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2章 お茶会

6 アップルパイ

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 ベアトリック様に宛てた手紙をネイブルさんにお願いし届けていただきました。

 ベアトリック様が住んでいらっしゃるニルヴァーナ公爵家はここから馬車で一時間掛からないくらいの距離にあって決して遠出とは言えない距離なのですが、しかしそれでも私からの突然のお願いに対して嫌な顔をする事なくネイブルさんは快く引き受けてくださいました。

 ネイブルさんの馬車を見送った私は途中だったお勉強をすっぱりと取り止め、アップルパイ作りをする事にしました。

 そう、お父様が大好きなアップルパイ。

 昨日と違い、少し元気になった今のお父様が食べればきっといつものにこやかな優しいお父様に戻ってくれるはずです。

 お父様には早く元気になっていただきたいですし、それに今は私の胸の中に溢れているとっても嬉しい気持ちと幸せな気持ちをお父様に、いえ。みんなに分けてあげたいです。

 みんなが幸せになれるのなら、これほど素晴らしい事はありません。

 私は急ぎキッチンへと向かいコックのランドさん、メイド長のマイヤーさん、そしてアンナに協力してもらいたくさんのアップルパイを焼きました。

 香ばしい香りが辺りを漂いだした頃、出先から戻ったお父様がキッチンへと覗きにやってきて嬉しそうな笑みを浮かべ、アップルパイ完成を今か今かと待ち構えています。

 また、畑仕事を終えたドーラさんと旦那のゲイルさん、それに近くに住んでいる子供達が近くを通りかかったので声を掛けてお庭でみんなで食べる事にしました。

 テーブルを運び出し、椅子をセッティングして、紅茶にお菓子、それに焼きたてのアップルパイ。

 パーティーの準備が整ったところで、ネイブルさんも無事に到着しみんなでアップルパイを頬張ります。

 甘くてサクサクの食感が最高です。

 みんな笑顔で、とても楽しい時間を過ごせました。私の胸に溢れている幸せな気持ちを少しでもみんなに届けられたでしょうか? みんな幸せでしょうか? 

 きっとみんな幸せですね。とても素敵な笑顔の花が咲いていますから。

 みんなが幸せになった事で、私の胸は更に幸せな気持ちでいっぱいになりました。

 その後、近くを通りかかった領民の皆さんも自身の好物をあれこれ持ち込み、パーティーに参加してもらい結果、予想以上の大掛かりなパーティーとなってしまいました。

 カラカラカラカラーーーー。

 ふと、心地よい馬車の車輪の音に視線を向けると豪奢な装飾を施した馬車が屋敷の前を通り過ぎていきました。

 私は目を閉じてその心地のよい音に集中します。心が癒されるいい音色です。

 アップルパイを一口かじり、遠ざかる車輪の音色にいつまでもいつまでも耳を澄ませます。
 

 





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