奥様はとても献身的

埴輪

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≪現在③≫

7 後

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 どちらが先に挿入するか。


 また、さくらに背後から抱きしめられ、文香は二度果てたせいで力が入らない身体を素直に預けていた。
 ぼんやりと、二人の愛撫にイってしまった自分にショックを受け、そしてそれを引きずったまま。

「文香、大丈夫か……?」
「ふみちゃん? まだ寝るのは早いよ」

 さくらの手が文香の頭をぽんぽんし、優の手が恐る恐ると潤んだ文香の目元を撫でる。

「ん……」

 自然と、文香の口から吐息が漏れた。
 熱く色っぽい溜息に似た吐息だ。
 それは色にするのなら桃色だろう。
 無意識に醸し出す、気だるいような色気。
 普段の文香を知る男二人にとっては息を呑むほど艶やかである。
 子供のように、いやいやと力なく二人の男の手から逃げようとする文香はその扇情的に濡れた裸体には不釣り合いなほど無垢に見えた。
 
「……いやらしい」
 
 当の文香は逃げたしたいほどの羞恥に、今すぐ枕に顔を埋めたい気分でいっぱいだ。
 自分の前でなんて会話をするのだ、と。

「本当、君ってズルい」
「……」

 さくらがぎゅっと文香を抱きしめ、甘えるように首筋に舌を這わす。
 答えはしなかったが、優もまた同じ気持ちだ。
 けど、優の内心は複雑である。
 いやらしい文香はとても可愛くて、我慢しなければこのまま抱き潰してしまいそうなほどだ。
 だからこそ、悔しい。
 文香をここまでにしたさくらが。
 優の文香をこんな風にしたさくらが、とても、憎いと。

「……文香のここ、とろとろだ」

 けど、そんな自分の気持ちに優は蓋をする。
 もう決めたのだ。
 全てを終わらすと。

「当たり前だろう。ふみちゃんはすごく感じやすいんだ。僕が直々に仕込んだからね」
「……」

 例えどんなに嫉妬しても。
 文香が今にも泣き出しそうになっているのに、それを喜々として見つめる男、さくらには。
 
「どっちがいい? 特別に選ばせてやるよ」

 さくらには。

「どっちの穴も、君にとっては最期だからね」

 さくらには、
 
「どっちも、死ぬほど気持ちいいよ」

 全ては。
 文香のため。
 さくらの手の甲を抓りながら、それでも縋り付くようにその胸に顔を埋める文香のためだ。
 ギリギリまで、優のペニスが挿入するところを。
 優と繋がる瞬間から目を背けるように、さくらのキスを受け止める文香のためだ。

「文香……」

 それでも。
 
「悪い」

 優は初めに文香に言ったはずだ。
 これが、最期だと。

「お前の嫌がることが、したいんだ」

 だから、許してくれなくてもいい。
 ただ、身体に刻みつけてほしい。
 お前を愛した男の存在を。



* * * *


 ギシギシと、ベッドのスプリングが壊れたように軋む。
 肉と肉がぶつかり合い、粘液が泡立ち、掻き混ぜられる音が寝室に響く。
 カーテンは閉められ、僅かな灯りしかない寝室に。
 けど、文香と違いさくらと優の視界は昼間のように明るい。

「あんっ! あぁ……っ ん、んっ…… ふ、」 

 文香は今、優に正面から抱えられている。
 
「はぁ、文香っ」
「あんっ」

 ずぶずぶと、文香の中に優のもの入り込み、腰を掴まれたまま上下に揺さぶられる。 

「あっ! あん、んっ……!」

 ぐちゃぐちゃに、スキンも無しにそのまま挿入された優のペニスはとにかく硬くて熱くて、熱した鉄の棒を差し込まれているような錯覚に陥る。

ぐちっぐちゅっぎっ、

 文香の豊満な胸にしゃぶりつきながら、優は無我夢中で腰を揺らす。
 裸になった二人の汗が飛び散り、結合部は泡立ちながらくっついては離れる。

ぢゅぐっ

 文香の柔らかな尻と優の激しく動くペニスが、睾丸が当たり、たぷたぷと音を奏でた。

「ふみか、文香…… すごっ、中、どろ、どろ……っ」
「やぁ、い、わない、でっ あ、んっ!」
「っ……」

 振り落とされないように優の首にしがみ付く文香が子供のように泣きじゃくり、歪に歪む優の口を咎める。
 けど、それは優を興奮させるだけだ。
 我慢できず、文香の尻を高く掲げようとする優に、冷たい声が降りかかる。

「あんまり動かさないでよ」  

 全裸になったさくらは神々しいまでに美しく、禍々しいほど情欲に濡れた目で文香を見ていた。
 
「そのまま、動かすな」

 優が文香を抱きかかえたまま止まるのを確認したさくらは自身の唾液をたっぷり濡らした指を文香のアナルにあてがう。

「っぁ、」

 ぴくっと、文香の肩が跳ね、優に翻弄されていた意識が一気に背後のさくらに向く。

「さ、くら……?」
「大丈夫。ローションなくても、君のここはいつも通りに硬くてぶっといもので感じるから」

 ぐちぐちとさくらの指が優の唾液で湿り、柔らかくなったアナルに挿入される。

「あっ……!?」

 さくらに執拗なまでに調教されたアナルは簡単に、むしろ嬉しそうにさくらの指を銜え込み、ただの排泄器官とは思えない動きを見せた。
 
「すっかり、ここも慣れて来たね」
「っ、さ、くら……っ やぁ、そんな、に…… いじっちゃ、やぁっ……っ」

 優のペニスがはち切れそうなほど膨張し、文香の膣を圧迫している。
 そんな中でさくらの長い指が文香の尻穴を弄り、入り口付近の筋肉が無意識にさくらのそれを排除、または受け入れようとぎゅうっと指を締め付けた。

「っ、ふみか」

 そのせいで文香の膣の温もりを堪能していた優のペニスも締め付けられる。
 一番苦しいのは、文香だ。
 
「だめぇ、あっ、ぬ、ぬい、て……っ」

 下半身の穴という穴が塞がれ、未知なる官能を体感しているのだから。

「だめ。そろそろ僕だってふみちゃんが欲しいんだ」

 さくらはきっと分かっている。
 口でどんなに嫌だと訴えても、散々さくらに仕込まれた文香の身体がこの先の快楽を期待していることを。
 それは文香が一番よく分かっている。

「君らだけで愉しむなんて…… 僕が可哀相だろう?」

ずくっ、ずずっ

 さくらの指が増えていく。
 そのたびに優とさくらの唾液で濡れた文香のアナルは喜び、苦しませるのだ。

「ああ…… ふみちゃんの中に他の男のちんこがある」

 さくらの指が、ぬるぬると奥に入り込むと必然的に薄い肉壁一枚隔てた向こう側で射精を耐えるようとする健気な逸物の存在を感じる。

「あっ、ぅ」

 苦悶と快楽に呑まれた文香の表情はさくらの大好物だ。
 きっと、さくらだけではない。
 涎を垂らしそうな顔で、恍惚と見つめる男もまた。

「さく、らぁ…… もう、」
「もう?」

 優にとっては初めて見るであろう、文香のとろとろに蕩けた顔、声。

「い、いじわる、しな…… い、で」

 じんわりと、涙を浮かべ、子猫のように甘えた姿を見せる文香なんて。
 優は今まで知らなかった。
 優以外の男を求めて、懇願し、はしたなく淫らな嬌声をあげる文香なんて。
 
「本当、君って耐え性がなくて…… おまけに素直じゃない」
「あんっ、だ、って……」

 さくらの指が抜かれる。
 濡れた指を口に銜えたまま、さくらは優と同じぐらいに膨張し、昂ったペニスの先をぴくぴくと痙攣する文香のアナルに当てた。
 文香の中に埋まっている優のペニスがまた締め付けられる。
 優には分かった。
 文香の中に入っている優には、怯えたように泣く文香が、その実欲しがっていることを。
 優ではない男のペニスを求めていることを。
 
「さくらが…… さわる、から」

 羞恥も未知の快楽への恐怖も。

 その全てを上回るほどの欲望を、文香は優以外の男に抱いている。

「……本当、君って狡い。狡くて、欲張りで、」

 文香は優の首に腕を絡ませたまま、近づくさくらの顔にうっとりと目を閉じる。
 今の文香はいっぱいいっぱいで、きっと忘れている。
 例え、優の半身が文香の中にあっても。
 文香の意識はさくらにしか向けられていない。

「残酷だ」

 さくらが文香にキスする瞬間。
 その優しく慈しむようなさくらの言葉は優の耳にだけ届いた。

 赤い瞳が優を映す。
 さくらの瞳に映る優もまた赤い。

 赤く、嫉妬に歪んでいる。

 さくらのペニスが、文香のアナルを貫く。

 文香の膣に埋まっている優のペニスが悲鳴を上げた。
 あと少しでも意識を保っていなかったらそのまま中に出していただろう。

「っぁ、ふ、みか……っ!」

 それほどの衝撃と、痛いほどの締め付けに苦悶の声が漏れる。
 歯を食いしばり、優は文香の腰を抱きしめ、奪われないように必死だった。

「はぁん…… ふっ、ぁ、はっ、はぁん、」
「っ、ふみちゃん…… ゆっくり、息して」

 奪われたくない。

 恍惚に目を潤ませるいやらしい顔も。
 蕩けるような甘い声も。
 赤く染まった身体も、細い腰も、豊満な白い胸に硬く尖った乳首も。
 優とさくらのものを呑み込み、早く蹂躙しろと言わんばかりに強請る最高に卑しく愛しい性器も。

 全部、優のものだったのに。
 
 優の方がずっと先に文香に出会った。
 文香を知った。
 
 もしも優が自覚をしていたら。
 自身の正体を知っていたら。
 間違いを犯さなかったら。

 文香に悦びを教えたのは、色をつけたのはきっと、優だった。

 さくらこいつじゃない。

 
「文香……」

 優は狭い文香の膣の中にあるペニスをゆっくり動かす。

「ひっ…… っぁ、ぐ、」

 苦しそうな文香の呻きに優の心臓が罪悪感で歪んだが、それでも一度動いた腰は止まらない。
 
「あっ、ゆう……? だ、め、まだ…… あんっ ふぁ、そ、こ……っ」
「文香、ごめん、ごめんっ」
「あっ、ぁん、はぁんっ…… っあ、ぁ、な、か……っ こすれ、て……っ」

ずっ、じゅっ……

 感じる。
 文香の膣の蠢き、熱。
 そして、肉壁一枚向こうに、動くたび、突きあげるたびに感じる邪魔なも。

「気持ちいい……? 初めてだもんね、っ、二穴を、犯されるの……っ」
 
 まぁ、僕も初めてだけど、と軽口を叩くさくらのペニスもまた動き出す。
 気づけば交互に男二人のペニスは文香の中を蹂躙し、その肉の蠢きとしっとりと絡みつく襞の感触を堪能した。
 しかし、それは相手のペニスを嫌でも感じてしまうということだ。
 文香の中でさくらと優のものが肉壁一枚で遮られ、互いに突き合っている。
 皮肉なことに、その振動と他の男のペニスの熱がまた男二人の快感を高めた。

ずるっずくっ、じゅっ、ぢゅぢゅくっっ、ずッ

「あっ、あんっ、んっ、ぁ、ひぃ……っ」
「ねぇ…… ふみちゃん?」
「んっ、あっ、ふっ、い、いい……っ か、らぁ…… やらぁ、は、げし……っ!」

 涎を垂らしながら、文香は今まで聞いたこともないような理性のない嬌声を上げる。
 
「ふぁっ、あ、はんっ、ああんっっ、ッ」

ぢゅぢっぢゅぐ、ぐっぢゅぐちゅくっっ

 体格の良い男二人に挟まれ、挿された文香はもう何も考えられないようだ。
 そんな文香を必死に抱きしめ、一瞬たりともその表情を見逃したくないと射精を耐える優と、背後から文香の白い尻が自身のペニスの形で歪む様を嗜虐的な目で鑑賞するさくら。
 けど、どちらも余裕などない。
 汗と体液でびっしょり濡れた三人の身体。
 暗い寝室で、不自然なほど艶めいていた。

「あっ、ひぃッ、ふっ、ふぁ、んんっ」

 ギシギシと、ベッドはいつ壊れても可笑しくないぐらい二人の男の文香に対する欲情が赤く燃え滾る。

ずぷっずぷっっちゅくぢゅっっちゃくっずぶっっ

「はぁんっ、あんっああんっっ……ッッ」

 当の文香にとっては拷問に等しく、下半身はもうまったく力が入らない。
 揺さぶられ、人形のように両足が宙に舞う。

「文香、文香…… 俺っ、もう……ッ」
「あっ、ん、」
 
 切羽詰まった優の声。
 何よりも分かりやすい優のペニスが脈打つ感覚に文香の意識が一瞬遠のきそうになる。

「はぁ、ふみちゃん……」

 それはさくらも同じだ。

「ねぇ? いい? もう、中に……っ 君の、お尻に、出す、からっ」
「俺も、ふみかっ、ぁ、な、か……ッ で、るっ」

 文香以上に、もしかしたらこの男二人の方が余裕がないのかもしれない。

ずっ、ずっぷっずぷっぢゅぐっぢゅっぢゅぢゅッッッずッぢぐゅっっ!

「あっ、あんっ、ひゃあっ、ふっあ、ああんッ、んんッッ……んっ!」

 叫びに似た文香の嬌声が上がる。
 目の前の優に縋り付き、強すぎる快感に恐怖する本能で文香は優の背中を引っ掻き、その肩を噛んだ。
 それが優にとっての引き金となり、奥歯を食いしばり、今にも血管が切れそうな苦悶の表情を浮かべながら優は文香の中に射精する。 
 さくらもまた、優の射精と文香の膣の振動に引き摺られ、排泄器官であるそこに射精した。

 そして。
 ほぼ同時に果てた三人の荒い息遣いが静かになった寝室に落ちる。

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