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2章 城下町を散策
16 準備は万端
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だっはははは! おじさんは豪快に笑う。
「格好良い……」
俺はと言えば、ダガーの格好良さに見惚れてしまい扱いやすさ、攻撃力、耐久性などの重要な要素よりも見た目ばかりを重視して決めようとしていた。
「おじさん! これ。これがいいです」
結局、俺は最初におじさんに見せられたダガーを二本買うことにした。
「後は……」
「ほれっ! 防具もよぉ、走り回れるように、ここら辺の軽装備から選びなっ!」
おじさんに言われるがまま、軽装備コーナーに行き数々の防具を眺める。
「あんちゃんだと……皮か、軽くて硬いミスリルだろうなぁ……だが、ミスリルは頑丈だがその分値段も高けぇからな、やっぱここは皮ーーーー」
「ミスリルでお願いしますっ! 是非ともミスリルで!」
おじさんは予想だにしなかった俺の要望にポカンと口を開けてじっと俺を見つめる。
「いや……そりゃミスリル製の防具を買ってくれた方が俺っちとしても嬉しい限りなんだが……本当に結構、値が張るぜ⁈ 胸当てだけで60万Gもするし、それにダガー二本も一緒に買ってくれるんだろう? それだけでもう90万Gだぜ⁈」
おじさんは興奮気味に今現在の総額を言うが、俺はといえば特に気にする事もなく、
「あと、合わせるとしたら他の防具は何がおすすめですか? 素材はもちろんミスリルで」
「お、おぉ……だったら、後は膝当て、すね当て、肩当てが一般的だな。肩当てはこのマント付きの奴がいいんじゃないのか? 今のそのマント、かなりボロボロじゃねぇか。こっちのマント付きのやつにしときな」
おじさんはそういってガラスケースの上に他のおススメ防具をずらりと並べてくれた。
それらの武器防具を実際に装備してみて、店内の片隅に設置された姿見で自分の姿をまじまじと観察してみる。
「うおぉ……」
馬子にも衣装というべきか、軽装備を全身に身にまとった自分の姿は、自分で言うのもなんだけど結構さまになっていて、どこからどうみても冒険者そのものだった。ただ一点、惜しむらくは高校の制服の上から装備品を身につけているので奇抜というか、ある意味最先端のファッションのような仕上がりとなっていた。
「おぉ、わりとよく似合ってんじゃねえか! あんちゃん」
「ありがとうございます。でも本当に、なんだか自分じゃないみたいです」
「まぁ、やっぱり装備が整うと一気に決まって見えるわな。来た時は頼りない旅人って感じだったけど、今はもうすっかり一人前の冒険者だぜ⁈ だっはははははははははははははは!」
この日何度目かの大爆笑。
俺は姿見の前でくるりと一回転して、
「うん。これに決めます。支払いお願いします」
その言葉におじさんは大爆笑をやめて、一転、真剣な表情にとって変わり。
「はははーーーーそうだ。その話しだ。あんちゃん、その装備品一式だと……」
おじさんは俺が装備している物を順に指差していって、こめかみ辺りをトントンと突きながら少しして、
「合計金額が170万Gになるんだが……完全に予算オーバーだろう? ミスリル製品は上級の冒険者達が使うような素材だからな。ここはやっぱりミスリル製品は諦めて全部皮製品にするか、ミスリル製品はどれか一つだけにするとかにしときな?」
おじさんに聞かされた170万Gというお値段に対し俺は、特に驚くわけでもなくどちらかといえば予算内でおさまって良かったとさえ思っていた。
「ご心配なく、予算ぎりぎりです。それに命を守る防具はやはり良い物を使いたいので」
そう言って俺は通学用のバッグから、大量の札束を出しておじさんに手渡した。
「おっおっおっ!」
おじさんは慌てながら大量の札束を受け取って少し放心した後、俺の顔を見てそして、
「あんちゃん……もしかして、実はすごい上級冒険者なのか?」
俺の眼に狂いがあったのか、と言いたげに小首を傾げておじさんは問う。
「いえいえ、おじさんが思っている以上の超初心者です。そのお金はたまたま発見したお宝を売って手に入れたものなんです」
「そ……そうなのか……まあ、そんな事もあるっちゃあ、ある事だわな。それが冒険者の醍醐味ってもんだ!」
「全くです!」
あっはははははははははははは!
だっはははははははははははは!
「はははーーーーあんちゃん気に入ったぜ! こうもド派手に買い物してくれる初心者は初めてだ! これは俺っちから、ささやかなプレゼントだ。受け取ってくれ」
そう言って、おじさんが手渡してくれたものは町の人達がよく着ていそうな服と白色の小袋が二つ、それと長い刀身の剣だった。
「これは?」
「おう。あんちゃんが今着てる黒いその服も悪かねえが、装備品ってのはだいたいがこの普段着、よく旅人の服とか呼ばれてる上下セットの服に合うようにデザインされてるからよぉ。そっちの方がいいんじゃねぇかと思ってよ。あとその袋もな。で、その長い刀身の剣なんだがダマスカス鋼で出来た剣で軽く、しなやかでいて、硬い。たぶん、あんちゃんでも振れると思うぜ? ダガーに飽きてきたら試しに使ってみるといいさ。色んな武器で戦えるようにしといた方が成長は早いだろうからな。それに、木の枝や石っころを使って戦う事もままある事だしな! だっはははははははははははははは!」
「わあ! ありがとうございます! 大切にします」
「おう。また気が向いたら寄ってくれや!」
おじさんからサプライズプレゼントを貰った後、支払いを済ませて店を出た。
大通りは相変わらず大勢の人で賑わっていて、全身に装備品を身にまといマントを風になびかせて俺はニヤニヤしながら大通りへと出た。
魔王討伐に向けた大冒険へのスタートラインは、もうすぐ目の前まで迫ってきていた。
そして、まさか魔王討伐が大失敗に終わるだなんて事は、この時点では誰も知りはしなかった。
2章終わり
「格好良い……」
俺はと言えば、ダガーの格好良さに見惚れてしまい扱いやすさ、攻撃力、耐久性などの重要な要素よりも見た目ばかりを重視して決めようとしていた。
「おじさん! これ。これがいいです」
結局、俺は最初におじさんに見せられたダガーを二本買うことにした。
「後は……」
「ほれっ! 防具もよぉ、走り回れるように、ここら辺の軽装備から選びなっ!」
おじさんに言われるがまま、軽装備コーナーに行き数々の防具を眺める。
「あんちゃんだと……皮か、軽くて硬いミスリルだろうなぁ……だが、ミスリルは頑丈だがその分値段も高けぇからな、やっぱここは皮ーーーー」
「ミスリルでお願いしますっ! 是非ともミスリルで!」
おじさんは予想だにしなかった俺の要望にポカンと口を開けてじっと俺を見つめる。
「いや……そりゃミスリル製の防具を買ってくれた方が俺っちとしても嬉しい限りなんだが……本当に結構、値が張るぜ⁈ 胸当てだけで60万Gもするし、それにダガー二本も一緒に買ってくれるんだろう? それだけでもう90万Gだぜ⁈」
おじさんは興奮気味に今現在の総額を言うが、俺はといえば特に気にする事もなく、
「あと、合わせるとしたら他の防具は何がおすすめですか? 素材はもちろんミスリルで」
「お、おぉ……だったら、後は膝当て、すね当て、肩当てが一般的だな。肩当てはこのマント付きの奴がいいんじゃないのか? 今のそのマント、かなりボロボロじゃねぇか。こっちのマント付きのやつにしときな」
おじさんはそういってガラスケースの上に他のおススメ防具をずらりと並べてくれた。
それらの武器防具を実際に装備してみて、店内の片隅に設置された姿見で自分の姿をまじまじと観察してみる。
「うおぉ……」
馬子にも衣装というべきか、軽装備を全身に身にまとった自分の姿は、自分で言うのもなんだけど結構さまになっていて、どこからどうみても冒険者そのものだった。ただ一点、惜しむらくは高校の制服の上から装備品を身につけているので奇抜というか、ある意味最先端のファッションのような仕上がりとなっていた。
「おぉ、わりとよく似合ってんじゃねえか! あんちゃん」
「ありがとうございます。でも本当に、なんだか自分じゃないみたいです」
「まぁ、やっぱり装備が整うと一気に決まって見えるわな。来た時は頼りない旅人って感じだったけど、今はもうすっかり一人前の冒険者だぜ⁈ だっはははははははははははははは!」
この日何度目かの大爆笑。
俺は姿見の前でくるりと一回転して、
「うん。これに決めます。支払いお願いします」
その言葉におじさんは大爆笑をやめて、一転、真剣な表情にとって変わり。
「はははーーーーそうだ。その話しだ。あんちゃん、その装備品一式だと……」
おじさんは俺が装備している物を順に指差していって、こめかみ辺りをトントンと突きながら少しして、
「合計金額が170万Gになるんだが……完全に予算オーバーだろう? ミスリル製品は上級の冒険者達が使うような素材だからな。ここはやっぱりミスリル製品は諦めて全部皮製品にするか、ミスリル製品はどれか一つだけにするとかにしときな?」
おじさんに聞かされた170万Gというお値段に対し俺は、特に驚くわけでもなくどちらかといえば予算内でおさまって良かったとさえ思っていた。
「ご心配なく、予算ぎりぎりです。それに命を守る防具はやはり良い物を使いたいので」
そう言って俺は通学用のバッグから、大量の札束を出しておじさんに手渡した。
「おっおっおっ!」
おじさんは慌てながら大量の札束を受け取って少し放心した後、俺の顔を見てそして、
「あんちゃん……もしかして、実はすごい上級冒険者なのか?」
俺の眼に狂いがあったのか、と言いたげに小首を傾げておじさんは問う。
「いえいえ、おじさんが思っている以上の超初心者です。そのお金はたまたま発見したお宝を売って手に入れたものなんです」
「そ……そうなのか……まあ、そんな事もあるっちゃあ、ある事だわな。それが冒険者の醍醐味ってもんだ!」
「全くです!」
あっはははははははははははは!
だっはははははははははははは!
「はははーーーーあんちゃん気に入ったぜ! こうもド派手に買い物してくれる初心者は初めてだ! これは俺っちから、ささやかなプレゼントだ。受け取ってくれ」
そう言って、おじさんが手渡してくれたものは町の人達がよく着ていそうな服と白色の小袋が二つ、それと長い刀身の剣だった。
「これは?」
「おう。あんちゃんが今着てる黒いその服も悪かねえが、装備品ってのはだいたいがこの普段着、よく旅人の服とか呼ばれてる上下セットの服に合うようにデザインされてるからよぉ。そっちの方がいいんじゃねぇかと思ってよ。あとその袋もな。で、その長い刀身の剣なんだがダマスカス鋼で出来た剣で軽く、しなやかでいて、硬い。たぶん、あんちゃんでも振れると思うぜ? ダガーに飽きてきたら試しに使ってみるといいさ。色んな武器で戦えるようにしといた方が成長は早いだろうからな。それに、木の枝や石っころを使って戦う事もままある事だしな! だっはははははははははははははは!」
「わあ! ありがとうございます! 大切にします」
「おう。また気が向いたら寄ってくれや!」
おじさんからサプライズプレゼントを貰った後、支払いを済ませて店を出た。
大通りは相変わらず大勢の人で賑わっていて、全身に装備品を身にまといマントを風になびかせて俺はニヤニヤしながら大通りへと出た。
魔王討伐に向けた大冒険へのスタートラインは、もうすぐ目の前まで迫ってきていた。
そして、まさか魔王討伐が大失敗に終わるだなんて事は、この時点では誰も知りはしなかった。
2章終わり
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