35 / 69
刻の唄――ゼロ・クロニクル―― 第一部
第三章 犠牲の軍隊後編 6
しおりを挟む
「不味いぞ、あれは。この尋常じゃない気配は」
「ああ。あの巨岩の裂け目の前に、空隙が生じている。大技が来る!」
危機感を募らせたエレノアの声に応じつつ、外骨格スーツの汎用推進システムからぱっと燐光を散らせ異様を放つ空中に出現した真空の壁へと向かう。が、突然それが弾けた。空間の裂け目から九つの猛獣めいた竜巻が向かってきた。
太刀が強い光輝を帯びパワー・ブレイドを発動し、秘超理力の巧緻を尽くしたアジリティでソルダ諸元のクラス・スピードAをSにクラスアップ。外骨格スーツの機動にムーブを併用し加速させ、零は叫んだ。
「エレノア! 右の五つは俺が。後は頼む!」
「分かった。零、全て消すぞ!」
言うや赤い騎士甲冑が、眩い輝きを放った。
スカイスクレイパーをエレノアが発動させたところを視界の端に捉え、既に神速に達した零は九つの猛獣めいた――さながら竜のごとき竜巻の一つを、秘超理力の強い光輝を放つ太刀を両手で構え、その刹那刀身が霞んだかと思うと空中に出現した無数の刺突で消し去った。冥王剣と呼ばれる本来の零に尤も馴染んだ流派。その、奥義一歩手前の技。技自体はあまり知られていないが著名な剣技で、使用する者が限られるため詮索を避けたい今は人前で使いたくない技。が、今はそのようなことを気にしている時ではなく、幸いエレノアは見ていない。
瞬間、その場から零は消え失せた。否、そう見えた。次に残像を捉えたときには、二つ目の竜巻を。再び消え、再び現れたときには三つ目を。それを五度繰り返し、五つ全てを切り飛ばした。
視線を巡らしたとき、眩い輝きが空を切り裂き残った竜巻を正面から穿ち消し去った。
艶のあるメゾソプラノが、確信めいた口調で問いかけた。
「そっちも、片付いたな?」
「ああ。輸送型機械兵ユニットから、奴らを引き離そう。今の攻撃もそうだが、さっきの狙撃も侮れない」
応えつつ零は外骨格スーツを巨岩の裂け目に向かわせ、そうだなと応じるエレノアも倣い零の隣に並んだ。
「ああ。あの巨岩の裂け目の前に、空隙が生じている。大技が来る!」
危機感を募らせたエレノアの声に応じつつ、外骨格スーツの汎用推進システムからぱっと燐光を散らせ異様を放つ空中に出現した真空の壁へと向かう。が、突然それが弾けた。空間の裂け目から九つの猛獣めいた竜巻が向かってきた。
太刀が強い光輝を帯びパワー・ブレイドを発動し、秘超理力の巧緻を尽くしたアジリティでソルダ諸元のクラス・スピードAをSにクラスアップ。外骨格スーツの機動にムーブを併用し加速させ、零は叫んだ。
「エレノア! 右の五つは俺が。後は頼む!」
「分かった。零、全て消すぞ!」
言うや赤い騎士甲冑が、眩い輝きを放った。
スカイスクレイパーをエレノアが発動させたところを視界の端に捉え、既に神速に達した零は九つの猛獣めいた――さながら竜のごとき竜巻の一つを、秘超理力の強い光輝を放つ太刀を両手で構え、その刹那刀身が霞んだかと思うと空中に出現した無数の刺突で消し去った。冥王剣と呼ばれる本来の零に尤も馴染んだ流派。その、奥義一歩手前の技。技自体はあまり知られていないが著名な剣技で、使用する者が限られるため詮索を避けたい今は人前で使いたくない技。が、今はそのようなことを気にしている時ではなく、幸いエレノアは見ていない。
瞬間、その場から零は消え失せた。否、そう見えた。次に残像を捉えたときには、二つ目の竜巻を。再び消え、再び現れたときには三つ目を。それを五度繰り返し、五つ全てを切り飛ばした。
視線を巡らしたとき、眩い輝きが空を切り裂き残った竜巻を正面から穿ち消し去った。
艶のあるメゾソプラノが、確信めいた口調で問いかけた。
「そっちも、片付いたな?」
「ああ。輸送型機械兵ユニットから、奴らを引き離そう。今の攻撃もそうだが、さっきの狙撃も侮れない」
応えつつ零は外骨格スーツを巨岩の裂け目に向かわせ、そうだなと応じるエレノアも倣い零の隣に並んだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
多重世界の旅人/多重世界の旅人シリーズII
りゅう
SF
とある別世界の日本でごく普通の生活をしていたリュウは、ある日突然何の予告もなく違う世界へ飛ばされてしまった。
そこは、今までいた世界とは少し違う世界だった。
戸惑いつつも、その世界で出会った人たちと協力して元居た世界に戻ろうとするのだが……。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる