眺めるだけでこんなにも素晴らしい眺めなら、庭園の中から見たらきっと感激してしまうんでしょうね。どこを見ても見渡す限り薔薇の花。まるで不思議の国にでも来たような気持ちになるんでしょうか?
それに、辺り一面薔薇の香りに包まれて過ごすティータイムなんて、ものすごい贅沢です。
この薔薇の庭園は赤い薔薇が大好きだったニルヴァーナ公爵夫人の為に造られた庭園で、絵本のモデルになった初代ニルヴァーナ公爵様が愛する妻のために作ったと言われています。なので、ニルヴァーナ公爵家では代々この薔薇の庭園を大切に受け継いで維持管理しているのです。
それにプロポーズの際、必ず男性が女性に赤い薔薇の花束を送るのは、生涯妻を一途に愛し続けた初代ニルヴァーナ公爵様にあやかっての事だと聞いた事もあります。
一途に、一生愛し続ける。
一生一緒にいられるようにと願いがこもった花束。
不変の愛の誓い。
それが、あの花束の意味なのです。
海賊との和解、生まれ変わった港町、すっかり治安の良くなった王国、貴重な魚の安定した供給ルート確保。
それら全ては国王様が切に願っていた事です。
そんなそれら全てが何の前触れもなく手に入ってしまった。王様は動揺し、歓喜し、感謝し、そしてある事を決意したのです。
自身を、そしてこの国に暮らす国民全てを困らせていた海賊達を一掃し、海賊達を困らせていた生活難を一掃し、僅かながらに起こり始めていた食糧難をも一掃した若者に称号を送る事に決めたのです。
「君。名前は何という?」
「イーンゴットです。シーサイド・イーンゴット」
「そうか。君の此度の目覚ましい活躍を讃え君に爵位を与えよう。ぜひ受け取ってくれたまえ」
「は、はいっ!」
「うむ。この土地に古くから伝わる言葉で、ニルヴァーナと言う言葉があるが知っているかね?」
「いえ……」
「そうかね。誰もが頭を悩ませていた様々な困難をまるで吹き消すように解決してみせた君のためにあるような言葉だ。私はそう思うよ。だからその言葉をそのまま君に送る。君にはニルヴァーナ公爵の称号を与える」
「こっ……公爵」
「うむ。かなり異例な事だが君の功績と今後を考えるとそれくらいでないとな」
「今後?」
「うむ。君が持つ類稀なる勇気と行動力、それに国を愛する心。それらは今後この国が発展していくにあたって、最も重要なものだ。そして君にならあの港町をもっともっと大きく発展させる事が出来る。国中に海の恵みを届ける事が出来る」
「はあ……」
「加えてあの港町はこのまま君が管理してくれ。彼等もその方が働きやすかろう」
「あの……思ってたんですが、彼等の罪は……」
「彼等が犯した罪は到底許されるものではない。だが、その罪を生み出したのは彼等を理解してやれなかった私自身の至らなさが原因。彼等の罪は私の罪だ。私も深く反省しなくてはいかんな」
「国王様…………」
「それでは君にはニルヴァーナ公爵として今後とも港町の発展、管理に尽力して欲しい。よろしく頼むよ、ニルヴァーナ公爵閣下」
「は、はいっ!」
こうして、勇気ある若者のおかげで荒れた土地は生まれ変わり、発展に発展を重ね他国にも類を見ない立派な港町が完成し若者はみんなに親しまれる偉い公爵様となって幸せに暮らしましたとさ。
勇気と知恵を兼ね備えた青年。ニルヴァーナ公爵物語。
私が大好きな物語の一つです。
この土地の海の香りを感じながら思い出すと、なんだか感慨深いものがあります。
物語に一区切りついたところで、馬車の速度が明確に落ちはじめ、窓の外に視線を送ると見事な薔薇園が私を迎えてくれました。
目が覚めるほど鮮やかな紅に身を染めた華々しい薔薇の花が庭園の至る所でまるで気高い貴婦人のように美しく咲き誇っています。
庭園の外からこうして眺めるだけでこんなにも素晴らしい眺めなら、庭園の中から見たらきっと感激してしまうんでしょうね。どこを見ても見渡す限り薔薇の花。まるで不思議の国にでも来たような気持ちになるんでしょうか?
それに、辺り一面薔薇の香りに包まれて過ごすティータイムなんて、ものすごい贅沢です。
この薔薇の庭園は赤い薔薇が大好きだったニルヴァーナ公爵夫人の為に造られた庭園で、絵本のモデルになった初代ニルヴァーナ公爵様が愛する妻のために作ったと言われています。なので、ニルヴァーナ公爵家では代々この薔薇の庭園を大切に受け継いで維持管理しているのです。
それにプロポーズの際、必ず男性が女性に赤い薔薇の花束を送るのは、生涯妻を一途に愛し続けた初代ニルヴァーナ公爵様にあやかっての事だと聞いた事もあります。
一途に、一生愛し続ける。
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