毒殺された男

埴輪

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忘れられた話

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 今は名も忘れられた王国があった。
 猛き戦神の血筋をひくとされる王族に支配されたその国はあまり豊かではなかった。
 そのため、戦上手な歴代の国王達は度々他国と戦争をし、奪うことでその領土を広げていた。
 戦で負けた国の民を全て奴隷にし、その国の王族達を無慈悲に処刑してきた。
 多くの勝利と略奪、名もなき人々の犠牲によってその国は成り立っていた。
 血と涙と恨みで塗り固められた歴史を持つ国だ。
 それは数ある歴史の中で特別残虐でも珍しいわけでもない。
 よくあることであり、犠牲無き勝利はありえず、恨まれない勝利もない。
 誰かが富を得れば、誰かが奪われる。
 それが摂理であり、無情の運命なのだから。

 だが、国を興すのが人であれば亡ぼすのもまた人である。
 そして人であるからこそ、そこには情があるのだ。
 国を亡ぼすほどの情。

 歴史書にすら記されない、一つの国があった。
 その国が何故滅んだのか。
 真実を知る者はもうこの世にいない。

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