6 / 21
2章 第二の試練 食事制限と無限地獄
3 ご褒美DAY
しおりを挟む
辛い、辛すぎる。
シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ……。
毎日毎日、シャキシャキシャキシャキ……サラダばかり食べるのが辛すぎる……。
ダイエット中にも関わらず満腹感を味わえるのはいいが、たまには違うもので満腹感を得たい。
パンだ! 肉だ! ずっと控えていたそれらで胃をいっぱいにしたい。
ずっとサラダばかり食べてきたんだ。たまにならそれらを食べても問題はなかろう……。
そう思い立った彼はキッチンへと向かい、料理長ランドの肩に手を置き耳元で欲望のまま自身の想いを口にする。
「ーーえっ⁉︎ 旦那様、よろしいので?」
「たまになら構わんだろう。食事にはバランスが必要だ」
「はい。かしこまりました」
用を済ませキッチンを後にするジェラールの足取りは妙に軽快なものであった。
その夜、
「うむ! 久しぶりのお肉はやはり味わいが違うな!」
今日ばかりはダイエットの事などかなぐり捨てて、お酒にお肉に舌鼓を打った。
ジェラールは幸せだった。
食事の本来の楽しみを噛み締めていた。
味に香りに酔いしれた。
我を忘れ、今という時間を堪能しきった。
翌朝、
「ーーーーっ⁉︎」
ジェラールは言葉を失った。
体重計の針が無情にもその現実を指し示していたからだ。
86kg……あれほど頑張って運動し、野菜ばかりを食べ続けやっとのことで減らした体重がたったの一晩でほぼほぼ戻ってしまったのだ。
何かの間違いだと思い、体重計と床を何度も行ったり来たりしながら自身の体重を測りなおしてみるが、残念ながら結果は変わらず針はその辛すぎる現実を指し示しているだけであった。
ジェラールの表情に後悔の色が濃く浮かぶ。
「ーーーーくっ!」
焦るジェラールはその場で腕立て伏せとスクワットを開始する。まるで何かに取り憑かれてしまったかのように、それはそれは熱心に……。
息がきれた辺りで一旦休息をとり、料理長ランドに再びダイエットメニューの調理を依頼。
大丈夫、大丈夫だ。また頑張ればすぐに痩せるさ。
ジェラールは自身にそう言い聞かせ、冷静になろうと努力した。
その後も熱心に筋力トレーニングに取り組み、夜は慣れ親しんだシャキシャキ食感を味わい続けた。
軽快な咀嚼音が響く中、娘、ローレライと目が合った。
何だかとても心配そうな目で見られている。そんな気がする。気のせいか? 意識を集中したいがシャキシャキのせいで上手く考えられない。大丈夫、大丈夫だ、娘よ。お父様は今日も元気だ。こんなにたくさんお野菜を食べているし、健康そのものだ。お前の結婚式には格好良い姿で参列してあげるから楽しみにしていなさい。
そんな想いが胸の中を駆け巡り、ジェラールの手はさらに加速し口の中に沢山の野菜達を運んでいく。
満腹になるその時まで……。
シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ……。
毎日毎日、シャキシャキシャキシャキ……サラダばかり食べるのが辛すぎる……。
ダイエット中にも関わらず満腹感を味わえるのはいいが、たまには違うもので満腹感を得たい。
パンだ! 肉だ! ずっと控えていたそれらで胃をいっぱいにしたい。
ずっとサラダばかり食べてきたんだ。たまにならそれらを食べても問題はなかろう……。
そう思い立った彼はキッチンへと向かい、料理長ランドの肩に手を置き耳元で欲望のまま自身の想いを口にする。
「ーーえっ⁉︎ 旦那様、よろしいので?」
「たまになら構わんだろう。食事にはバランスが必要だ」
「はい。かしこまりました」
用を済ませキッチンを後にするジェラールの足取りは妙に軽快なものであった。
その夜、
「うむ! 久しぶりのお肉はやはり味わいが違うな!」
今日ばかりはダイエットの事などかなぐり捨てて、お酒にお肉に舌鼓を打った。
ジェラールは幸せだった。
食事の本来の楽しみを噛み締めていた。
味に香りに酔いしれた。
我を忘れ、今という時間を堪能しきった。
翌朝、
「ーーーーっ⁉︎」
ジェラールは言葉を失った。
体重計の針が無情にもその現実を指し示していたからだ。
86kg……あれほど頑張って運動し、野菜ばかりを食べ続けやっとのことで減らした体重がたったの一晩でほぼほぼ戻ってしまったのだ。
何かの間違いだと思い、体重計と床を何度も行ったり来たりしながら自身の体重を測りなおしてみるが、残念ながら結果は変わらず針はその辛すぎる現実を指し示しているだけであった。
ジェラールの表情に後悔の色が濃く浮かぶ。
「ーーーーくっ!」
焦るジェラールはその場で腕立て伏せとスクワットを開始する。まるで何かに取り憑かれてしまったかのように、それはそれは熱心に……。
息がきれた辺りで一旦休息をとり、料理長ランドに再びダイエットメニューの調理を依頼。
大丈夫、大丈夫だ。また頑張ればすぐに痩せるさ。
ジェラールは自身にそう言い聞かせ、冷静になろうと努力した。
その後も熱心に筋力トレーニングに取り組み、夜は慣れ親しんだシャキシャキ食感を味わい続けた。
軽快な咀嚼音が響く中、娘、ローレライと目が合った。
何だかとても心配そうな目で見られている。そんな気がする。気のせいか? 意識を集中したいがシャキシャキのせいで上手く考えられない。大丈夫、大丈夫だ、娘よ。お父様は今日も元気だ。こんなにたくさんお野菜を食べているし、健康そのものだ。お前の結婚式には格好良い姿で参列してあげるから楽しみにしていなさい。
そんな想いが胸の中を駆け巡り、ジェラールの手はさらに加速し口の中に沢山の野菜達を運んでいく。
満腹になるその時まで……。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

そうだ、逃走しよう。
アリス・ホームズ
恋愛
公爵令嬢のアナスタシア・リーヴェルは、三段腹ならぬ六段腹。
しかし、麗しの王弟殿下の運命の番であることが発覚して、
王弟殿下にふさわしくなるため、隣国に留学(逃走)する!?
アナスタシアは、ダイエットなどの自分磨きをしつつ、
王弟殿下かから「運命の番」だとバレずに逃げきることができるのか!?
(小説家になろうさん・エブリスタさんにも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる