上 下
1 / 45
一章

【序章】

しおりを挟む

はじめまして(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”
初のファンタジー獣人BLです!

イラストや漫画も書きながらなので
不定期更新ですが応援宜しくお願いいたします。







私は、、、

奴との戦いの日々を死ぬ迄忘れる事は無いだろう。


あの意思の強い目、髪、声·····全てが狂おしい程愛おしい。
唯一付けられた右肩の切り傷が毎日毎日疼き、触れる度·····思い出しては腹心の部下に居所は分かったかを聞く。

部下も毎度の事なので呆れながら、
「まだ掴めておりません。そろそろ諦めても良いのでは?」と言う始末だ。
「奴は必ず生きている。引き続き捜索してくれ」
「·····畏まりました」

このやり取りも···もう何度目か、、、、

今では『亡霊に取り憑かれた王』とまで部下や貴族、民達の中で噂されている。
皆、私が戦のし過ぎで頭がオカシクなったとでも思っている様だ。
·····まあ、オカシクなったのは認めよう。
世継ぎも作らず、生きているのか死んでいるのか分からぬ人物を数年間探しているのだからな·····。



「全員さがれ」


全員を執務室からさがらせて書類に目を通す。
「····························。」
我が国に住む者達、国々を行き来する商人達には平民から貴族関係無く、一人一つのナンバーを与え、死ぬ迄ナンバーで管理している。
だからこそ最初の一、二年は自身の国を調べ尽くした。
しかし·····奴は見付けられず、最近は近隣の国々に部下を潜入させて調べてはいるが、手掛かりは一向に無い。

部下の言う通り、この気の遠くなるような事をさっさっとやめてしまえば良いのに、それでも私は飽きもせず奴を探し続けている。
早く逢いたい、触れたい·····抱き締めたい。



「お前は·····何処にいるのだ?」



◆┈┈┈┈┈┈◆


お前と交わすのは言葉では無く冷たい鉄の剣。
互いが互いの国の為に戦わなければならぬというのに、私は国の民よりお前と殺り合う瞬間が愉しく、何物にも代えがたかった。

しかし、許せ。
殺り合う、と言っておきながら、
私は本気を出せていないのだ。
先祖がムフロンのお前では、先祖がライオンである私とでは力の差が歴然。

それをお前に伝えれば、きっと、、、
『侮辱だ!!先祖なぞ関係無いッ!』と吠え、
怒りながら此方へ刃を乱暴に向けて来るだろうな。
お前はそういう奴だ。

戦場で初めて刃を交えた時なんか、
我が兵を次々と斬り倒し、器用に火の魔法を使って己より大きい獣人にさえ臆すること無く、
敵の王である私の方へ向かってくる姿は、血と火の粉の中舞い踊る妖精の様で実に美しかった。
私は思わず「···············美しい···」と口に出してしまう程に、、、、


一人で百人は切っただろう。
疲労と軽い怪我、荒い息を吐き、
薄黄色の目が私を捉えた途端、疲れを忘れたかの様に赤茶色の髪をなびかせて此方に向かって来る。

「ははっ、じゃじゃ馬な奴め」

奴がいる小国グルファ国はムフロン一族が納めている。
この国は農業や家畜が盛んで戦場とは無縁だ。
当初、同盟という形で上手く話が纏まりそうであった。が、この件を担当していた私の部下が殺され、同盟の話は決裂してしまった。

そういえば、、、
同盟の話をしている間も奴だけは此方に敵意剥き出しだったな。
あの時は変な子供だと思い、差程興味は無かったが。

私が興味があるのは強い奴のみ。
強い奴と言っても、剣や魔法が強い奴だけでは無い。
口が回る奴、心が強い奴、頭の回転が早い奴·····。
『強さ』の種類は色々だが、
私はその中でも、心が強い奴が好きだ。

今、戦場で刃を交えているムフロンは、私が知っている『ムフロン』では無い。
本来·····ムフロンは戦場には立たず、農業やお店に立っているものだ。
なのに奴は、弱い筈のムフロンがこの戦場を駆け巡り此方へ向かって来る。

(·····面白い)

この嬉しい予想外な事に、知らず知らずの内、口元が喜びで歪み、鞘から剣を抜くと直ぐにキーンという高い音と共に火花が散った。

「くッ、テオ貴様ァ”ァ”ァ”ッ!!!!」

まだ大人になりきれていない青年のムフロンが怒りを露わにして怒鳴るが、
奴は·····体格差や実力の差がある私と今からどんな戦いをしてくれるのか想像するだけで胸が踊る。


「フッ、待ち侘びたぞルイス」




この時から何度も戦場にてルイスと剣を交えた。
会う度、奴は面白い戦法を用いり私はそれが楽しく、ルイスが私に傷を負わせた時なんかは変な事に幸福を感じた。
しかし、数ヶ月続いた戦も突如終わりを告げる。

兵力の差が圧倒的で、彼処から降伏を伝える使者が来たのだ。
無論、私は承諾した。
無駄に両兵の犠牲を出さない事が一番だからな。

そもそも、あの国を植民地にする気は無かったし、酷い待遇を与える気も無い。
本来の目的は食料の自給率を上げる事。


私は『王』だ。

良き王でなくてはならない。
父や祖父が治めた様に民が暮らしやすい国を作らなければならない。
奴と戦うのは好きだが、王の仕事を放棄して迄やることでは無い。
国を豊かにする為に『私』はいる。


今後の話をする為、ルイスの父である現王と第一王子のルイス、それと数名の部下が我が国に来て会談する予定が決まった。

そして、、、
その日が私にとって憎々しい日となる。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。

天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。 しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。 しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。 【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

処理中です...