25 / 36
24話【看病】
しおりを挟む何かがおでこに貼られる。
「 ···································。」
目を開けたいのに瞼が重くて開けられないし、
肩から上が沸騰してるみたいに暑くて、逆に肩から下は凍えるんじゃないかっていう位寒い·····。
そんな動けない俺の頬に手が触れた。
(───冷たい···)
「 き·····もち ぃ、」
母さんかな?冷え症で一年中手が冷たいし。
そっか、俺·····今実家に居るのか···············。
いきなり熱があるから迎えに来てって電話貰ったから母さん驚いたろーなぁ、、、
元気になったら説教されそぅ
あ、風邪治ったら慎二とちゃんと話さないとな
それから··········そ れ ···ら⎯⎯⎯⎯⎯⎯···
「······························。」
頭を撫でられて俺の意識はまた闇の中に溶けていく。
「 ん、」
寝ていた様で今度は目が開けられたが、まだ熱が高いのか視界はボヤけてグラグラする·····。俺はそれに耐えられなくて直ぐに目を閉じた。
鼻も·····両方詰まってて口から空気を吸おうとするけど、肺なのか気管支なのかそこら辺が痛くて呼吸するのもツラい···············。
「···············か ··さ···ん ?」
(どこ?)
「ははっ、俺は母さんでは無いな」
「!?」
母さんだと思ってたのに、男の声が耳に入り慌てて起き上がろうとする。
しかし、途中で身体が耐えられずベッドに倒れた。
「はぁ··········怜、大人しくしないと駄目だろ」
聞き覚えのある声で話すその人は、起き上がろうとして乱れてしまった布団を綺麗に整えて俺に被せる。
「 け さ ····ん·····ど して···? [けーさん、どうして?]」
「後で教えるから、取り敢えず水分とご飯·····あとは着替えだな」
先輩は一度立ち上がり、俺の視界から消える。
直ぐに戻ってきたが「先ずは着替えから」と、先程整えられた布団を半分にたたむ。
(さむッ)
身体の半分が布団を被っていない状態でかなり寒い··········。歯は自身の意思とは関係無くガチガチと音を鳴らし、身体はブルブルと震えた。
俺は耐えられず身体を丸めてダンゴムシの様に縮こまる。
それを見ていた先輩は「直ぐ終わらせる」と、ベタベタになっている俺の服を脱がし、温かいタオルで身体を素早く拭いて服を着せてくれた。が··········ズボンもジャージもかなりブカブカだ。
「はははっ、やっぱりブカブカだな」
先輩は俺を見て笑う。
「·························。」
(これ、、、着せたのは先輩だろ)
普段の俺なら拗ねて何か言い返すが、今はそんな元気は無い。仕方がないので黙って先輩を睨みつけた。
「ごめんごめん、あー···怜に言い返されないと何か寂しいもんだな」
先輩は苦笑して「ご飯食べれるか?」と尋ねてきたので、
俺は小さく頷く。
すると、、、
「少し待ってて」と先輩は何処かへ行ってしまった。
(····················先輩···料理とか出来るのか?)
かなり不安だ·····。
体調が悪いのに変な物が出てきたら·····どうしよう···············。
完食出来る気がしない。
「はぁ·····、、」
考えてもしょうがないので、俺は諦めて目を瞑る。
眠気が襲い、もう少しで寝てしまいそうな時、
「怜、お待たせ」と先輩が戻ってきた。
眠い瞼を開けて先輩を見ると、手には湯気を上げるお茶碗とストローが刺さったコップが··········。
(お椀の中身を見るのが怖い)
先輩は近くにある机にお茶碗とコップを置き、
「身体起こすからな」と俺の背中に腕を回す。
そして、ゆっくり上半身を起こし先輩に支えられる様な形で俺は起きたが、その際パーカーの様な上着を肩にかけられる。
「さっ、怜口開けて」と言われ、 そして願う。
神様がいるのならお願いしますっ!!!
今日位、俺の願いを叶えて下さいッ!
マジでお願いです、先輩の·····先輩の料理がゲロマズじゃありませんようにッ!!!!
お願いします!お願いしますッ!!
何度も何度も祈り恐る恐る口を開けた。
(昨日、あんな事しなければ良かった··········)
今更後悔しても仕方が無いが·····それでも激しく後悔している。
見るのも怖かったので俺は目を強く瞑り、口に入れられるのを待っていると、、、、
「ぶっ、、、ははははっ、大丈夫だよ。湯煎で温めるだけのお粥だ。だからそんなに眉間に皺を寄せて警戒するな、はははっ」と先輩は大声で笑う。
「っ!」
俺はそれを聞いて、願いが·····願いが叶った!
ありがとうございますッ!ありがとうございます!!神様!ありがとうッ!、と心の中で感謝した。
先輩はスプーンでお粥を掬い、フ~·····フゥ~···、、と息をかけて「これくらい·····か?」と、俺の口にスプーンを運び、俺はそれを咀嚼する。
(!、これ·····卵粥だっ)
熱はまだ高そうだけど、鼻は現在片方だけ詰まってるおかげでお粥の味が何となく分かった。
俺はもっと食べたくてまた口を開けて待つ。
「あはははっ、美味しいか?」と先輩は微笑み、俺は小さく頷く。
「待ってろ」
先輩はまたスプーンでお粥を掬うと先程と同じ様にして俺の口に運ぶ。
それは何回か続き、その途中でコップに入ったスポーツドリンクを飲んで、またお粥を食べて··········を繰り返す。
俺は無事に完食出来た。
「けー さ ぁ とう い す[けーさん、ありがとうございます]」
声がまだ出なくて変な言葉が出来上がってしまった·····。
本当は御礼を伝えているのに、、、
「ああ、無理しなくて良い。薬持ってくるけどもう少し起きとくか?」
俺は先輩の言葉に頷き、先輩が支えていたスペースにはクッションが三つ入れられる。
まだ視界はボヤけてグラグラするけど、さっきよりはマシで改めて自身が居る部屋を見渡した。
灰色のセミダブルのベッド、壁は全体的に白だが一部は煉瓦の柄がプリントされている壁紙が貼られ、可動式の本棚が二つに·····それから壁に落ち着いた感じの絵が数点飾られている、、、、
ベッドの近くにあるソファはベージュ色、手前にはガラステーブルがあり他の棚等は黒色でオシャレな部屋だった。
(俺の部屋とかなり違う·····大人って、、感じだなぁ)
この状況を整理すると、、、
どうやら俺は先輩の家で看病されていて·····保健センターで伝える番号をミスったって事になる。
(先輩に申し訳なさすぎる)
迷惑掛けないようにしよう、って決めていきなり迷惑掛けてしまった。
「 ·····はぁ、」
そーいえば、咳は出て無い·····。
喉は潰れてる様だけどこれなら治りそうだ。
(明日、治ってますよーに)
本棚の本を見ていた時、ふと·····近くの棚に写真立てが飾ってある事に気付く。
(家族写真??それともペットのかな?)
興味が湧いてしまい、身体を無理矢理起こすと壁にもたれながらその棚へ向かった。
「···ふぅ、、」
なんとか辿り着いてその写真立てを見る。
写真立ては三つあり、
一つは予想通り犬と笑顔で写る小さい頃の先輩、二つ目は高校の頃の文化祭で俺と先輩が腕を組んで楽しそうにピースサインをしている。
確か····射的で競ったんだけど俺が負けて、串系の食べ物10本奢らさせられたっけ、、、
他のも競って奢り奢られって感じだったなぁ。
(懐かしい·····)
思い出して俺は小さく笑い、最後の写真立てを見た時··········思わず「ぇ?」と声が出た。
最後は─────·····
可憐な女性と仲睦まじい様子で微笑む先輩。
(これ、最近かな)
先輩とどんな関係だろ?っと不思議に思う反面·····何故か凄くモヤモヤするし、このモヤモヤは何なのかは分かる。
(契約上の番の癖に·····ッ)
一回寝たくらいで、、嫉妬なんて··········。
駄目だろ俺は契約の番だ。
先輩が誰とどーなろうと俺はそれに対して笑顔で祝福しなければならない。
「ぁ、」
····················もしかしたら、、、
先輩が本当に番にしたい人ってこの人なのかも·····。
この前、分家の人達の話しをしていた時、
「ある理由で断り続けていた」って言ってたし、絶対そーだっ!
「···································。」
確かに·····こんなに綺麗で優しそうな人なら先輩も惹かれるのは分かる。
そっか、、俺はこの二人の幸せを叶える為に今回契約したんだ。
(·······失恋···したなぁ)
認めたくなかったけど、再会して·····分かった。
俺はまだ先輩の事が好きだった。
引きづりすぎだろ、、、ほんと·····。笑える、、、
けど、こんなに素敵な二人は凄くお似合いで、俺は何も持ってないし·····Ωとしても下のゲテモノだ。
なら··········二人が幸せになれるように精一杯頑張ろう。
先輩と自分が写る写真立てを見えない様に伏せて、先輩が戻って来る前にさっきまで寝ていたベッドに戻った。
0
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結】もう一度恋に落ちる運命
grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。
そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…?
【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】
※攻め視点で1話完結の短い話です。
※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
キスから始める恋の話
紫紺(紗子)
BL
「退屈だし、キスが下手」
ある日、僕は付き合い始めたばかりの彼女にフラれてしまった。
「仕方ないなあ。俺が教えてやるよ」
泣きついた先は大学時代の先輩。ネクタイごと胸ぐらをつかまれた僕は、長くて深いキスを食らってしまう。
その日から、先輩との微妙な距離と力関係が始まった……。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない
小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。
出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。
「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」
「使用人としてでいいからここに居たい……」
楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。
「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。
スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる