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5話【α×Ω合コン】
しおりを挟む「やあ、一杯どうだい?」
αの男が俺に話し掛けてくる。
「いえ、遠慮します」
久坂の代わりに参加した俺は何故かメイド服を着せられていた····················。
あの時はギリギリまで悩みに悩んだ。
大好きなアーティストのチケット·····しかもS席だったから。
·····結局チケットに負けた俺は久坂の代わりに合コンに参加している。
(自分自身に呆れる。まあ、大丈夫だろう········)
他にも沢山のΩがいる訳で、そっちの方がよっぽどΩらしく可愛い仕草や顔をしている。
対して俺は可愛い顔してないしな、、、
この合コンは金持ちのαとΩ専用の会場となっており気に入ったΩがいれば、、、
愛人契約をするのも良し、嫁にするも良し·····一日だけのお金の関係でも良し···············。
全てαの欲の為にあるような場所だ。
「····················くだらない···」
俺は小さい声で呟く。
しかも·····Ωだけメイド服着用必須ってなんだ!!
おかしいだろ主催者ッ!!
もしかして、、、
主催者の偉い奴がメイドフェチか?
とんだ性癖持ち野郎だなっ!
今の俺の服装は、胸元が露出した膝から少し上のメイド服にガーターベルトで太腿まである黒のストッキングを履いている。
外でこんな格好をしたらただの変態だ、まったく、、、
「早く、終わらないかなぁ·····」
人が少ない端の壁にもたれ掛かり、周りの様子を見る。
皆、楽しそうに話してるがペアが決まると奥の扉へ消えていく。
多分·····あそこでヤってるんだろーな。
あんな痛くて苦しい行為が何が良いのか全然理解出来ない。
でも·····、、、
先輩に指を入れられた時は⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····
「········································。」
馬鹿っ!思い出すのは辞めよう。
全て終わった事だ。
俺は···今日参加だけして何も無く帰る。
それが全てだ、全てはチケットの為ッ!!
「チケットの為だ」と、気持ちを切り替える。
「よお、そこのΩ」
「はい。何か?」
突然、声を掛けられ俺は考えていた思考をストップさせて目の前の人物を見る。··········見た感じ、四十歳前半の男の様だ。こんな端にいる俺に何の用だろう?
「お前、俺の相手をしろ」
(······························は?? 寝言は寝て言え)
「お断りします」と、笑顔でハッキリ断った。
この合コンの良い所は強制は無い。
Ωも気に入らなければ断って良いのが一番魅力的なんだよ~♡と、久坂が言っていた。
さすがお金持ち限定の合コンなだけはあるな。
αの男は俺に断られたのが気に食わないのか、
「Ωのくせに何様だ?!俺はαだぞ!!お前は黙って股をひらいてりゃ良いんだよッ!」と怒鳴ってくる。流石に大声で怒鳴るものだから周りの視線がこっちに集まってしまった。
(嗚呼··········ついてない·····)
何事も無く帰る、という俺の決意は直ぐに消えた。
思わず重い溜め息が出てしまう。
「知っています。ですが、俺は貴方が好みじゃ無いので」
俺の言葉が癪に障ったのか、男は持っていた酒の入ったグラスを俺の方へ投げて来た。
咄嗟に顔を手で庇ったが、近くの壁に当たったグラスはパリーンッ!と音を鳴らして割れ·····メイド服と腕や金色の髪、庇った顔がビショビショに濡れてしまう。
阿呆らしい···············
こんな事でここまでするなんて。
·····Ωのくせに·····とか、黙って股を開けとか、、、
好きで··········Ωになった訳でも無いのに。
怒る気さえ起きないのでその男を無視して、近くにいたウェイターに声を掛ける。
「すみません、服が汚れてしまいシャワーを浴びれる場所はありますか?」と。
ウェイターは先程のやり取りを見ていたので、直ぐに「こちらです」と案内しようとする。
(シャワー浴びて服着替えたら帰ろう、、)
明日、久坂に会ったらこの合コンはもう参加しない方がいいと伝えよう。
金持ちでも頭がオカシイ奴はα、β、Ω関係無くいるのだから··········。
合コンはもう、これっきりだ。
お酒をかけたΩが怒らず·····しかも無視して相手にしないのが駄目だった様で、男が俺の右腕を強く握ってくる。
「 痛ッ、、」
痛みで顔が歪む。
「Ωのくせに!Ωの分際でッッ!!!よくも·····よくもαの俺を無視したな?!?」
気付けば男が俺を殴ろうと拳をあげていた。
「⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····ッ、」
殴られるッ!!そう思い、目をギュッと瞑って歯を食いしばった。
「 やめろ」
誰かの怒りに満ちた声が聞こえ、瞬間·····右腕が解放された俺は目を開ける。
暴力を振るおうとしたαが、二十代のαに関節技をされていた。
男は痛みに叫び、その声を聞いて警備員が慌ててやって来る。
しかし··········、、、このままだと助けてくれたαが加害者側になると思った俺は、ウェイターと共に警備員へ経緯を説明。
説明を聞いた警備員はその後、問題の男を連れて行く。
騒動が落ち着くと見ていた周りは自分達の会話に戻った。
「ありがとうございます」
助けてくれたα男性に頭を下げ、改めて男性を見る。
························?
あれ??
この人と····どっかで········会った···か?
相手は190cmはありそうな·····サラサラの黒髪をした、目が宝石のルビーみたいに赤い人··········。
しかも顔が凄く整っている。
まるで···彫刻で創り出された完璧な創造物のように、、、
こんなイケメンならモデルとかテレビとか、
そーいうメディアで見たことがあるのかも?
「·····いや、当然の事をしたまでだから」と、そのαは言う。
(言うことも一々カッコイイ人だな、、)
「そうですか、では俺はこれで·····」
御礼を伝えたので俺はウェイターへシャワーが浴びれる場所に再び案内して貰おうとしたが、そのαに止められた。
「·····手、怪我してる」
「 え? あ、、」
どうやら右手をさっきグラスで切ってしまった様だ··········。
傷を隠していたテープにも血が付着してしまって赤い。
「手当てする」
それだけ言うとそのαは突然俺をお姫様抱っこして奥の部屋へ連れて行こうとした。
「え?! あ、あのっ·····」
「ガラスが刺さっていたら大変だ」
た、確かにそれはヤバいけど、、、
お姫様抱っこは要らないと思う。
「一人で歩けますッ!」
「駄目だ」
「歩けますって!!」
「······························。」
俺と話すのも面倒になったのか、そのαは無言になり暴れる俺を無理矢理奥の部屋へ連れて行く。
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