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2章 城下町を散策

11 あの店を探して

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「さて……」

  イリヤと別れた広場を後にして、俺は再び路地を行き大通りへと出た。

 ぐぅぅ……。

「ふぅ……」

 サンドイッチを半分貰ったが食欲旺盛な現役高校生であるところの俺の食欲は未だ食料を求めて唸りをあげる。

 感覚的に言って、バーガー3つと、Lサイズポテトと、Lサイズコーラと、チキン2つぐらいの量が食べたい。

 しかし、食べ物屋さんはあってもお金がないので、どうにも食事にはありつけそうになかった。

 だから途方にくれる。

 一刻も早く食料かまたはお金をなんとかしなければ、またもふりだしに戻ってしまう。

 イリヤみたいにいい人ばかりじゃないだろうし、他人に甘えてばかりもいられない。

 俺が今、持っている日本のお金を見てイリヤは最初お金だとは認識していなかった。

 むしろ美術品のようだと言っていたくらいだ。

 確かに、イリヤに渡した千円札は文字や絵だけでなく透かしなどのトリックが含まれているので、高度な技術を取り入れた芸術品に見えたとしても不思議ではない。

 日本の技術の最高峰とも言える逸品だ。

「珍しい美術品ねえ……」

 俺は天高く存在し皆に平等に光を届ける太陽に千円札を透かして、浮き上がった人物、つまり……あの……あれ、誰だっけこの人……。

「…………」

 とにかく。例のすごい偉い人を見てニヤリと笑う。

 良い考えを思いついた俺は大通りをキョロキョロしながら歩いてを探す。

 あると思うんだよなぁ、ああいう店は大体どこにでもあるから。

 そのまま大通りを少し歩いていると、想像通りの店が目の前に存在していた。

 店先に古めいた剣や、壺や、絵や、岩? や、もはや何なのかさえ解らない骨董品の山が所狭しと並べられている。

 俺はすぐさまその店に入っていく。

 店内は窓が無いのか薄暗く、入り口から差し込む光がどうにか店内をぼんやりと照らしている。

 薄暗い店内を足元に注意しながら進んでいく、途中上からぶら下げられたカエルのような干物に頭をぶつけ悲鳴をあげそうになった。悲鳴をなんとか堪えて姿勢を低く保って店内を見渡す。店内のいたるところに物が山のように積み重なっていて、埃っぽく、カビ臭い。

「ぶぇっくし!」

 ハウスダストアレルギーの俺にはとんでもなく劣悪な環境である。早く用を済ませて脱出しないと鼻水まみれになっちまうぜ。

 今すぐ帰りたい気持ちを押し殺し、ようやく店内最深部にたどり着いた。

 カウンターの奥には頭部が薄くて痩せ型のおじさんがいて、新聞のようなものを読みながら椅子に腰掛けている。

 おじさんは大きく広げられた新聞を豪快にめくる。

 店内のどこからか振り子時計のような低い音が鳴り響き、おじさんはハッとして新聞から顔をあげる。

「おお……なんだ、お客さんか
いらっしゃい」

 今気づいたとばかりにそう言って新聞をたたみ椅子の上で伸びをした。

「あの……」

「ああ、分かってる分かってる。あんたの姿を見りゃだいたい分かる。あんたトレジャーハンターだろ? 俺もこの商売始めて40年になるからな、人物の格好や醸し出す雰囲気から分かっちまうんだよ。で、今回はどんな代物なんだ? かなりヤバイ物でも高値で買い取ってやるぜ」

 おじさんはそう言ってタバコに火をつけ、煙を大きく吐き出した。

 俺って、トレジャーハンターに見えるんだ……。まあ、コーディネートのポイントは旅人だから当たってるっちゃあ、当たってるのか。

 でも俺は決してトレジャーハンターではなく、あくまで現役高校生なので、この道40年の眼力でどうにか見抜いて欲しかったな……。まあ、見抜かれても困るんだけど……。

 おじさんに若干の不信感を抱きつつも俺は答える。

「ええ、まあ。品物はヤバイ物かは分かりませんが、とにかく一度見て下さい」

 俺は、日本のお金をテーブルの上に綺麗に並べておじさんの反応を待った。

 おじさんは身を乗り出してそれらのお金をまじまじと覗き込む。






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