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火傷
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しおりを挟むメリッサは今までになく興奮し、熱に浮かされたように何も考えられなかった。
カイルに抱きつくように絶頂したことに嫌悪はなく、むしろこのままカイルに抱かれたいと不謹慎にも願った。
「……せっかくだ。そいつのを慰めてやったらどうだ?」
そんなメリッサの心情を悟ったかのようにディエゴが嗤う。
その声にどうしようもない嫉妬が溢れ、今にも爆発しそうな殺意に満ちていることに、何故かこの時のメリッサは気づけなかった。
メリッサは初めてカイルを目にした時のような不思議な恍惚感と、決して彼を逃してはいけないという神の啓示を再び受けたような気がした。
理性はなく、今のメリッサはカイルの熱で本能に忠実だった。
カイルが必死に拒もうとするのも、ディエゴが嫉妬による狂気で今にも爆発しそうな様子も、メリッサには見えなかった。
ただ、本能のままカイルの精液が欲しかった。
顔に、口に、そして子宮にたっぷり注いでほしかった。
それが自分の使命だと、この時メリッサは思ったのだ。
メリッサはディエゴもカイルも見たことのない艶やかな笑みを浮かべ、頬を染めながらカイルのズボンを下げた。
硬直し、動けないカイルを無視し、ずっと風呂に入れられなかった身体から立ち込める悪臭にも構わず、メリッサは下着の中で大量に射精した黄色味が混じるどろっとした白濁に塗れた陰茎をうっとりと見つめ、なんの躊躇いもなく陰毛に顔を埋めるようにして下から丁寧にその白濁を舐めとった。
尿などそのまま放置され、蒸れて酷い悪臭がするそれをメリッサは愛し気に口に銜え、愛撫するように舐めて吸い付く。
一滴もカイルの精液を残さないように、皮や笠の部分に堪った汚れごと舌で丹念に舐めとる。
信じられないと、顔を真っ赤にしてメリッサが自分に跪いて奉仕する様をカイルは凝視し、自身の陰茎をしまったディエゴもまた、メリッサのありえない淫らな様子に目を見開いた。
呆然と二人のよく似た男に見つめられながら、メリッサはどんどん大きくなるカイルのそれが愛しくて堪らず、頬を擦りつけてカイルを上目遣いで見やる。
猿轡がカイルの唾液で濡れ、鼻息荒く瞳孔の開いたカイルに見下されたまま、メリッサは妖艶に微笑んだ。
そして舌なめずりをし、これ見ようがしにディエゴに注がれた精液を膣から掻き出す。
甘く切ない鳴き声を上げ、カイルを見つめながら大量の透明なディエゴの精を掻き出す。
もうすぐ、この中にカイルのものが挿入され、そして漸く待ち望んだ男の精液を注がれるのだ。
理性もなく、カイルの肉棒だけを求めるメリッサは恍惚とした表情で甘く囁いた。
「あぁん、カイル…… 早く、貴方が欲しい」
限界だったカイルの理性が切れるよりも早く、ディエゴはついに耐えられず衝動のままメリッサを引き倒した。
そしてカイルの陰茎を銜えたその口の中に勢いよく指を突っ込み、髪を掴んで乱暴に揺する。
突然の行為に動揺する暇もなく、メリッサは喉の奥深くに入れられたディエゴの指でそのまま嘔吐した。
胃液が込み上げて苦しむメリッサに構わず、ディエゴは更にメリッサの頭を揺らし、呑み込んだカイルの精液や体液を全て吐き出させようとした。
苦しむメリッサにディエゴは罵倒をひたすら浴びせ、もう吐き出すものがなくその場に力なく倒れるメリッサを漸く離すと、息を整えながらその弱弱しい姿を冷酷に見下ろす。
ディエゴはもう理解した。
十分すぎるほど。
メリッサはディエゴを少しも愛しておらず、今までの行為も全てはカイルのためのものだったのだと。
そんなことは初めから分かり切っていたはずなのに、心のどこかで期待していた自分がいたことに自嘲する。
もしもメリッサがディエゴに償い、再び側にいることを誓うのなら、ディエゴはそれを受け入れるつもりだったことを認めるしかない。
メリッサを傷つけ、穢して、誰からも見放されたメリッサを、ディエゴは再び愛し受け入れ、そして少しずつ関係を再構築していくつもりだったのだ。
王妃の懐妊がなければ、ディエゴは既にメリッサにその胸の内を伝えていただろう。
メリッサがもうディエゴを裏切らず、一生を捧げるのなら、許し、元の仲睦まじかった頃に戻ろうと。
だが、メリッサには初めからその気などなかったのだ。
「……何故だ。何故、お前は俺を愛さない」
苦しそうに横たわるメリッサは夢から覚めたように顔を青褪め震えていた。
メリッサが一番、先ほどの理性を失った自分の行動が信じられず、理解できなかった。
カイルを愛している気持ちは変わらないが、あんなふしだらな行為をよりによってディエゴの前で喜々としてやっていた自分に愕然とした。
「お前も、父上もっ! 何故こいつを、この男だけを愛するんだっ!」
悲痛なディエゴの叫びと絶望に満ちた狂気の視線がカイルに向けられる。
ディエゴはカイルの猿轡を乱暴に外し、身動きのとれないカイルを睨みつけ、自身が焼印を入れた右頬を引っかく。
できればその汚らわしい欲望の証をひねり潰したかった。
カイルはディエゴに反抗することなく、倒れたメリッサを見つめ、そしてまたディエゴに視線を移す。
怒りと哀れみの籠ったその視線に、ディエゴはもう我慢ができなかった。
醜いと称していもいい家畜の焼印を刻まれたカイルをメリッサは拒絶するどころか今もひどく愛している。
信じたくない事実にディエゴはもう爆発寸前だった。
「俺と、お前に一体何の違いがあるというのだ……?」
ディエゴの絶望し切った表情は眼帯をしていてもはっきりとカイルに伝わった。
カイルはメリッサを傷つけ辱めたディエゴを憎みながらも、どうしても彼を憐れまずには居られなかった。
「俺は、王太子として生まれた時からずっと国に尽くし、父上の良き後継者になるためだけに鍛え、戦場を駆け、幾度もの死線を超えて勝利を捧げて来た…… それが当然だと言う周りに見くびられないよう、ひたすら立派な王太子として、自分を殺して生きて来た」
「……」
「……唯一、俺を癒し、王太子でもない俺本人を愛したのはメリッサだけだった。メリッサの存在だけが血塗られた俺の日々に色を与え、温もりであり希望だった。メリッサと婚約してから日々はより輝き、俺は父上の役に立つために努力し、いつか報われることを信じた。幸せだった。 ……父上が俺を暗殺しようとした、あの日まではッ!」
「…………っ」
ディエゴの独自を、メリッサもカイルも苦悶に満ちた表情で黙って聞いた。
メリッサはディエゴの後ろ姿を見ながら、その悲しみに暮れる様子にどうしようもない罪悪感で胸を掻きむしりたくて仕方がなかった。
後悔しているのだ。
何故、あの時ディエゴを拒絶したのか。
そして誰よりも自分を愛したディエゴの前でどうしてカイルを求めてしまったのか。
恥知らずな自分に気が狂いそうだった。
カイルもまた、間近で見るディエゴの怒りと憎しみと嫉妬と悲哀に満ちた表情に途方もない罪悪感を抱いていた。
カイルさえいなければ、この男は苦しまず、メリッサと結ばれ、立派な国王としてこの国を繁栄させたはずだ。
全ての歪みは自分の存在だと、カイルは絶望した。
「……俺の欲したもの、俺が人生をかけて守って愛したもの全てを、お前は持っている。実の父親の愛も、俺の愛した女の愛も……! 何故、たかが父上の愛人の子であるお前にッ! 全てを奪われなければならないんだッ!!」
ディエゴの衝突に、カイルは項垂れるしかなかった。
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