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一章

【疑心】

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「そういえばルイス」と、テオがオレの手を引きながら話す。
「はい」
どうしたんだろ?
「今日の姿も美しいな。流石、私が惚れ込んでいるだけはある」
「~~~~~ッ·····あ、有難うございます」
テオは·····恥ずかしげも無く、平然と言えるから凄いと思う。。。

オレも口には出せてないけど、今日のテオも格好良い·····。
黄金色のウェーブが掛かった髪は七・三に分かれた状態でセットされていて、服は白いシャツに黒のネクタイ、その上からは綺麗な刺繍が施されたワイン色のベストを着用。
下は白のズボンでベストの上からは黒のロングコートを羽織っている。

「ルイス、今日の私はどうだろうか?」
「え?!えっと、、そのっ····格好良いです」
「ふっ、そうか。流石は夫人だな」と、テオは嬉しそうに笑う。
·····そういえば、格好良いってテオに言った事あまり無いかもしれない、、、
テオは『愛している』『可愛い』『良い子』『美しい』とオレに毎日の様に言ってくるけど·····。

「夫人は確かに凄いですが、テオはいつも格好良いですよ。オレは外見も好きですが、頑張る貴方が一番大好きです」
「ッ、」
オレの手を引いて前を歩くテオが立ち止まる。
「テオ?どうしました?」
「····················全く、、お前は·····」
テオは振り返るとオレを抱き寄せて唇を奪う。
「ンっ  て、、テオ·····」
会場に向かう廊下···下手したら誰か通るかもしれない、、、
テオだってそれは分かっている筈なのに·····。

舌がオレの口の中で動き、歯茎をなぞり·····上顎を何度もなぞってくる。
オレは··········上顎をテオに舐められると背中に電気が走った様に甘い刺激に襲われ、力が抜けそうになるから困る。

「···てお·····だめぇっ、、」
「はぁ···  はっ、 何が駄目なんだ?」
熱を帯びた目がオレを見る。
「歩け·····なくな るから···会場いかないと··」

「·············································。」

口の中からテオの舌が出ていくが、舌にオレの唾液なのかテオの唾液なのか何方のものか分からない唾液が線を引く、、、
テオはそれを舌で器用に絡め取り、オレの口から垂れそうな唾液を舐めた。

「フッ、キス一つでそんな表情を浮かべるとはな。そんなに良かったか?」
「~~~~~ッ、て·····テオだからですよっ」と、オレはテオから三歩距離をとる。
「そうだな。そうでなくては困る·····私以外にルイスがそんな表情をしたら其奴に何をするか分からぬ」
そう言うテオは歪んだ笑みを浮かべていた。

「·························。」

オレから距離をとったのに···その歪んだ笑みが何故か心配になって、直ぐにテオに近付くと思いっきり両頬をつねる。
「馬鹿な事を言わないで下さいっ!キスも他の事もテオだからオレは嬉しい。それだけは絶っ対に忘れないで下さい。分かりましたか?」
オレにつねられたテオは先程の歪んだ笑みが嘘のように驚いた表情に変わる。

「テオ、聞いてますか?」
「·····ふぁ、ふあ」(あ、ああ)
「はぁ、、、テオはオレより八歳も上なのにしっかりしてください」と手を離す。
「·························。」
「?」
テオを見ると次は驚いた表情から蕩けそうな程の笑顔を浮かべていた。

「テオ?どうしたんですか?」
「いや、なんでもない」と答え、テオはオレの手を再び握ると会場へ歩き始める。



◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆


「テオ様、ルイス様御婚約おめでとうございます」
「お二人の末永い健康とご多幸をお祈りいたします」
沢山の貴族や貴賓が玉座の前まで来てお祝いの言葉を言う。

前回参加した新年会より大勢が参加していた。
「テオ」
「どうした」
「新年会の時より人が多いですね」
「ああ。婚約者であるルイスを見ようと、遠い領地の者や貴賓も多く足を運んでいるからな。狩猟祭や新年会より倍はいるぞ」と、白ワインを飲むテオ。
「そんなにですか?!」
初耳だ·····。
だからハドラさんここ最近隈が凄かったのか、、、
「まあ、貴賓と言っても同盟国の者が百人程来てるだけだ」
「そ、そうですか」
百人って·····凄い数だと思うオレは変なのでしょうか、、、、

「ルイス、そんな事よりこの料理は美味しいぞ」
テオはカットした牛のステーキ肉をフォークに刺してオレに向ける。
「は、はいっ」
口を開けるとステーキ肉が口の中に入れられた。
「─────んっ!」
噛むと肉汁が口の中で溢れ、凄く美味しい♪
「美味しいか?」と、聞かれてオレは頷く。

「凄く美味しいですね!あ、テオこの料理も美味しそうですよ」
次はオレがテオにフォークを向ける。
さっきから気に入って食べていたキノコのグラタン。テオも気に入ると良いけど、、、
「頂こう」
口を開けてキノコグラタンを食べる。
少しして、「美味しいな」とテオは目を細めると再び口を開けて催促してくる。
オレはそれが面白くて笑いながらテオの口にキノコグラタンを入れた。


「二人は本当に仲がいいな」

「!」
聞き覚えのある声に直ぐに顔を其方に向けるとスデンソン様とその取り巻き達が立っていた。
約六ヶ月前の最悪なお茶会以降全然会っていなかったから久しぶりだ。

「ああ。当然だろう、ルイスは私の婚約者なのだからな」
「そうだね、例え·····卑しい身分だったとしても今は弟の婚約者だ」と、不気味な笑みを浮かべるスデンソン様。。。
しかも、オレが奴隷となって元主人と身体の関係があった事も知っている様子だ·····。

「兄上、不敬だぞ。ルイスは卑しい身分では無い。訂正しろ」
スデンソン様の言葉にテオはかなり怒っているようで、怒気を孕んだ声で言う。
「いやいや、僕は弟の世継ぎを心配しているんだよ。ルイスは他の男と関係をもっていたと噂で聞いてね。性病を持っていたら大変だろう?」
スデンソン様の言葉に会場内がざわつく。

「いい加減にしろ。ルイスは健康体だ、医者にも検査をさせたのだからな。世継ぎも心配せずともその内授かる。これ以上侮辱するなら今度こそ息の根を止めるぞ·····早くこの場から去れ」と、テオは怒りで肘付きを持つ手が震えていた。
「おお、怖い怖い。   皆ッ!!!聞いてくれ、大切な弟は騙されているんだッ!僕はあの卑しい羊から洗脳された弟を救わなければならない」と、スデンソン様は大声で話し始める。

「いい加減にしろと言った筈だッ!!!」

怒鳴りと共にスデンソン様の首の周りに光の矢が円を画く様に展開され、テオは椅子から立ち上がると腰に差していた鞘から剣を抜きスデンソン様の元へ歩いて行く。

でも·····
何かがオカシイ、  、、

光の矢が首に突き付けられ、テオが剣を持って近付いているのにスデンソン様は笑っている。
オレの知るスデンソン様ならこんな大胆な事はやらないし自身の首に矢が突き付けられたら平常心を欠く筈·····。
しかも、ワザとテオを怒らせて·············今までに無い行動、、、

「テオッ!待って、何か変だ」
オレは慌てて立ち上がりテオを止めようとして、突然·····耳が痛くなる程の地鳴りと床にヒビが入る。
周りも叫び声を上げてパニック状態になった。

「?! ルイスッ!!!!」

テオは慌てて此方に戻ろうとするが、激しい揺れにテオは動けずオレは立てなくなり、次の瞬間地割れを起こし陥没していく地面にオレは倒れる。
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