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ワンステップ
カップケーキ
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中庭へと案内された私は空を見上げた。空はどこまでも澄みきっており、薄雲がたなびいている。
花壇には彩り豊かな小さな花々が咲いており、数匹の蝶が優雅に辺りを舞っている。
オリバーが案内してくれた先、そこには白を基調とした可愛らしい印象のテーブルセットが置いてある。
私達はオリバーに勧められるままテーブルに着いた。
ちなみに席順は私の右隣にオリバー、オリバーの右隣に薄紫のドレスを着たガイアン嬢、その隣が暗めの赤色のドレスを着たオルテン嬢、その隣が薄い黄色のドレスを着たマシュー嬢である。
私達は小さめの丸テーブルを囲み初めて互いの顔を合わせたわけだが、少し緊張している私と違いオリバーや他の御令嬢達はやはりどうにも様子が変である。
オリバーは終始引き攣った笑顔を振り撒き、ガイアン嬢はそっぽを向き、オルテン嬢とマシュー嬢は先程よりも更に不機嫌そうである。
だから、なぜ私を睨むの。
私、何かした?
オルテン嬢とマシュー嬢の視線から逃れるようにテーブルへと視線を移す。
テーブルには薔薇の模様のケーキスタンドが置いてあって、各段ごとに小さな焼き菓子などが並んでいる。
私達の座るテーブルの傍らにはカートワゴンが置かれている。そのすぐ隣には懐中時計を見つめる女中が立っていて、カートワゴンに載せられた紅茶のポットからは芳醇な良い香りが立ち込めている。
懐中時計を見つめていた女中がエプロンのポケットに懐中時計をしまった。
女中は慣れた手つきでポットを手に取ると、それぞれのカップに紅茶を注いでいった。
やがて私達のテーブルへと紅茶を運び終えると、女中は少し離れた場所へと下がった。
「ーーーーさ、さあ! 紅茶も入ったことだし、さっそく飲もうよ! とても良い茶葉を使っているからきっと気にいると思うよ!」
オリバーはそう口にする。確かにオリバーの言うようにカップからはとても良い香りが立ち上っている。
「ではーーーー」
私はカップを手に取りひと口、紅茶を飲んだ。
途端に芳醇な香りが口内に満ち、鼻腔へと駆け抜けていった。
「うん。とても美味しい」
「良かった、気に入ってくれたようだね。アーリィ」
「ええ。皆さんも是非、本当に美味しいですよ」
私の勧めで御令嬢達もカップを手に取り口をつけた。
「…………」
けれど、とても美味しい紅茶のはずなのに御令嬢達の表情は優れない。
まだ機嫌が悪いのだろうか。
何がそれほどまでに気に入らないのだろう。
「ーーーーそうだ、オリバー様! これ、このお菓子を食べて下さーい! これ、私が作ったものなんですよー!」
そう言うと、私の左隣に座るマシュー嬢の表情がぱっと明るく咲いた。
マシュー嬢が小さなバスケットから取り出したものはカップケーキのようで、ほんのりと良い焼き目がついておりとても美味しそうだ。
「ではーーーー」
私はテーブルへと置かれたカップケーキを手に取るとひと口食べてみた。
「えっ……」
マシュー嬢の小さな呟きが耳に届いた。
花壇には彩り豊かな小さな花々が咲いており、数匹の蝶が優雅に辺りを舞っている。
オリバーが案内してくれた先、そこには白を基調とした可愛らしい印象のテーブルセットが置いてある。
私達はオリバーに勧められるままテーブルに着いた。
ちなみに席順は私の右隣にオリバー、オリバーの右隣に薄紫のドレスを着たガイアン嬢、その隣が暗めの赤色のドレスを着たオルテン嬢、その隣が薄い黄色のドレスを着たマシュー嬢である。
私達は小さめの丸テーブルを囲み初めて互いの顔を合わせたわけだが、少し緊張している私と違いオリバーや他の御令嬢達はやはりどうにも様子が変である。
オリバーは終始引き攣った笑顔を振り撒き、ガイアン嬢はそっぽを向き、オルテン嬢とマシュー嬢は先程よりも更に不機嫌そうである。
だから、なぜ私を睨むの。
私、何かした?
オルテン嬢とマシュー嬢の視線から逃れるようにテーブルへと視線を移す。
テーブルには薔薇の模様のケーキスタンドが置いてあって、各段ごとに小さな焼き菓子などが並んでいる。
私達の座るテーブルの傍らにはカートワゴンが置かれている。そのすぐ隣には懐中時計を見つめる女中が立っていて、カートワゴンに載せられた紅茶のポットからは芳醇な良い香りが立ち込めている。
懐中時計を見つめていた女中がエプロンのポケットに懐中時計をしまった。
女中は慣れた手つきでポットを手に取ると、それぞれのカップに紅茶を注いでいった。
やがて私達のテーブルへと紅茶を運び終えると、女中は少し離れた場所へと下がった。
「ーーーーさ、さあ! 紅茶も入ったことだし、さっそく飲もうよ! とても良い茶葉を使っているからきっと気にいると思うよ!」
オリバーはそう口にする。確かにオリバーの言うようにカップからはとても良い香りが立ち上っている。
「ではーーーー」
私はカップを手に取りひと口、紅茶を飲んだ。
途端に芳醇な香りが口内に満ち、鼻腔へと駆け抜けていった。
「うん。とても美味しい」
「良かった、気に入ってくれたようだね。アーリィ」
「ええ。皆さんも是非、本当に美味しいですよ」
私の勧めで御令嬢達もカップを手に取り口をつけた。
「…………」
けれど、とても美味しい紅茶のはずなのに御令嬢達の表情は優れない。
まだ機嫌が悪いのだろうか。
何がそれほどまでに気に入らないのだろう。
「ーーーーそうだ、オリバー様! これ、このお菓子を食べて下さーい! これ、私が作ったものなんですよー!」
そう言うと、私の左隣に座るマシュー嬢の表情がぱっと明るく咲いた。
マシュー嬢が小さなバスケットから取り出したものはカップケーキのようで、ほんのりと良い焼き目がついておりとても美味しそうだ。
「ではーーーー」
私はテーブルへと置かれたカップケーキを手に取るとひと口食べてみた。
「えっ……」
マシュー嬢の小さな呟きが耳に届いた。
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