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一章

【褒美】

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午前中は男性の貴族や貴賓しか来なかったのに、午後は女性の貴族と貴賓が沢山来た。
お茶に誘われたりしたがテオが此処から出ては駄目だと言っていた為、逆にオレがガレイズさんにお願いして令嬢達にお茶を出して貰っている。

「ルイス様はテオ様と婚約中なのですよね?♡」
「··········え?」
いきなり飛躍された質問が来た。
「だって、左手薬指は婚約や結婚の時付けるものではありませんか」
「、」

···············そうだった。
これは違うと言えない···。

「はい、そうなんです」
「まあっ!♡♡ルイス様の国が滅ぼされテオ様がヴォーガ国を攻めた後、何年もルイス様を探した·····という話は国中で有名な話ですの♡」と、一人の令嬢が頬を染めながら話す。
「そ、そうなんですか」
「はい♡一度目はテオ様が半年間昏睡し国も大変でしたが目を覚まされてからは直ぐに国を立て直し、その半年後に二度目のヴォーガ国との戦争で勝利したのです。まさに愛の力ですわよねっ♡」

「!」

え···············?

テオが半年間も昏睡?
国を立て直した?  ??

·····知らない。
テオはそんな素振りも言葉も無かった。
二度ヴォーガ国を攻めたのは知っているけど、
まさか···昏睡したのが理由だったなんて··········。


「ルイス様?」
「も、申し訳御座いません。少し·····疲れてしまったようです、」とオレは令嬢達に謝る。
「そうですわよね、、、お開きに致しましょう」
「是非またお茶しましょうね♡」
「ルイス様、楽しい時間をありがとうございます♪」

令嬢達はテントから去っていった。



「すみません···疲れたので訪問は全て断って下さい」
アンナさんはオレの言葉に頷くと急いで外にいる二人に伝え、マイロさんは寝る為の簡易ベッドを準備してオレをそこに運ぶ。
「ルイス様大丈夫ですか?」と、ガレイズさんが生姜湯を持って来てくれた。
「ありがとうございます、すみません·····寝れば大丈夫です」
テリー先生には「疲労が溜まったのでしょう。安静にしましょう」と言われた。
オレは「はい、」と返事を返して横になって瞼を閉じると········直ぐに眠りに落ちた。



◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆



「ルイス」


「ルイス」


「ルイス大丈夫か?」

「────····ん、て·····テオ?」
「ああ。私だ」
オレの左手をテオが両手で握る。
「·····おかえりなさい」
「ただいま。今日は頑張ったそうだな」
いつも見る貴方の笑顔·····その笑顔を見て心の底から安心した。

「テオに褒めて貰いたくて···頑張りました」
「そうか、偉いぞルイス。今日は疲れただろう?ゆっくり休みなさい」
そう言ってテオがオレの頭を撫でてくれる。
「はい。テオ········寂しかったです、、貴方が少し居ないだけだったのに···オレは寂しかったし怖かった」
テオを労わないといけないのに·····考えていた言葉とは違い心で思った言葉が口から出てしまう。

「すまなかった。もう何処にも行かないから寝なさい」
「はい·····」
何処にも行かない、という言葉を聞いてオレは再び目を閉じる。



⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····



⎯⎯··· ん?

あれ?
オレは·····何してたんだろうか?

そうだ、  、、戦争中だった。
『ルイス王子?』
兵士に声を掛けられる。
『あぁ、、大丈夫だ。すまない···少し寝ていた』
今日こそ獅子王に本気を出させてやる!!
『ルイス、ルイス』と会う度に嬉しそうな顔をするあの顔を今日こそはッ!
魔法も新しい術式を思い付いた。
あの嬉しそうな顔を必ず変えてみせるッ。


『···································。』


『  はあ   っ はっ   はぁ  、、 くそッ  、』

『ルイス、こんなものか?』
また、楽しそうに獅子王が尋ねてくる。
『ふざけるな!まだだッ!』
オレは術式を展開し火柱が獅子王を包む。
そして、火の矢を周りに発生させて獅子王へ放ち剣で腹を狙う。
しかし·····獅子王は防壁で矢を防ぎ、『惜しいな』と言って魔法を発動させた。

『────·····?!』

気付けばオレは糸に囚われ動けない。
そして、目の前には光の矢が何十本も·····。
『おっ、オレの考えた複数術式をッ?』
まさかあの一瞬で獅子王は理解し、より精度の高い術式に変えたのか?
天才にも程があるッッッ

『さあ、ルイス·····どうするのだ?』

獅子王は満面の笑みでオレに聞いてくる。




「────────·····ん"、」

目を開けると獅子王···いや、テオの顔が目に映る。
「·····テオ」
「なんだ」と、テオは目を閉じたまま口を開く。
「!?  お、起きてたんですか」
「少し前にな」
「そうですか。·················夢を···見たんです。テオと戦っていた頃、新しく考えた複数術式を一瞬で真似されてしまった時のを·····」
「ふっ、そんな事もあったな」

「オレ···必死に考えたのに··········本当に悔しかったんですから」
「はははっ、真似るのは容易だが一から作るのは至難の業だ。私はルイスと戦う度、次はどんな魔法を使ってくるのか楽しくて仕方が無かったな」
「戦争中に楽しいというのは不謹慎では?」
「そうだな。だが、本当に楽しかったのだ、お前との戦いは·····」

テオは赤い綺麗な目を開けて「今から散歩しに行かないか?」とオレを誘う。
オレもすっかり目が覚めてしまったので「良いですよ」と頷いた。


テオにお姫様抱っこされた状態でテントから出ると外は静かでまだ空は暗かった。
「テオ様、ルイス様おはようございます」
警備をしていたアーロさんに挨拶されてオレも返す。
アーロさんによればジャスパーさんは交代で寝てるらしい。

「少し散歩してくる」
「畏まりました。お気を付けて」


テオはオレをお姫様抱っこしたまま森の中へ歩みを進める。

「気候は緩やかといっても少し寒いですね」
「そうだな。私の上着を着るか?」
「いえ、顔が寒いだけなので」
「ふむ·····フェイスベールがあっても寒いか」
「この生地は薄いですからね」
「確かにそうだな」

約三年間いたあの国は雪国で四季は無かった。
久しぶりの秋という季節はイチョウや紅葉···色んな木々が紅葉してとても美しい。

「ルイス」
「はい」
「昨日頑張っていたとアンナ達から報告は受けている。褒美は何が欲しい?」
褒美··········。
「なら、四年前からの·····テオの事を教えて下さい」
「私の?聞いてもつまらぬぞ。それに、それは褒美にはならぬ」
「そんな事ない!オレはテオの事が知りたい·····沢山知りたいんです」

オレが知らない貴方を知りたい。
皆は知っているのにオレだけが知らない·····。
テオからではなく他の人からテオの事を教えて貰うのは何故か寂しい気持ちになる。


「ふむ···············何処から知りたいのだ?」
歩いていた先で大きい岩を見付けるとテオはオレを膝に載せた状態で座る。
「グルファ国が滅ぼされた時から、」
「分かった」
そこからテオは四年前の事を話し始めた。
オレの妹を人質にされた状態でダイランに刺され、剣の呪法が原因で昏睡状態だった事···その半年後にヴォーガ国を攻めた事を話す。
しかし、聞いていて腑に落ちない········。

「ダイランは···テオがその時殺したんですよね?」
「ああ、確かに殺した。串刺しにしてな」
「何故オークションにダイランは居たのでしょうか···」
テオが殺したというなら間違い無くそうしている。
なのにダイランが生きているのは妙だ。

「分からぬ·····あの日、もう一度串刺しにしてやったのに奴はそれでも生きていた」
「うーん、、怖いですね···なんか化物じゃないですか」
二度も串刺しにされてそれでも生きているダイラン··········有り得ない事だ。 
「ああ。まさに化物だな。それに·····奴は必ずまた来る。その時までに奴の秘密を暴かなければならない」
「そうですね。オレも微力ながら手伝います。奴に·········オレは何も返せていない」

少し前までは諦めていた。
こんな状態では復讐は出来ないと·····。
しかし今は違う。
必ずダイランに一矢報いてみせる。
家族や民の分、それに自分が受けた苦痛をッ

そう思っていた時、、、
テオがフェイスベールをずらしてキスをしてくる。

「テオ?」

「私の前で奴の事ばかり考えるな、妬けてしまう」
「妬けるって·····ダイランは憎い相手ですよ」
「そうだとしても、ルイスの前には私がいるだろう·····私の事だけ考えていれば良い」と、不思議な事にテオは拗ねている。
八歳も年上なのにまったくこの人は·····。
「はぁ、、テオは変な所で子供ですね」
「むぅ··········何年もお前だけを愛しているのだ。仕方無いだろう」
「そうでした。三年間もオレを探すなんてテオの執着が凄いです」
「分かっているのなら早く私に惚れろ」
「それはテオの努力でしょう」
「むっ、そうだな」


「······························。」


そう···············。

依存心では無いとオレはまだはっきり言えない。
だから貴方にまだ好きだと言えない。
でも、知りたいとか大切なのは間違いなくて·····。

もう少しだけ待って欲しい、、、、

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