毒殺された男

埴輪

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崩壊

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 怨念だったのかもしれない。
 戦で国を大きくしていったツケが回って来たのかもしれない。
 土地や財産、自尊心や自由、自分の命や愛する人を無念にも奪われた人々の恨みが、とうとう怖ろしい不幸を招いたのかもしれない。

 だが、いつの世も人を殺すのは人である。
 そして、不幸の連鎖を手に取るのもまた人である。

 国王の座を約束され、才能や家臣にも恵まれた王太子。
 その隣りに寄り添う愛おしい婚約者。
 ディエゴはそのとき、確かに全てを手に入れていた。
 この世のどんな宝石よりも希少で輝かしい、幸福という名の時を彼は手にしていたのだ。

 宝石のような幸せは硝子よりも容易く砕けてしまうことを、ディエゴはまだ知らなかった。
 そしてその幸せそのものが砂上の城であったことも。
 幸せの絶頂にいたディエゴはただただ前を、高みのみを見ていた。
 後ろを振り向くことも、そしてその足が踏みつける幾多の犠牲も、彼は見向きもしなかった。
 
 国が亡ぶ理由とは何か。
 弱いからこそ、侵略され亡ぼされるのか。
 それとも、栄光に胡坐をかき寝首を掻かれるのか。
 もしくは、内から崩壊されるのか。

 数多の国が滅び、生まれる。
 その全てが歴史に記されることはなく、そして真実はまた時の流れと共に薄れ、改竄される運命にあるのだ。
 
 歴史は飽きることなく繰り返され、そして人々の記憶は常に薄情である。

 名も忘れられ、そして滅びた真実すら残されていない。
 それは、どこにでもある一つの国の終わりであった。
 
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