獅子王は敗戦国の羊を寵愛する

十雲 暁@関係性自論6:r18c_う3

文字の大きさ
上 下
17 / 59
一章

【部屋】

しおりを挟む
だだっ広い部屋に獅子王と二人·····。
何故か落ち着かない、、、、

「さてと、ルイスお風呂に入ろうか」
「!」
『テオとオレで?』
「?、当たり前だ。ルイス一人なんて心配だからな」
『確かにそうですね』
執事を呼んでくれると思ってたから獅子王の発言には驚いた。


獅子王はオレをお姫様抱っこして部屋に隣接する浴室へ向かうとオレの服を全て脱がし、次は自身の服を脱がしていく。
「·························。」
オレは·····筋肉が無くなり、栄養が足りていない貧相な体つき。
獅子王は無駄な脂肪が無く、綺麗に引き締まった身体をしている。

二人で戦っていた頃、本気で戦っていないと思っていたが既に体格に差があり過ぎる。
そもそも勝負になどならなかったのだろう·····。
獅子王が本気なら···オレはあの時、初めて会った時に死んでいた。。。

「ルイス、入ろうか」
浴室も大きいかと思ったが一人が入るのに少し余裕がある程の浴槽で意外だった。
最初は頭と角、耳を洗われる。しかし、めっちゃくちゃ気持ちいい♪
マッサージを受けている様な気分になる。

「どうだ気持ち良いか?」
「♪」
オレは獅子王の問いに頷く。
「そうかそうか、良かった」

頭を洗い終わり次は身体を洗われるが石鹸からは花の匂いがした。
薔薇じゃなさそうだし、何の花だろう?
獅子王の手で首や肩、胸板·····お腹、背中を洗われるが何故か手が止まる。
「?」
「ルイス·····その、、、身体は支えるから下半身は自分で洗うか?」
「~~~~~~~~~!?」
獅子王が顔を真っ赤にしながら言うから、オレもつられて顔が凄く熱いッ。


「·························。」


身体を支えられながら左手で下半身を洗っていく。
「今後もこんな感じで良いか?」と、獅子王に聞かれてオレは頷いた。

髪と身体を洗い終わるとオレは浴槽に入れられるが、有難いことに左側に手摺があったのでそれを掴む。
これでバランスを崩しても簡単には溺れて死なずに済みそうだ。

獅子王は此方を気にしながら自身の髪や身体を洗う。
オールバックしか見た事がなかった髪が今は流れる様に落ち、ウェーブがかったミディアムヘアに変わっている。
確かに年上だがオールバックの時はもっと年上って感じがしていて·····今は年より少し幼く見え、なんというか色っぽいというか艶っぽい?

「どうしたルイス?私の顔を見て」
「!?」
確かに見過ぎていた、、、、
オレは慌てて首を左右に振り視線を変える。

「···································。」

少しして、獅子王も向かい合う様な形で浴槽の中に入って来た。
「ふぅ·····やはりお風呂は良いな」と話し掛けられてオレは頷く。
しかし、獅子王の身体には気になる跡があり手摺を持っていた手を離して獅子王に近付く。
「ルイス?動いたら危ないぞ」
不思議そうにする獅子王に支えられてもオレは気にせずに左手で獅子王の右肩の傷に触れた。


···············間違いない。

これはオレが付けてしまった痕だ。
「····─────」
ごめんなさい、と心の底から謝る。
傷付けた相手なのに何故、獅子王はオレを気に入ったのだろう?こんなに良くしてくれるのだろう、、、

「もしかして···私に謝ったのか?」
「······························。」
まさにその通りだったので頷く。
すると「気にするでない。それにな、この傷は良いのだ」と、上機嫌に言われてしまった。
「?」
傷が残ったのに良いと言う獅子王が理解出来ない·····。


お風呂から出ると、短パンと少しブカブカなシャツを着せられた。シャツはボタンが一つも無く、胸元から鎖骨にかけて紐が交互に続き、獅子王によってリボン結びをされる。
「うむ、調度良いな」
オレの着替えが終わると獅子王も着替え始めた。
下は長ズボンを履き、上は同じ様なシャツを着ているが紐は結んでいない。

「さて、ベッドに向かうぞ」
オレをベッドに座らせて獅子王は手に小石を持つ。
何故、石なんだろ?
用途が分からない·····。
疑問に思っていると突然温かい風が首の辺りに吹いてきた。
「!?!」
オレは驚いて風は何処から?っと風が来ている方を見るとあの石から出ている。

「はははっ、これも魔道具だ。髪が乾かせて便利だろう♪」と、オレの行動に獅子王は笑う。
奴隷になっている間に色々変化していて全然分からない事だらけだ。。。
オレの髪を乾かし終えると次は獅子王が髪を乾かし始める。

『テオは髪はおろされないのですか?』
「おろした方が良いと思うか?」
獅子王に尋ねられて首を縦に振る。オレは髪をおろした方の獅子王の方がよく似合っていると思う。
「そうか。ではそうしよう」
そう言うと前髪を七・三で分けて乾かしていく、、、
乾く頃には印象が変わって驚いた。

「似合うか?」
『はい、髪を上げてるのも似合いますが、おろしている方がオレは好きです』
「すっ·····、、いや、似合うなら良いのだ」と、頬が赤く染まる。
「?」
「きょ、今日は遅いからな。歯を磨いて寝よう」
『はい』



◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆


「·························。」

大きいベッドの筈なのに、獅子王はオレを向かい合う様に抱き締めながら寝ている。
それに、異常な程の防壁魔法を施してある。
此処は獅子王の城で自分の部屋なのに·····。

「··········寝れぬのか?」
「?!」
声がして上を向くと獅子王と目が合う。
「寝れないのなら明日の予定の話でもしようか」と言われオレは頷いた。

「明日は仕立屋が来る。勿論ルイスの服を仕立てて貰うのだ。その間、私は議会があるからハドラに居てもらう。終わったら城を案内しよう。庭師が頑張って手入れしている中庭があるのだが、私は─────·····」
獅子王は楽しそうに話していて、聞いているオレも想像するだけで明日が楽しみになる。
仕立てに散歩、診断結果にご飯、ティータイムの時に食べる物·····明日が早く来ないかなと思えた。


「ルイス」
「?」
「何があっても指輪は外さないでくれ。例えそれが誰かを人質にされたり脅されたとしても、だ」
真面目な表情で獅子王は言う。
「───」
はい·····と、オレは獅子王の目を見て頷いた。
「本当に良い子だな。私の一番のお願いをきいてくれるとは」
真面目な表情が優しい表情に変わる。

「、」

·········まさか獅子王にとっての一番のお願いが、オレに対しての事なんて思いもしない。
だって、指輪には獅子王の魔法が幾つも施してあると言っていた。
きっとそれはオレを守る為のものだ。


大事にしてくれようとする獅子王の事を知る度·····なんか胸の辺りがムズムズする、、、、
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

処理中です...