刻の唄――ゼロ・クロニクル――

@星屑の海

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刻の唄――ゼロ・クロニクル―― 第一部

第三章 犠牲の軍隊後編 6

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「不味いぞ、あれは。この尋常じゃない気配は」
「ああ。あの巨岩の裂け目の前に、空隙が生じている。大技が来る!」
 危機感を募らせたエレノアの声に応じつつ、外骨格Eスケルトンスーツの汎用推進システムからぱっと燐光を散らせ異様を放つ空中に出現した真空の壁へと向かう。が、突然それが弾けた。空間の裂け目から九つの猛獣めいた竜巻が向かってきた。
 太刀が強い光輝を帯びパワー・ブレイドを発動し、秘超理力スーパーフォースの巧緻を尽くしたアジリティでソルダ諸元スペツクのクラス・スピードAをSにクラスアップ。外骨格Eスケルトンスーツの機動にムーブを併用し加速させ、零は叫んだ。
「エレノア! 右の五つは俺が。後は頼む!」
「分かった。零、全て消すぞ!」
 言うや赤い騎士甲冑ナイトアーマーが、眩い輝きを放った。
 スカイスクレイパーをエレノアが発動させたところを視界の端に捉え、既に神速に達した零は九つの猛獣めいた――さながら竜のごとき竜巻の一つを、秘超理力スーパーフォースの強い光輝を放つ太刀を両手で構え、その刹那刀身が霞んだかと思うと空中に出現した無数の刺突で消し去った。冥王剣と呼ばれる本来の零に尤も馴染んだ流派。その、奥義一歩手前の技。技自体はあまり知られていないが著名な剣技で、使用する者が限られるため詮索を避けたい今は人前で使いたくない技。が、今はそのようなことを気にしている時ではなく、幸いエレノアは見ていない。
 瞬間、その場から零は消え失せた。否、そう見えた。次に残像を捉えたときには、二つ目の竜巻を。再び消え、再び現れたときには三つ目を。それを五度繰り返し、五つ全てを切り飛ばした。
 視線を巡らしたとき、眩い輝きが空を切り裂き残った竜巻を正面から穿ち消し去った。
  艶のあるメゾソプラノが、確信めいた口調で問いかけた。
「そっちも、片付いたな?」
「ああ。輸送型機械兵マキナミレスユニットから、奴らを引き離そう。今の攻撃もそうだが、さっきの狙撃も侮れない」
 応えつつ零は外骨格Eスケルトンスーツを巨岩の裂け目に向かわせ、そうだなと応じるエレノアも倣い零の隣に並んだ。
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