刻の唄――ゼロ・クロニクル――

刻の唄――ゼロ・クロニクル―― 第一部

第三章 犠牲の軍隊後編 24

　鋼鉄の野獣たちは、物言わぬ骸となって頽れ行く。
　見る間に機械兵マキナミレスユニットが減っていく。時間経過と共に僅かずつではあったが数を減らしていった機械兵マキナミレスユニット群による攻撃の飽和を、反撃が上回り始めたのだ。ストレール・キャバリアー一人一人に殺到していた火線が減り、当然それは防御に専念させていたキャバリアーに行動の自由を与える結果となっている。
　密度の減少した攻撃に今もキャバリアー十数人が、その間隙を突き多脚型や人型の機械兵マキナミレスユニットを精鋭たる第一エクエスの実力を持って一撃で一体一体を屠り一人で何体も撃破して行く。現在進行形で減っていく火線に、今まさに拘束戦術の戦線が崩壊しようとしていた。
　外骨格Ｅスケルトンスーツのバイザーに隠れた端麗な美貌に焦燥を滲ませ、サブリナは音律のある声を痛切に響かせる。
「殲滅の光弾アニヒレート砲台無力化は、まだなの？　成功なら、もう結果が出ている筈。一室を占拠してＡＩマザーの優先権コードをハッキングし、ボルニア帝国軍を最上位に書き換えればいいだけ。リザーランド卿が居るんだから、制御ルーム占拠はそう難しくない筈。第二エクエス以上のキャバリアーだって、多少は居る。基地に潜入した奪還兵団に、何かあったの？　ヴァレリーお嬢様……こちらはもう、持ち堪えられない」
　榛色の瞳にヴァレリーは、命を持たぬ鋼の獣たちによる包囲網が崩壊していく様に、今後待ち受ける一方的な蹂躙を幻視させた。