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一章
【オレ】
しおりを挟む「──────···」
目が覚めた。
今は恐らく八月··············と、いってもオレがいるこのガルデ国は四季が無くずっと冬だ、、、
一年の殆どは雪が降っている。
だから今が何月なのか正確な月が分からない。
此処に来て三年は経ったか···恐らく今のオレの歳は十九歳、、、、
「·························。」
天井付近の小さな柵格子の口を見れば、今日も今日とて外は雪が降っていて凄く寒い。
本来なら暖炉のある部屋で過ごし、温かい料理を食べ、温かい服を着て家族と過ごすのだろうが、
奴隷のオレに与えられているのは地下に幾つかある内の二畳位の牢屋の様な部屋、麻の薄い布·····それと、逃げられない様に付けられている首輪のみ。
今のオレは逃げる為の足も無ければ腕も片腕しかなく、全くもって無意味だ。
それに··········逃げる気は無い。
生きると約束したから。。。
今日も雪が積もるのかと考えていると、この部屋に続く階段から足音が耳に入ってきた。
「来た·····」
「ヒッ、」
オレ以外の奴隷も音が聴こえた様で怯えた声を出す。
··········今日は誰が生贄になるんだろうか?
オレ?それとも他の人?
足音は近付き、カツン、カツン·····と音が響き、、、そして止まる。
「旦那様が来られる。失礼の無いように」
抑揚の無い声で旦那様の執事がオレに言う。
「·························。」
どうやら今日はオレが生贄になる日らしい。
旦那様はヤル時しか此処には来ない。
加虐趣味が有名らしく、売られて直ぐ両足を太腿から切断された。
切断されたオレは···あまりの痛みに藻掻き苦しむが旦那様はオレの頬を殴り『もっと苦しむ表情を』と、足から血が出ているオレをご満悦の表情で犯した。
·····ほんと、よく失血死で死ななかったなと今でも思う。
此処に居る性奴隷達の末路はどれも悲惨で、隣の部屋にいた奴は売られてきた時は五体満足だった。
なのに·····次第に両手・両足を失い、
両目をくり抜かれ、耳や角、尻尾までも引きちぎられて最後は剣でお腹や胸をこれでもかという位刺されながら犯されて死んで逝った。
オレは·····隣の人が壊されていくのを唯聴く事しか出来なかった。
···············良い奴だったのに、、、、
他の人が言っていたが今までの性奴隷達は大体同じ最後を迎えるか、その前に耐えられず死ぬと。
現在·····自分に残っているのは両目と左腕、あとは左の角、耳、尻尾。
何時失っても不思議では無く、三年前に此処に来た時·····オレは既に右腕・右の角は折れ、声は失っていた。
此処に来る前に居た国でそれ等は奪われたからだ。
そう、何もかも──────······
「ルイ」
「!」
突然呼ばれた声に反射的に身体が震え、我に返る。
声があった方を見ると、小太りで身長は170センチ、歳は四十代半ばの食肉目のハイエナ科の男·····旦那様がこの牢の様な部屋へ入って来た。
しかし、手には乗馬鞭を握っている。
·····今からやられる事を考えると自身の意志とは関係無く冷や汗が大量に出てきて喉がカラカラに渇いた。
そんな怯えたオレの表情が気に入ったのか、旦那様は歪んだ笑みを浮かべ、
「ルイ、今日はこれを試そう」と言う。
◆┈┈┈┈┈┈◆
「! 、────、 、、!?!──···~~~~~~~~~!!!!! 、 」
バシッ!!
バシィッ!!!!
うつ伏せの状態で、何度も···何度も何度も、、何度も鞭で背中を叩かれている。
叩かれる度激痛で口を開くが声は出ず、代わりに背中からは赤い血が流れて床にボタボタと落ちる。
多分·····かなり裂けているだろう。
「ほら、もっと·····もっとだルイッ!!」
旦那様は興奮しながら、鞭を握る手に一層力を込め、オレの背中や尻に向けて叩き付ける。
「~~~~~!!!」
その痛みに奥歯をギリギリと噛み締め、必死に舌を噛まない様に耐えた。
こんな事を数回した後、ズボンのチャックを下げる音が聴こえてきて、うつ伏せのまま倒れるオレの後孔に太くて大きいモノがあてられ、無遠慮に一気に奥まで押し挿れられる。
「──── 、 、、 ─···─ 、 ──····、──、、── ───···」
肌と肌がぶつかる音が部屋中に響き、オレは石で出来た床に爪を立て·····背中はヂクヂクと痛む。
こんな行為気持ち良く無い。。。
唯、痛くて苦しいだけだ。
でも、あの頃よりは何倍も何千倍もマシ。
行為中···オレは過去の事を思い出す。
◆┈┈┈┈┈┈◆
オレには頭脳明晰で武力に頼らずに国を治める王·····父上がいて、
普段は優しいのに間違った事をすると厳しく叱ってくれる母上や三つ歳が上でお転婆な姉上、四歳下で泣き虫な妹·····それに、やんちゃばかりしていつも困らせる二歳下の双子の弟達がいた。
民も農業や家畜を営み、市場は何時も活気に溢れ、小国ではあったが賑やかで良い国。
皆、皆·····本当に大好きだった。
父上が治める国を守りたいと···王を継いだ後も皆が住みやすい良い国にして行こうと思っていた·······己の力がここまで無力だと分かるまでは。
全てが狂い始めたのは獅子王が治めるライルド帝国との同盟。
父上は条件も良い事からこの同盟をとても喜んでいた。
噂に聞く獅子王は次々と諸国を自身の領土とし、戦略に足け知徳を兼ね備えた王だと。
初めての話し合いで噂の獅子王を見たが、
黄金色の髪に赤とオレンジが混じった瞳のツリ目をしていて·····神が創造した石像の様な見目麗しい男。
姉上や妹が見たら一目惚れしてしまうのではないだろうか、、、
まあ、オレには関係ないが。
二回目以降の話し合いは獅子王は不参加となり、同盟を担当する者と順調に話し合いを進めていた。
しかし突如、やってもいない罪を擦り付けられ、
此方の言い分を聞いては貰えないままライルド帝国と戦争になる。
父上はこの事にひどく頭を抱え、母上は毎日の様に泣き、姉上は負傷者の手当てを手伝いをしに向かう日々。
妹や弟達は『いつ終わるの?』と戦争から帰ってくる度、オレに聞いてきた。
『大丈夫だ。もうすぐ終わる』
こんな安っぽい言葉しか言えない。
獅子王は··········剣を交える度、何故か嬉しそうな表情を浮かべている。
オレはそれが気に食わない。
こんな戦争何処が楽しいというのだ?
皆悲しみ、死んでいくばかりじゃないかッ!!
しかも·····あれは本気では無く完全に舐められている。ムフロンだから本気でなくとも勝てると思われているのか?!
屈辱だッ。
知徳を兼ね備えた王だと?笑わせる。
今回の被害報告を受けると··········
優しくしてくれたパン屋のおじさん、
力比べでよく賭けをして負けた酒場の人達、
オレと共に剣術・魔法を学んだ友·····。
皆死んでしまった。。。
分かってはいたが、大国と小国とでは力の差は圧倒的で、父上はこれ以上被害が拡大するのに心を痛め、家臣の反対を無視してライルド帝国に降伏した。
敗戦国となった我が国はライルド帝国からの使者と話し合いをする日程が決まり、それ以上の被害は無くなる。
そうなる·············筈だった。
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