嫌われ者の君へ

コリン

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番外編〜春休み(3)

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本当に嫌になる。

私は小さく畳の上に体育座りしていた。

東崎から逃げるようにしてこの部屋に戻ってきたのはいいものの、夏子たちが気を使って、この部屋は私と東崎の二人部屋になっていた。

ここで泣いていようと、隠れていようと、確実に会わなければならないんだ。

どうしようか、
このまま逃げようか、開き直ろうか。

向き合うってことが怖かった。

この恋をしてから、新たに知ったことがたくさんあった。

それは嫌な感情。

嫉妬。

独占欲。

優越感。

劣等感。

今までの私になかったもの。

これはこれで、人間として成長したのかもしれない。

東崎と出会う前よりも、感情豊かで、
喜怒哀楽も出てくるようになった。

それは周りにとっていいことで
でも、私にとっては窮屈なことで。

この醜い感情に縛られることがすごく嫌だった。

会いたい、
とか

好き、
とか

あの子と仲良くしないで、
とか

そんなわがまま言えない。

言えなくて言えなくて
言いたくて言いたくて

ただただ壊れてきていた。

私が素直だったらーー。

結論はそれ。

私が素直に生きていければ、これだって解決する。

私ばっか東崎のこと好きみたいで、
でもそれを認めるのも嫌で。

だから、温泉に誘われた時
不安と同時に嬉しさもあった。

だから余計に、四人の方が楽しいでしょ?って言われた時、二人に会った時、悲しかったんだ。

私は二人だって楽しい。

ううん、

二人が良かったんだって。

なんで言えなかったんだろう。

気の使える彼女になんてなれない。

甘えれる可愛い彼女になんてなれない。

なにも言えなくて

何も、何も。

そんなことをぐるぐると考えていると、襖がすっと開いた音がした。

あぁ、東崎か。

東崎は

「彩月、俺、もう寝るね」

「…」

私は何も言えなくて、小さく頷いた。

後ろで小さく、ため息が聞こえた。

そしてゆっくりと、布の擦れる音がした。
それだけが、和室に静かに響いた。

「…嫌だ」

私は自分自身が聞こえないほどの小さな声で呟いて
そっと立ち上がった。

「…え!彩…」

バタン。

扉の閉じる音と東崎の声。
その二つが混じり合った。
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