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29話【デートのお誘い】

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土曜日の朝、俺はまた先輩の胸の中で寝ていた。


(此処に来て、結局一週間経ったなぁ)


最初は先週の日曜日迄かと思っていたのに、先輩は咳が完全に出なくなる迄は一人で居させられないと言ってきて、これも多少の言い合いはあった。が、結局は俺が折れた。

先輩··········自分の大学で忙しい筈なのに律儀に毎日迎えに来てくれて、疲れてるのにその中でも俺の勉強を見てくれた。
あの時の二日の遅れを直ぐに取り戻せたのは素直に嬉しいけど、何故違う大学の先輩の方が理解していたかは流石αだな、と思う。
それと、礼儀作法とか食事のマナーも少し教わることが出来た。



まぁ、そんなこんなで甘過ぎる一週間を終えた俺は咳も出なくなりすっかり元気だ。
··········でも、それに比例して先輩からの甘い対応が増している。
昨日なんか額や頬、鼻にされていたキスが久しぶりに唇にされた·····しかも朝起きて直ぐに。

行く準備しないと、って俺は言うのに先輩は「大丈夫。もう少しだけ」と結局三十分位はキスをした。
おかげで俺のは大きくなるし、先輩のも大きくて固くなって··········それがお腹に当たるしでこっちはムラムラして大変だった。
あれはワザとやってるとしか思えない。


先輩の家に帰ってきたら帰ってきたで、
勉強やご飯を食べた後···············あの日以来二回目のセックスを先輩とした。
もぅ、訳が分からなくなる位挿れられて、
「~~~~っァア"♡·····ッ  やっ  ぁ···、ばかに·····なっ   から、、やぁ"あ" ァ っ ♡」って泣きながら必死に先輩に抱き着いた。
先輩も先輩で「いいよ···っ、馬鹿になっても」って言いながら激しく動くし、キスも沢山してきたし、、、、
消えかけた痕がまた新たに大量に上書きされてしまった。



このままじゃ·····
抜け出せなくなりそうで怖い。

先輩が俺の事を恋愛感情で好きなのかも·····って期待してしまうから。



「···································。」
先輩はまだ寝ている様で寝息が聞こえる。
寝てる顔も絵になるから凄い、、、

(こんなパーフェクトな人が仮だけど俺の番なんだなぁ)


「········ん、れい?」

眠そうに起きた先輩は悶々と考えている俺を抱き締めて声を掛けてくる。相変わらず先輩からは甘い香りがして···ずっと嗅いでいたくなるような気持ちになった。

(いや、、待って俺·····これじゃ犬だ)

「けーさん、おはようございます」
ずっと見てたのと匂いを嗅いでいたのがバレないか内心冷や冷やだ。
「ん、今何時?」
半分寝惚けた状態で先輩が尋ねてきたので、
「もう9時ですよ」と笑いながら言う。
どうやら先輩は朝が弱く、それに俺の行動はバレて内容で安心する。


「そっか·····なあ、怜」
「はい」
(次は何を言うんだろ?朝ご飯の事かな、)
あまり深く考えずに返事をすると、
「デート行こう」と誘われる。



「·······································え?」


先輩は今、なんて言った?
デート·····デートって言ったのか????
仮の番の俺に?!


「な、何でいきなりデートなんですか」と尋ねる。
「一緒に出掛けたいから。怜と二人で出掛けたのは高校の正月だけだっただろ。なあ、行こう?」
甘さを含んだバリトンボイスが俺の耳元で囁く。
「みっ、みみ耳元で言わないでください!!」
囁かれた方を手で覆って言うが、絶対顔が真っ赤だ。

「デートに行こう、怜」
折れる事が無く、先輩はまた同じ事を言って俺を誘う。
そもそもデートというものが恋愛経験ゼロの自分にはどういうものか分からない·····。

映画やドラマだと映画館とか海とかショッピングに行ってたよな、、、、

(先輩はイケメンだから、デート慣れしてそーだけど)

「デートって因みに何処行くんですか?」
「そーだなぁ、、遊園地とかどうだ?今だとハロウィンイベントがやってるらしい」
「遊園地··········」
先輩の口から遊園地という言葉が出たのが意外で正直驚いた。しかもハロウィンイベントって·····仮装でもする気なのか?

「俺が遊園地って言ったのが意外か?」と、先輩が拗ねながら聞いてきたので「はい、凄く意外です」と、俺は思った事をそのまま答える。

「はははっ、怜はひどいな」
拗ねた表情が笑顔に変わり、何故か俺を抱き締めていた腕に力がこもる。
(遊園地の話をしてるのに、何でこんなに密着させる必要があるんだろ)
「はぁ··········、、分かりましたから···とっ、取り敢えず準備しませんか」と、胸の中から顔を見上げて言う。
この状態は流石に俺の心臓がもたない。

「うーん、もう少しこのままでいたいが·····時間がなくなるし、しょうがないか」
先輩はそう言うと俺の額や頬に数回キスをして背中に回していた手を離す。


(朝から何でまたこんなに甘いんだッ!!)


先輩と再会してから心臓が幾つあっても足りないし、何回破裂しそうになったか想像できない。
叶わない恋なのに·····期待させるような行動をあまりしないで欲しい。
幸せを願えなくなる···············。



手を離した先輩はというとベッドから起き上がり、クローゼットを開けて何かを悩んでいた。
不思議に思った俺は「どーしたんですか?」と、ベッドから起き上がり先輩の方へ近付く。

「あー···いや、怜に似合う服どれかなって」と、クローゼットにかけてある沢山の服を見ているが、どれも高級そうでβの家庭で育った俺には一生縁が無さそうな服ばかりに見える。
それに、先輩と俺は身長と体格が違うから着こなせる自信がない。
(やっぱり昨日·····無理にでも家に帰ると言えば良かった)
今更思っても遅いが、こればかりは思っても良いと思う。
だって先輩が却下した結果だし、、、


「·············································。」


今日のデートは無しになりそーだな、と決めつけて俺は再びベッドに戻ろうと歩く。
だって、合う服が無いんじゃ外に出掛けられない。

「あ、これなら大丈夫そうだ」

ずっと悩んでいた先輩がクローゼットの中から黒いタンクトップとグレーのセーターを取り出して俺に渡してきた。
見た感じ、タンクトップは着れると思うが··········セーターはぶかぶかになる予感しかしない。


「······························。」

(デート諦めて先輩は俺で遊ぶ事にしたのか?俺は着せ替え人形ですか·····そーですか、そーですか、、)

「けーさん、これ·····ぶかぶかになると思うんですが、、、」
「大丈夫、大丈夫。ぶかぶかになっても似合う似合う」
先輩は何を根拠に俺に似合うと言っているのか不明だ。
今着てる先輩のジャージでさえズボンは引き摺ってるし、上も袖が長すぎて捲ってる状態な訳で·····。

(同じ未来しか想像出来ないぞ)

今の所、先輩に対する文句は結構浮かんだ。
が、取り敢えず渡された服を素直に着ようと思い、洗面所で顔を洗う事にする。


「先、顔を洗ってきます」と言うと、先輩も「あ、俺も行く」と言って二人で洗面所へ向かった。




「·························怜、目閉じて」

先輩は顔を洗い終えた俺の顔に化粧水を優しく塗る。
化粧水なんて今までした事がない俺は「けーさん、女子力高いですね」と、目蓋を閉じてされるがままで、
「そーか?乾燥の時期はやった方が良いぞ」と笑いながら先輩は言い、保湿液を上から塗ってくる。

それから【女子力】について分かる訳もない男二人は部屋に戻るまでそれをテーマにして話し、戻った後は各々着替えた。

先輩のぶかぶかのジャージ(寝間着)を脱ぎ、タンクトップとセーターを着てみるが「···············やっぱり、」と俺は呟く。
案の定、セーターはぶかぶかで手がすっぽりと隠れてしまい、鎖骨ら辺が空いている為黒のタンクトップが見えている状態だ。

一応先輩に「どうですか?」と尋ねてみると、
先輩は目をキラキラと輝かさせて「か、可愛い·····ッ、、怜···お願いだ。写真撮っていいか?」と、本気で意味不明な事を言ってくる。

「はぁ?」

可愛いってなんだ·····いや、それより写真って、、、本当に先輩はどーしたんだ?

俺の風邪がうつって熱でもあるのか??·····かなり心配だ。


「写真いいだろ?な?」
人の心配をよそに余りにも執拗いので、
「はぁ·····こんなの何処が良いのか分かりませんが、どうぞ」と、俺は呆れながら返す。
すると「やった♪♪」と、先輩は何がそんなに嬉しいのか目が死んでいる俺を携帯で撮り始める。


(·····これ、あの人への片思いを拗らせておかしくなったのかもしれない、、)


うん、絶対そーに違いない。

てか、それしか考えられないな、、、、
αは良家が殆どで地位も高い分、決められた許婚いいなづけと結婚するのはよくある話らしい。
先輩も多分そんな感じで、あの人となかなか結ばれなくて········と考えると可哀想に思えてくる。


早く、、、早く·····分家の人達に諦めてもらって、あの綺麗な人と幸せになってもらわないと。
これ以上は先輩が壊れてしまうかもしれないし、いや·····既に行動がオカシイし··········。

写真を撮り終えて満足した先輩はというと白のTシャツと黒のジャケット、グレーのズボンに着替えて、一見シンプルな服装で何処にでもある形だが、先輩が着ているだけでファッションショーのステージを歩いても違和感を感じさせない。
流石、イケメンは違う。

「朝ご飯は向かいながら何処かで食べようか」
鞄に色々仕舞いつつ先輩は言い、俺も「そーですね、朝ご飯がお昼ご飯になりそうですが」と笑って返す。
「そうだな、怜は何食べたい?」
「オムライスが食べたいですっ」
「はははっ、オムライスって怜は言う事も可愛いな」


そんな会話を続けながら二人が出掛けたのは、起きてから一時間後の事だ。




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