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復讐
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しおりを挟むディエゴによって腫れた頬に静かな涙が伝う。
声も上げずに泣くメリッサの髪をディエゴは酷く優しい手つきで撫でた。
穏やかで慈しみの籠ったディエゴの視線。
優しく、まるで幼い頃のようにメリッサのことが心底愛しいと表情で語りながら、ディエゴは残酷な言葉を紡ぐ。
「楽には殺さないと言っただろう?」
うっとりと吐き気がするほど甘い声で紡ぐ。
甘すぎて腐ったディエゴの欲望がメリッサに降りかかった。
「俺はお前を殺さない。だが、もしもお前が死を望むのなら、自害をしてもいい。止めたりはしない」
ディエゴの穏やかな表情。
そして楽しくて仕方がないような浮かれた声に、メリッサは黙って聞くしかなかった。
メリッサの中に納まったままのディエゴの陰茎がまた膨張するのをメリッサは耐えた。
ディエゴが何に興奮しているのか分からない。
「……だがな、メリッサ。お前は本当に理解しているのか?」
メリッサの胸にディエゴは鼻を埋め、その湿った肌や弾力、メリッサの甘い匂いを堪能する。
鼻先がメリッサの肌を滑り、その擽ったさに強張るメリッサをディエゴは笑った。
ミルクのような甘い匂いも、擽ったがりなところも幼い頃とまったく変わらない。
だが、確実にメリッサは変わった。
変わってしまったのだ。
「お前は死ねば楽になるだろう。だが、残されたあの男はどうなると思う?」
「……っ」
メリッサが息を呑む。
ディエゴはメリッサの左胸に眼帯で覆われた右頬をくっつける。
顔を見なくてもメリッサの動揺はその鼓動の動きで十分に分かった。
「俺は、カイルという、あの下賤な男を解放するつもりはない。自害もさせない」
メリッサの鼓動がどんどん早くなる。
カイルのことを思ってメリッサが動揺するたびにディエゴの心に残酷な気持ちが芽生える。
「……お前が死んだ後、俺はあの男の四肢を裂き、首輪で繋げ、髪を焦がし、皮膚を剥いでお前の墓前に捧げる。そして眼球を抉り、鼻を削いで、毎日一本ずつあれの歯を抜く。悲鳴がよく出るように舌は最後まで残してやろう。そして食事は残飯でもなく、家畜の糞尿にする」
「…………いや」
「爪も当然一枚ずつ剥ぐ。いや、爪は残して肉との間に釘を刺してみるのも面白い。日中の拷問が終われば女に飢えた罪人共の寝床に放り込む。あいつらは穴があれば見境もなく襲う。歯を抜いた口と尻穴があれば罪人共は死ぬほど喜ぶだろう」
「……お願い、もう、やめて」
ディエゴの残酷な言葉に、彼が何を言いたいのかメリッサはもう十分すぎるほど理解していた。
メリッサにとって非常に効果のある脅しだ。
怯えて身体を震わせるメリッサをディエゴは抱きしめる。
悪夢で魘されたメリッサを抱きしめて慰めたときのように髪を撫でてやる。
だが、メリッサの視線はディエゴには向かず、死んだようにして気絶し倒れた状態のカイルに向けられている。
面白くなかった。
まだ、メリッサに脅しが足りないようだ。
「……散々に尻穴を犯されると、尻の筋肉が弛緩したまま元に戻らなくなるそうだ。そうすれば意思に反してずっと糞が垂れ流しになる。役に立たなくなり、ただ臭いだけの尻穴を塞ぐには熱した鉄の棒をねじ込めばいい。そうすれば穴は塞がる。そして最後にもう必要のない男根を調理してやる。そこまですれば俺も少しは奴に飽きて、豚の餌にしてやることを許すかもしれない」
メリッサの視線はディエゴに向けられている。
恐怖に固まり、青褪めたメリッサに満足した。
幼い子に言い聞かせるように、ディエゴは続ける。
「どうすればいいのか…… 賢いお前なら分かるはずだ」
メリッサが一瞬の沈黙の後、覚悟を決めたように無言で頷いたのを確認したディエゴは、それを合図にして十分な硬さを取り戻した自身の陰茎を抜き、そしてまた一気にメリッサの奥に突き刺した。
甲高い悲鳴が上がり、メリッサは口を手で押さえようとする自分をなんとか抑えた。
ディエゴに反抗することの恐ろしさを、この時メリッサは漸く理解したのだ。
何度も何度も、メリッサは狂ったようにディエゴに犯され続けた。
意識を失いそうになるたびに、メリッサは今にも死んでしまいそうな傷だらけのカイルの姿を探し、涙でぐちゃぐちゃになった視界で、もう見れなくなるかもしれないその姿を記憶に刻みつけた。
そしてディエゴの望みのままに喘いで腰を振った。
肉体ではなく、ディエゴはメリッサの自尊心を、心を殺し続けた。
確かにそれはディエゴの復讐だった。
「お前を楽には殺さない、俺を裏切ったことを後悔させ、永遠にその罪を償わせてやる……」
何度目かの射精のとき、ディエゴは呻いた。
酷く、苦しそうだとメリッサは思った。
*
メリッサの腫れて変色した頬に涙が伝う。
その頬を撫でながら、ディエゴは間近でメリッサの哀れで惨めな姿を存分に堪能する。
気絶したのか、それとも疲れて眠っているのか。
静かな寝息を聞きながら、ディエゴは時間も忘れてその寝顔を見ていた。
ディエゴにはこれから山ほどの役割や仕事が残っている。
もう少しすれば、隣国の協力者と許嫁となった王女に報告の手紙も出さなければならない。
分かっていながら、ディエゴはまだ動けなかった。
目を離したその隙に、腕の中にいるメリッサが消えてしまうと思ったからだ。
美しいメリッサ。
ディエゴが不在の間に女として開花し、そしてその無防備な色香で男達を誘惑し、かつて自分が裏切った婚約者のことなど忘れて、さっさと他の結婚相手を見つけたメリッサ。
よりによってその相手があのカイルだと知ったとき、ディエゴがその二重の裏切りにどれだけ傷つき、心を病んだことか。
これも全て、国王の企みなのかもしれない。
愚かなメリッサは知らない。
自分のせいでディエゴがカイルを憎んでいるのだと思っているからだ。
確かにそれも理由の一つだが、あくまで一つにすぎない。
例えメリッサが愛したのがカイルでなかったとしても、ディエゴはカイルを憎み、ただでは死なせなかっただろう。
もっと苦しめて、生まれてきたことを後悔させなければディエゴの心は一生晴れない。
それを思うと国王の殺害は失敗だった。
もっと、ゆっくりと。
父である国王には死の間際まで苦しんで苦しんで、そして惨めに後悔させてから殺せばよかったと、ディエゴはそれだけを後悔していた。
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