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一章

【伝言】

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此処に来て二週間が経った。
昼食は中庭の中央にあるガゼボでとの事でオレは獅子王にお姫様抱っこされて向かっている。

通路にいる侍女や執事、貴族が獅子王を見ると立ち止まって頭を下げ、通り過ぎて少しすると、
「あの方が噂の?」
「寵愛されているそうよ」
「ご執心なんですって」
と色々話していた。

「すっかり噂のど真ん中ですね」
ハドラさんが困ったように言う。
「別に構わない。危害が無ければな」
「そうですね。あ、義足と義手に付いての報告は如何しますか?」
「部屋に戻ったら聞く」
「畏まりました」

「お腹空いたなルイス」
真剣な表情から優しい表情に変わった獅子王が話し掛けてきて、オレはそれに対して頷く。
「そろそろ庭が見える筈だ」
長い通路を抜けて外に一歩踏み出すと、そこには広大な庭があり、色んな種類の薔薇咲き乱れている。
「!」
凄く綺麗─────·····
こんなに綺麗に管理された庭園を見た事がない。

「あ、テオ様っ」
薔薇に水やりをしていた熊科の獣人の大男が此方に気付き向かって来る。
「ユート、今日も庭は素晴らしいな」
「有難いお言葉です。で、其方の方は?」
「ルイスだ。ルイス、庭師のユートだ」
オレはユートさんに頭を下げる。

「噂のルイス様ですか。今日は此処に何用で?」
「素敵な庭だからな。ガゼボで昼食をしにきたのだ」
獅子王の言葉に嬉しそうに笑うユートさんは、
「そーですか!そーですか!自慢の庭ですからね。是非お楽しみください」
「そうだ·····出来たらで構わないから薔薇を何本か譲ってくれないか?部屋に飾りたい」
「畏まりました。後でハドラ様にお渡しします」
「ありがとう」
会話が終わりユートさんとそこで別れた。


「ユートは植物に対してはスペシャリストで基本的には優しく良い奴だ。しかし、無遠慮な者が庭を荒らそうとすればかなり恐ろしい事になる。まあ、ルイスは何も問題ない事だがな」と、説明された。
「私から補足があるとすれば、幼少期にテオ様の兄上であるスデンソン様が血祭りにあった、という事くらいでしょうか♪」と、ハドラさんは小さく笑う。
「!」
ち····血祭り··················。
あの優しそうな方がそんな事を???
「はぁ········あの人は救いようが無いからな」と、自身の兄に対して獅子王が呆れている。

薔薇園の中心に白いガゼボが建っていた。
何処かの物語に出てきそうで妹や姉上が見たらさぞ喜んだだろう。

椅子に座って周りを見ると、どれもユートさんが頑張っているのか素晴らしい薔薇ばかりで匂いも凄く良い。
「ハドラ、昼食の準備を」
「畏まりました」
ハドラさんは昼食を準備する為、何処かへ行ってしまった。

「ルイス、紙とペンだ」
何処から取り出したのかいつの間にか机には会話用の道具が置かれている。
『凄く綺麗ですね、驚きました』
「ああ。自慢の中庭だからな」
『はい。家族にも見せたかったです』
姉上が生きていたら絶対に見せたい。
「····················そうか。なあ、ルイス」
真面目な表情で獅子王がオレを呼ぶ。



「お前に·····カトルからの伝言がある」

「、」

カトル············?


今、獅子王はカトルと言ったのか?


オレが殺めてしまった大切な弟·····。
何故、何故···獅子王からその名前が出る???
何故知っている?

何故?????

オレは隣に座る獅子王の衿を掴み、睨んで口を開く。

「─────?」

「───、─────??───?」

「ルイス、落ち着きなさい。私はお前があの城から居なくなった日、ダイランを殺す為にヴォーガ国と戦争をしたのだ」
「!」
「そして地下でカトルに会った」
「·························。」
獅子王の言葉に衿から手を離す。

「カトルはその時微かに生きていた。しかし、あの状態では人として生きるのは無理だと判断し··········私が殺した。お前が殺したのでは無い。私が殺した後燃やしたのだ」

「·······················」

「その時の·····カトルの最後の言葉は【兄様、大好き】だ」

「···············──、──、、────·····─、──···──、·····────···」

カトルを思い出し、目には涙が溢れてボロボロと流れだす。
双子の弟でいつもお調子者だったカトル。
勉強が大っ嫌いで先生達から度々逃亡し、オレが剣の練習をしようとするといつも後ろをついてきて一緒に練習した。
お前は乗馬が本当に上手く馬に懐かれていたな、、、
ヴォーガ国の城でも代わってやれないオレが謝ると『兄様、僕は大丈夫だ』と言って··········。

カトル·····カトルカトルカトルカトルカトルカトルカトルカトルカトルカトル···

「─────、───···─────」

ごめんッ  、ごめん·····ごめんッ 守ってあげられなくて···ごめん ッ
助けられなくて·····辛く、苦しい事をさせてしまった。
痛みが無いように殺す事も出来なかった··········どうしようもない兄で本当に本当にごめん、、、


カトル─────···ッ


「···································。」


「伝えるのが遅くなり、本当に申し訳なかった···。だが、最後までカトルはルイスの事が大好きだったのだ。それだけは知っておいて欲しい」
そう話す獅子王も辛そうで、
「カトルを殺したのは私だ。だから、恨まれても憎まれても仕方が無いと思っている。お前は·····私を殺す権利がある」と、いきなり机の上に自身の剣を置く。

「!!?」

···············は??
何を···言ってるんだ·····?

やめてくれ·····。

獅子王は、、     テオは  
オレの代わりにカトルを楽にしてくれたんだ。
殺す権利とか憎むとか恨むとかそんな馬鹿な事を言うなッ!!!!
言わないでくれッ


「─────!─────!」
ふざけるなッ!  そんな事言うな!!!
オレは音が無い声でテオに怒鳴る。
「·····ハドラやアンナ達には一応話してある。私をルイスが殺しても罰しないように国外に逃がすと。だから気にせず殺してくれ」
「──!────·····!?────!!!」
何言ってんだ!!!
殺す?オレが貴方を?
助けてくれた貴方をオレが憎んで殺せるとでも?

出ろよ!
何で出ないんだよッ
このままじゃ誤解されたままになる!!
それじゃ駄目なんだよッ!!!!

「遠慮せすに胸を刺せばいい」
「~~~~~~~~  、  」

何で大切な時にオレはいつも···ッ

「──·····────!」

いつも·····いつもいつもいつも!


「───!───────····!!」



いつもッ


い つ も ッ ッ !!!!


「──────────··ぁ        ········る" ····· ッ な 」

気付いたらテオの胸ぐらを掴んでいた。
「恨"む"とか"ッ!!憎"む"とか!!ころ"ずとがそん"な"悲しい"事いうな"ッ!!!!!テオ"!!オレ"は·····う"ッゲボ···っ  ゴホッ····ぅ···ゲホッゴホッごほっ···げほげほ··」
久しぶりだったから声の音量を間違え大声で怒鳴っていた。
声は出たのに咳が止まらない··········。
呼吸が苦しいッ

「  ッぅ 、  、、」


苦しい─────·····


「ルイスッ!!!」
意識が途切れそうな時·····テオの泣きそうな声が聞こえた。

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