毒殺された男

埴輪

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調教

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 地下室の神殿にずっといるせいか、メリッサは正確な日中の時刻が分からなかった。
 見知らぬ使用人達はメリッサに声をかけることもなければ質問に答えることもない。
 メリッサもまた、人形のように無表情に、そして丁寧な仕事ぶりとは裏腹に時折メリッサを蔑むように見ている彼女達の存在を無視していた。

 蔑まれるのはある意味では当然である。
 今のメリッサは王女でも、一人の女ですらない。

 ただ、反逆者であるディエゴに欲望のまま抱かれる娼婦のようなものだから。

 窓もない地下の神殿だ。
 ディエゴが頻繁にメリッサを抱きに来るせいで、余計にメリッサは正確な時刻が分からなくなる。
 ディエゴに初めて犯されたあの日からメリッサは地下の神殿に閉じ込められている。
 逃げる意思などないのに、わざわざ細い造りの金の鎖があの日以来メリッサの足首に嵌められていた。
 元々夫婦の初夜のための神殿には天蓋付きの大きな寝台があり、鎖はその柱に繋がっている。
 神殿内を自由に歩くだけの長さがあるため、華奢な作りながらもそれなりの重さがあった。
 娼婦というよりも、これではまるで奴隷のようだとメリッサは思った。
 首輪を嵌められないだけマシだとも思いながら、例えディエゴに首輪を嵌めるように言われてもメリッサは大人しくそれを受け入れるだろう。
 今のメリッサは家畜のようにディエゴに裸で飼われているのだから。






 地下は冷えるが、神殿内は常に暖房がつけられている。
 使用人の女達は常に無言だが、ディエゴが神殿に訪れる前には必ず香を焚き、寝台の横に様々な物を用意する。

 既に嗅ぎ慣れてしまった香の香り。
 香炉からゆっくりと煙が揺れて広がる様をメリッサは無感動に見つめる。
 そして、使用人達が両開きの扉を開け、恭しく跪いてディエゴを迎えるのを見て、メリッサは無言で身体を包ませていたシーツを寝台から落として出迎えた。
 口角を上げ、欲望にぎらついたディエゴの獣のような視線を受け止める。

 ディエゴの責めは気まぐれである。
 時折執拗にメリッサを愛撫して、快楽で蕩けて泣く姿をゆっくり味わいながら犯すこともあれば、愛撫など一切せずに乱暴に腰を叩きつけることもある。
 ただ、どんなときもディエゴは必ずメリッサに濃厚な口づけをする。
 そしてメリッサに同じように舌を出させ、絡む様に要求するのだ。 
 初めはそれを嫌がっていたメリッサだが、少しでも逆らう素振りを見せた途端、ディエゴはお仕置きと称して拷問にすら使われる媚薬をメリッサに含ませて、精神が崩壊するほどの快楽地獄に叩き落とす。
 身も世もなく喘ぎ、快楽に狂うメリッサは気づけば自分からディエゴの唇や舌を求め、腰を振っていた。
 一度、ディエゴは理性が戻ったメリッサに拘束されているカイルの話をわざと振ったことがある。
 屈辱よりも、言うことをきかなければカイルが責められるという暗黙の脅迫が怖ろしく、メリッサはその後どんなに恥ずかしいディエゴの欲望にも答えるようになった。
 ディエゴがわざとメリッサの舌の上に唾を落とし、それを嚥下するように言われたときも、吐きそうになるのを耐えて飲み下した。
 ディエゴの感じる部分も好きな角度もメリッサは覚えてしまった。
 初めてカイルが口づけてきたときの薄い唇とディエゴの唇はよく似ている。
 カイルの唇の熱や感触がディエゴに上書きされていくことがどうしようもなく哀しかった。

 もうどれくらい日が過ぎたのかも分からない中で、ディエゴはここ最近メリッサからの奉仕を求めるようになった。
 既に勃起した陰茎を取り出し、メリッサに口で奉仕させることを相当気に入っているらしい。
 人並み以上に豊満なメリッサの乳房に擦りつけることもあれば、両手に持たせ、その赤く色づいた唇や舌の動かし方を事細かく指導して愛撫させる。
 メリッサは逆らうことをせず、裸のまま四つ這いになり、寝台に腰かけるディエゴの脚の間で跪き、なんとか大きく口を開けてその巨大な陰茎を口に含んだり、筋を舐めたり、陰毛の一本一本舌で梳かしながら睾丸に吸い付く。
 苦い男根の透明な先走りやメリッサの唾液で濡れる厭らしいそれを両手で扱き、苦しそうに眉を顰めながら頬を薔薇色に染めて懸命に奉仕する。
 生まれてきたときからディエゴと同じ高貴な王族として傅けられ、我儘に傲慢に気まぐれに他者を翻弄していたメリッサの順従な姿を城の者が見ても到底信じられないだろう。
 自尊心が特別高いメリッサが誇りを捨てて憎いディエゴに裸で奉仕する様は信じられないぐらいに厭らしい。
 それを真上からディエゴは見下し、時折その髪を引っ張って乱暴に射精する寸前の陰茎をメリッサの口に抜き差しし、喉の奥に突っ込む。
 苦し気なメリッサに構わず、その喉の動きに刺激され、ディエゴはメリッサの口の中や、或いはわざと抜いてその可憐な顔面に精液をかける。
 そして、自身の精液で汚れた陰茎をメリッサに綺麗に舐めとらせるのだ。
 口に射精した時はメリッサは教えられた通りに吐き出さずに飲み込む。
 我慢できずに吐いた場合は、吐いて汚してしまった精液を全て犬のように舐めるよう調教した。
 顔面や身体にかけたときも、その場でディエゴが我慢できずにすぐに挿入しない場合は手で掬って口に含むことも教えた。
 羞恥と屈辱に耐えながらもそれらの要求に答えるメリッサをディエゴは毎回よく褒めた。

「やはりお前は呑み込みが早いな、メリッサ」
「……あ、ありがとうございます。お兄様」

 犬を躾けるような扱いに、メリッサは耐え続けた。

 そして、今日は機嫌がいいらしいディエゴの褒美を受けるため、メリッサは寝台に淡く色づいた身体を横たえた。
 ディエゴへの口淫でメリッサもまた興奮し、欲情していた。

 常に香を吸い、ディエゴに犯されて来たせいか、メリッサの身体はどんどん淫らになっていく。
 メリッサにもその自覚はあるらしく、焦らすと切なくも物欲しそうな視線をディエゴに向けることが多くなり、そしてその度に我に返って慌てて目を逸らそうとする。
 耳まで赤くして、何かを我慢するときにメリッサは唇を噛む癖があるのをディエゴは知っていた。
 羞恥と同時に快楽を感じる肉体に失望し、嫌悪するメリッサの潔癖さや無垢で幼い様をディエゴは堪らない愉悦と興奮で見ていた。
 メリッサの豊満な乳房の先についている淡い色の乳首は硬くなり、ディエゴの愛撫を心待ちにしているのに、それを否定しようとする。
 無言で近づいたディエゴにメリッサは無言で股を開いた。
 メリッサの濡れた繁みがつい先ほど精を放ったばかりのディエゴの陰茎を瞬時に硬くさせる。

「メリッサ、前に教えたことを覚えているか?」

 メリッサの赤く染まった目元をディエゴは親指で撫でた。
 革の手袋がメリッサの柔らかい肌を擽り、メリッサは堪らず熱い吐息を吐き出して自分を押し倒しているディエゴを見上げる。
 熱で潤んだ黒目が上目遣いになるときの可憐な表情はどこまでも清楚でありながら、淫らで色っぽい。
 ほんの少しの躊躇いの後、メリッサは羞恥に耐えながら唇を震わせる。

「……私は、お兄様のものです」
「……」

 なんて茶番だろうと嘲る心とは裏腹に、ディエゴの熱い手が添えられた箇所に熱がどんどん集中する。

「お兄様を裏切った最低の女であり…… もう私は王女ではなく、お兄様だけの奴隷です。一生をかけてお兄様に償い、ご奉仕します」

 ぎゅっと期待で膣が蠢くのが分かり、メリッサはディエゴから目を逸らした。
 興奮したディエゴは荒い息遣いでメリッサの次の言葉を待つ。

「……どうか、この厭らしいメリッサを存分に可愛がってください、」

 メリッサが最後まで言い切る前に、ディエゴはメリッサの望みを叶えた。

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