奥様はとても献身的

埴輪

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≪現在②≫

17 布団の上でセックス 前

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 優は文香の言葉が最初上手く聞き取れなかった。

「え……?」

 戸惑い混乱する優の前で文香のシャツのボタンが外れていく。
 薄っすらと隙間から見えた肌着に、白い鎖骨に優は息を呑んだ。

「ごめんね。理由を言っても…… 私じゃ上手く説明できないの。だから、このまま、何も聞かずに、私を抱いて欲しい」

 文香の目が潤み、申し訳なさそうに優を見ている。
 その奥の強い決意に優は圧倒された。

「これで、もう最後だから」

 おずおずと文香の手が優に伸ばされる。
 布団に寝かせられ、優の上着は部屋の壁のハンガーにかけられていた。
 ここは、アパートの一室か。
 昔、文香と同棲していたときのアパートの間取りに少し似ている。
 寝室として使われているのか、部屋の片隅には大きなぬいぐるみや箪笥が置いてあった。
 懐かしい畳の匂いと嗅いだことがあるような甘い匂い。
 全てが非現実的で、夢を見ているのかと思った。

「文香……」

 夢のように、優だけを見つめる文香はとても一途で綺麗だった。
 誰も代わりなど出来ない、優だけの文香が、優を求めている。
 布団の上に押し倒された優に文香は大胆にも馬乗りになった。
 重くて軽い文香の体重が心地良い。
 パンツ越しの柔らかな太ももに無意識に手が添えられる。
 そんな優の手に文香の手が重なる。
 鼓動が熱くなり、下半身に熱が集中するのが分かった。
 それに文香も気づいたのか、恥じらうように身じろぎする。

 優に馬乗りになったまま、文香は後ろに結ばれた髪を解いた。
 視界いっぱいに広がる文香の艶やかな黒髪に、優はただ見惚れることしかできない。
 
「優…… いい?」

 小さく尋ねられた意味を優ははっきりと認識することはできなかったが、ただ今の文香に逆らうことなどできず無意識に頷いていた。
 文香の表情に安堵の色が浮かび、その手が優のシャツのボタンを外す。
 唾を呑み込み上下する喉仏を文香は食むように口づけた。

「ありがとう」

 心の底からの感謝を込めて、文香は優の耳たぶを愛撫する。
 その仕草はやはりぎこちなく、それでいて大胆だ。
 堪らず優は文香の後頭部を掴み、無理矢理その唇に噛みついた。

「んっ……!」

 文香の口ごと食らいつくすように、優は夢中で激しく暴力的なキスをする。
 少しすると文香の抵抗はやみ、積極的に優の舌に舌を絡ませた。
 それが嬉しくて、優はますます情熱的に文香の唇を貪る。

「ん、ゆぅ……」

 口を放すのが名残惜しかったが、文香の咎めるような抗議に優は大人しく引き下がるしかない。
 どこか落ち着きのない文香の視線に優はただ恥ずかしがっているのだと思った。
 もぞもぞと腰を動かす文香が可愛くて、とても危うい。

「っ、文香、そんな動かれると……」

 硬くなった下半身に文香も気づいているはずだ。
 布越しにそこを触られるだけで優は興奮した。

「お願い、我慢しないで……?」

 文香の手が優のベルトに伸びる。
 金属音が耳に入り、文香が優のベルトを外そうとしているのが分かった。
 ファスナーが窮屈そうに圧迫されている。
 なかなか下せずに何度か文香の手が滑った。

 夕陽射す畳の寝室で二人の荒く湿っぽい呼吸音が籠った。
 
 ボクサーパンツにテントが張ってあり、そこからじんわりと染みが広がっている。
 文香は額に薄っすらと汗をかきながら大胆に優のペニスを取り出す。
 硬く、膨れた逸物。
 この状況に困惑しながらも、優が興奮しているのが分かる。
 血管が今にもはち切れそうなほど。

「すごい、もう…… こんなになってる」

 陶然とした文香の言葉に優はぞくぞくした。
 自分の腰の上に座る文香を抱き寄せ、剥きだしたのペニスを擦りつけながら、飽きもせずにその唇を貪る。
 キスをするとき文香はどこか拒絶するように首を振るが、それでも最後は強引な優に身を任せてくれた。
 それが嬉しくて堪らない。
 文香の唾液を、甘い吐息を嚥下するたびに飢えていく自分がいる。

 もっと欲しい。
 もっと文香が欲しくて、文香の望みを叶えてやりたい。

 文香の望みはなんだろう。

「優の全部が欲しい」

 間近で揺れ動く文香の目は月を映す湖のように神聖だった。
 吸い込まれるように優は文香を強く抱きしめる。
 
 剥ぎ取られた二人のシャツが部屋の片隅に転がった。






 文香の股に頭を埋めながら優は無我夢中でしゃぶった。
 拒むように、あるいは求めるように髪に絡みつく文香の必死な手がより優を煽る。

 卑猥な水音が部屋に響く。
 白い布団の上で黒髪を散らす文香は全身を桃色に色づかせ、いつもよりずっと感じているようだ。
 それなのに、唇から血が出るほど嬌声を抑えようとする。
 そんな文香が不満で、優はその我慢を崩そうと更に下品な音をわざと立てた。

じゅ、じゅくじゅるる

「っ、っぁ、あ…… あんっ、」
「ん、ふみか…… 声、我慢しないでくれ」
「やぁ…… そ、そんな……っ」

 優の舌が文香の襞の皺を一つ一つ丹念に舐める。
 性急な動きではなく、ゆっくりと焦らすように。
 ぷっくりと熟れたクリトリスにわざと触れず、息を吹きかけては文香の反応を優は楽しんだ。
 優自身も余裕はなかったが、それでも文香に気持ち良くなって欲しくて、感じて欲しくて堪らなかった。
 文香が感じれば感じるほど、視界を覆う霞が増し、甘く脳みそが溶けそうな匂いが更に濃くなる。
 文香の陰部から溢れる洪水はまさに優にとっての甘露だった。

(文香、好きだ、誰も文香の代わりなんてできない……)

 そうだ。
 文香こそ優の唯一なのだ。
 代わりなんて誰も出来ないし、そんなものはいらない。

(ああ、そうか…… だから俺は……)

 あのとき、志穂に対する憎悪と怒り、殺意の正体が漸く分かった。

 ふざけるな、と思った。
 文香の代わりなんて、烏滸がましいと思ったのだ。

(……図々しい)

 優は志穂に対してどうしようもない気持ち悪さと嫌悪を抱いた。
 志穂が文香の代わりなんて、ありえない。
 誰であってもありえない。
 優がこんなにも愛しく、全てを捧げたいと思うのは文香だけなのに。

「あっ、やぁっ……!?」

 文香の悲鳴に似た嬌声がうっとりと思考に沈んだ優の意識を少しだけ浮上させた。
 
「やだ、おねがい…… そこだけは…… い、やぁ……」

 子供のようにいやいやと首を振る文香に自然と優の舌が更に奥に進む。

「ひぃっ」

 怯えたような声に、優は興奮した。
 優は文香の陰部だけでは飽き足らず、その臀部の奥。
 指で無理矢理皺が見えるぐらいに開いた文香のアナルに舌を突っ込んでいた。

「ここが、弱いのか?」

 優の好色じみた問いはひどく悪趣味なものだ。
 文香の答えを聞く前に優は初めて触れる文香のアナル周りの蕾のような皺に潤いを与える。
 唾液を擦りつけながら愛撫していく。
 ぴくぴくと身体を震わす文香に優の気がどんどん大きくなる。

「やだっ、ゆう、やめっ…… っぁ、き、たない、からぁ…… んっ!」

 汚いなんてまったく思わなかった。
 文香に汚いところなんて一つもない。
 本気でそう思った。

「なぁ、文香…… もっと、見せてくれ」

 もっと文香の全てを暴きたいと優は思った。
 その欲望のまま、舌を尖らせて文香のアナルにねじ込む。
 あっさりと抵抗なく舌が奥まで侵入する。
 まるで待っていたとばかりに、ぬるぬるとした優の舌を深いところまで誘うように肛門周りの筋肉がぴくぴく動き、腸壁が動いた気がする。
 誰よりも文香がそれに驚き、信じられないと目を見開いた。
 涙が零れ、未知への恐怖に、変わってしまった自分の身体に怯えているようにも見える。

 きつく唇を噛みながら、それでも文香は諦めたように優の愛撫を受け入れた。
 快感と気持ち悪さでおかしくなりながら、文香はもう喘ぐしかない。

「っぁ、うぅ…… んっ、んんっっ……!」

 ぴくぴくと動くアナルはまるで別の生き物だ。
 陰部とはまた違う控えめな反応に優は可愛いとばかりに小さくキスした。
 文香の顔をちらっと見れば今にも憤死しそうなほど真っ赤になっている。
 震えながら恨めしそうに優を睨んでいた。

「ばか…… もう、さいてぃ……」

 子供みたいに羞恥で泣き出しそうな文香に愛しさで胸焼けしそうだ。
 もっと文香の泣き顔が見たかった。
 ぽうっと文香の全身から色気が漂う。
 それが霧のように文香の姿を包み、曖昧にしている感じがした。
 とっても綺麗で、愛しくて、優の欲望を刺激する。

「文香……」

 優の目をまともに見れないのか、真っ赤になった顔を隠すように逸らされる。
 もしかしたら、唾液とその他の液で濡れた優の唇に居た堪れなくなったのかもしれない。
 それでも自分の方を向いて欲しい。
 今、ここにはいないのだから。
 恥ずかしがらずに全てを曝け出して欲しかった。 

「……ねぇ、もういいから」

 更に愛撫しようと再び下半身に顔を埋めようとする優を文香は制した。

「もう、十分だから…… お願い、もう、中に…… 挿れて……」
「文香……?」

 ぎゅっと、豊満な乳房を揺らしながら優の首に腕を回し、涙目で喘ぎながら文香は懇願する。
 その必死な様子に優は戸惑いながらも、今にもはち切れそうな下半身の熱に抗うことができなかった。
 文香はどこか焦っているようだ。
 まるで早く事を終わらせたがっているような、そんな性急さを感じて優の顔が曇る。
 それでも霧がかかったように文香の全てに夢中になっていた優は冷静ではなかった。

 冷静になれば、きっと優は青褪め震えていただろう。

 このときの優は服を脱ぐ前に文香が言っていた言葉の意味をまともに理解していなかった。
 これが最後だと。
 そういった文香の真意を優はまだ知らずにいた。
 知っていたらきっと、優は逆上していたはずだ。

「優、おねがい……」

 それでも、今の優には文香に抗うことは出来なかった。

 文香の手が優の手を自分の下半身に導く。
 優が舌で愛撫したそこは、唾液と粘液でぐしょぐしょに濡れていた。
 獣のように荒い息を吐き、先走った優のペニスが限界を訴える。
 
「はぁ……っ、はっ…… ふみ、か」

 顔を真っ赤にした優を文香は胸に抱き寄せた。
 優の手が文香の太ももを抱える。
 興奮で上手く先っぽが入らず、焦らすような形となった。
 熱い先っぽが敏感なところをなぞっては離れていく。
 そのじれったさに文香が早くと優に強請る。

「っぁ、でも……」

 もう限界だった。
 それでも最後に残った優の理性が、前回本能のままに生で文香の中を蹂躙したときのことを思い出す。
 あんな失態はもうしてはいけないと、最後の良心が訴えている。
 それは文香に少しでもいいところを見せたいという優の小さなプライドだった。

「いいの……」

 だが、それは脆くも崩れる。

「何も、つけなくていい……」

 甘く脳髄を溶かす匂いが優の全神経を、全てを狂わす。

「中に、出して」

 文香のそれはまさに毒だった。

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