上 下
31 / 41
一章

【着飾る】

しおりを挟む
あれからテオはずっと一緒にいてくれる。
勿論、大量の仕事を難無くこなしている。
しかし···中庭でオレにひれ伏す姿を侍女達が遠くから見てしまった事もあり、オレは影の権力者という変な噂が流れているとアンナさんが笑いながら報告してくれた。

「あはははははっ♡もう最っっっ高♡私の推しは最高ですっ!は~~ルイス様、私対価無しで貴方に一生ついていきます♡」
「アンナ、その推しとはなんだ?」
報告書に目を通しながらテオが聞く。
「え?!テオ様知らないんですか~?♡推しとは~人や作品、商品に対して熱心な支持や愛情を示すときに使う言葉ですよ~っ♡因みに私以外にもルイス様推しは多いです♡」
「ほぉー·····。それに恋愛感情が混じっている者がいたら直ぐに消せ。男なら尚のことな···証拠は残すな」
「きゃ~~~っ♡テオ様怖いですね。でも、畏まりました♪」
「····················。」
恋愛感情抱いただけで消されるって、、、
いや、そもそも二人の会話が物騒だ。

「ずっと疑問だったんですが、アンナさんはどっちが素なんですか?」
冷淡に答える時と今のアンナさんは二重人格かと思える位中身が全然違う。
「え?乙女の秘密聞いちゃいますかあ~~♡ふふっ·····楽なのはこっち、とだけお伝えしときますね♡」
「そうですか。オレは今のアンナさんの方が好きです」
そう言うとアンナさんは嬉しそうに目を細め、
「はいっ♡やっぱり貴方は最高の推しですね」と言って部屋から出て行く。


「アンナさんは可愛くて面白い人ですね」
「可愛い??面白い???··········私には頭のネジが外れた部下にしか見えぬが、」
「ネジが外れたって·····」と、オレは笑う。
部下にそこまで言うテオも不敬罪に毎日なっているアンナさんも両方見てて楽しいし面白い。

「ルイス、明日の新年会は私の隣で座っていれば良い。兄上も来ると思うが何を言ってきても無視しなさい」
「分かりました。あと、お茶会は来月の中旬だと連絡がありました」
「そうか·····付き添いは私が行く。変装と魔道具を使えば兄上は残念な人だから私だと分からぬ筈だし他の者も分からぬだろう」
「わ、分かりました」
きょ、、、兄弟なのに変装と魔道具で分からないなんて···ここの兄弟は何故こんなに仲が悪いんだろう?

「何でそんなに仲が悪いんですか?」
二人の家族らしい会話を此処に来てから見た事がない。
「嗚呼···········父と母を殺したのが奴だからだ。勿論、私の事も殺そうとして何度も失敗している。今の王族で光属性の魔法が使えるのは私だけだからな」
「        え?」
光属性の魔法が使えるのはテオだけ·····。
じゃあ、スデンソン様は魔法が使えないのか、、、

「珍しくも無い。王位継承権の問題だ········十四の頃、兄上の策で死地に追いやられ、生き残って帰ったら父も母も死んでいて国は荒れ放題だった。その時、奴は何をしていたと思う?他国に自分だけ逃げていた」
「そんなっ·····」
「有り得ないだろう?自身が撒いた種だというのに。私は無我夢中で何とか国を立て直した。奴は数年後に帰って来た·····。『大切な弟よ、父と母が何者かに殺された』とな」

「·························辛く···なかったのですか?」
「正直に言えば辛かった。しかし、干渉する暇があの時は無かった」
テオは思い出しているのか眉間に皺を寄せて悲しそうな表情をしている。

「何故、スデンソン様を罰しないのですか?」
「証拠が足りない。それに奴には少々厄介な相手がついている」
「·························。」
オレは·····兄弟仲が悪くなくて逆に良好だったからかなり驚いた。
しかも自分の親を殺して逃げるなんて、、、
「ルイスは気にしなくて良い。これは兄と私の問題だからな」
「はい、」

「それより明日の新年会は美味しい料理が沢山出てくるぞ」
テオがオレに気を使っているのか話題を変える。
「そうなんですか?」
「ああ。ガレイズがルイスに食べさせたい新作が沢山あると言っていた」
「おおっ!それは楽しみですねっ♪」


それからはオレとテオは新年会の話で盛り上がった。


◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆



「ルイス様美人~~~ッ♡流石っ、私の最推しですぅ♡♡♡あ、写真撮っても良いですか~?」
「あ!ズルいわよっ!私も撮りたい!」
アンナさんともう一人の侍女のベルさんがオレの服を着せてくれるが、凄くテンションが上がっている。
「アンナ、ベル、写真を撮るなら私にも─────·····
「テオ様ッ!動かないで下さい!」
「む、、すまない」
テオはハドラさんに整えられていた。
現在オレとテオは新年会の為着飾っている。

今着ている服は、右肩が黒いマントで隠されたオシャレな白いシャツにコルセット付きの黒のハイウェストのキュロットでしまい、左の腹部には造花の薔薇やラナンキュラス等が付いている。
そして何故かフェイスベールに合うような煌びやかなガネットやルビーが使われた髪飾りが付けられた。

··········オレ、最早夫人のお人形かな、、、


「ほう、美しいな」
「!、テオ」
テオも終わった様で此方に来た。
テオはウェーブの髪をセンター分けにして、胸のポケットにはオレにも付いている薔薇やラナンキュラスが見える。
服はデザインや色を揃えたと夫人が言っていたが今日のパーティーに夫人は来るのかな?

「では、そろそろ行こうか」
「はい」
オレはテオにお姫様抱っこをされて会場に向かう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【短編】最愛の婚約者の邪魔にしかならないので、過去ごと捨てることにしました

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「ディアンナ、ごめん。本当に!」 「……しょうがないですわ。アルフレッド様は神獣様に選ばれた世話役。あの方の機嫌を損ねてはいけないのでしょう? 行って差し上げて」 「ごめん、愛しているよ」  婚約者のアルフレッド様は侯爵家次男として、本来ならディアンナ・アルドリッジ子爵家の婿入りをして、幸福な家庭を築くはずだった。  しかしルナ様に気に入られたがため、四六時中、ルナの世話役として付きっきりとなり、ディアンナとの回数は減り、あって数分で仕事に戻るなどが増えていった。  さらにディアンナは神獣に警戒されたことが曲解して『神獣に嫌われた令嬢』と噂が広まってしまう。子爵家は四大貴族の次に古くからある名家として王家から厚く遇されていたが、それをよく思わない者たちがディアンナを落としめ、心も体も疲弊した時にアルフレッドから『婚約解消』を告げられ── これは次期当主であり『神獣に嫌われた子爵令嬢』ディアンナ×婿入り予定の『神獣に選ばれた侯爵家次男』アルフレッドが結ばれるまでの物語。 最終的にはハッピーエンドになります。 ※保険でR15つけています

君がいないと

夏目流羽
BL
【BL】年下イケメン×年上美人 大学生『三上蓮』は同棲中の恋人『瀬野晶』がいても女の子との浮気を繰り返していた。 浮気を黙認する晶にいつしか隠す気もなくなり、その日も晶の目の前でセフレとホテルへ…… それでも笑顔でおかえりと迎える晶に謝ることもなく眠った蓮 翌朝彼のもとに残っていたのは、一通の手紙とーーー * * * * * こちらは【恋をしたから終わりにしよう】の姉妹作です。 似通ったキャラ設定で2つの話を思い付いたので……笑 なんとなく(?)似てるけど別のお話として読んで頂ければと思います^ ^ 2020.05.29 完結しました! 読んでくださった皆さま、反応くださった皆さま 本当にありがとうございます^ ^ 2020.06.27 『SS・ふたりの世界』追加 Twitter↓ @rurunovel

処理中です...