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並列世界大戦――陽炎記――
missio 05 alarm 2
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廊下の端よりにちょろちょろと小走りするネズミは、ときおり確認するかのように振り返り悠希の姿を赤い目に捉えた。そのいかにも人間くさい仕草に、意思の宿りを感じてしまう。ただの齧歯類だというのに、その行動は悠希をどこか目的の場所へと導いているかのようで、つい目的は何かと勘ぐってしまうのだ。
区画が変わりそれまでと違って、一定間隔で気密隔壁の出っ張りが壁から突き出ている廊下へと差し掛かった。ときおりネズミは姿を隠し、見失う。慌て悠希は、ネズミを追って走り出すと、隔壁の陰に隠れたネズミはその出っ張りを伝って上へといつの間にか移動していた。小さく文句を、悠希は呟く。
「全く、好き勝手に動いて」
一定以上の距離を開けないよう、悠希はつかず離れずネズミを追った。ネズミは、平面から上下立体の活動範囲を得て、気ままさでもってランダムに動いた。それでも、悠希を気にかけているらしく、ときおり振り向いては悠希を確認していた。追いかけっこをしているうちに、次第に悠希はそのネズミに愛着らしきものを抱き始める。
――頭を冷やすのにちょうどいい。こんな他愛もないことをしていれば、小難しいことなんて考えない。僕は、澪のことでナーバスになってがんじがらめになっているんだ。澪は、幼馴染みだ。けど、僕が殺した澪は、人間じゃない。昔の澪じゃないんだ。なのに僕は、思念体の澪を人間のように感じてしまった。それは間違いだって思えればいいけど、どうしてか陸の顔がちらつく。澪を機械だって断じてしまうことを、許してこない――
一つ、悠希は溜息を吐いた。
――いいさ。無理に答を出さなくても。昨日の今日で、僕も感情が高ぶっているんだ。時間が経てば、正しい解釈に落ち着くさ――
奥へ奥へと進んでいったネズミは枝道で折れ、今は使用されていない大きな部屋の入り口で歩みを止めた。そこはちょうど奥まって、訪れる者の誰も居ない人気の全くない場所だった。ちょこちょこ動き悠希と正対に向き合ったネズミは、前肢を持ち上げ身を起こしまっすぐ見据えてきた。そうするとこの取るに足りない小動物に、威厳めいた風格が漂った。まるでこれから何ごとかでも告げられるような錯覚を悠希は覚え、思わず身構えてしまった。
苦笑が、悠希の端正な面に浮かんだ。ネズミが話し出す筈などないというのに、何を馬鹿なと。ところが、その束の間の安堵は裏切られる。
「やぁ、悠希」
人語を操るネズミにびくりと身体を硬直させ、心臓が止まるほど悠希は驚いた。一体何が間違ってネズミが話し出す怪異が起きたのかと疑ってネズミを注視すると、それは殆ど本物と見分けがつかないほど良くできているが、作られた人工物であることが体毛の質感からどうにか判別できた。苛立たしげな声を、悠希は上げる。
「……動物型のアンドロイド? 全く、誰かの手の込んだ悪戯か? こんなときに質の悪い。名前を知ってたから、目的は僕だ。錦か? 久留美川博士もいるから、協力を頼んだとか」
「悪戯なんて、酷いな。せっかく、悠希に会いに来たっていうのに。こんな成りだから人目のあるところでは話せなくて」
罵る悠希にネズミは、苦笑する気配をやや甲高い声に滲ませた。悠希の顔を見詰めていたネズミの赤い目が全身をなぞるように動き、感慨深く再び口を開く。
「もうすっかり悠希は大人だな。僕はあっちの世界へ行ったとき生成されたアバターを成長させずに使ってたから、大人になったらどんな姿になっていたのか分からない。六年前に悠希と別れて、直に会うのは今日が初めて。見かけたとき、悠希だとすぐには分からなかった。だけど、やっぱり昔の面影がある。昔一緒に遊んだ悠希だって分かったよ」
「一体何を言ってる? 僕のことを知ってるふりして、やっぱり五寧の悪戯なんだろう?」
問い質しつつも嫌な予感が、悠希の中で湧き上がった。こんなことを話すのは、悠希が知るある人物だけだ。けれど、悠希の理性は正常に機能している。入埜第三小隊の皆なら、事情をよく知るアデライトや寧々でなくとも、おおよそその人物と悠希の関係は知っている。だから悠希を引っかけようとすれば、このような問答を仕込むことも可能な筈だ。心が冷える。
――一体、何のつもりなんだか――
こんな真似を仕掛けた誰かにもし悪意の欠片もないお茶目な悪戯だとしても、仕掛けられた悠希にとっては心に痛みを感じるし傷つきもする。できる人物は、小隊員と芽生のうち誰か。この心ない行為は、小隊長を務める悠希にとって心にしこりを残してしまう。どうしようか思案しつつネズミを見詰めていると、小首を傾げ甲高い声音を不満げにする。
「だから、違うって。全く、疑い深いな。昔の悠希は、そんなことなかったぞ」
「なれなれしく、僕を騙そうとするな。僕を担ぎたい奴のところまで、案内してもらおうか」
親しげに話しかけてくるネズミに、悠希はじっと冷たい眼差しを注いだ。ネズミは悠希に歩み寄りながら、抗議の声を上げる。
「分からないのか? 僕だよ。加々美澪。対面するのは六年ぶりだからって、僕を忘れてしまったのかい? 酷いな」
「分かってるよ。僕を填めるために、おまえが澪の真似事を演じてるってことは」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ。僕は今はこんな成りだが、正真正銘の加々美澪だ。悠希や陸の幼馴染みのな」
「……陸のことまで……。昨日僕は、澪をこの手で殺し――破壊した。澪を構成する量子コンピューターが、ただの屑鉄になったことも確認した。ふざけたネズミのアンドロイドが、澪の筈がないんだよ」
恐らく通常のヒューマノイドやアンドロイドのようにクラウドで特化型AIが動かしているのではなく、汎用人工知能が使われているらしいネズミの会話はとても自然だ。やはり芽生が関与している可能性が高いが、パイロットである小隊員のサポートAIを用いても可能だ。困ったように、ネズミは首を振る。
「疑い深い奴だな。これが、アイギスの本体なんだよ。機械兵では活動不可能な場所での行動能力が加味されてね。最上位機種に近しい方面軍に基本一体存在する最新鋭機だから、新機構が搭載され本体が動ける構造になってる。当然、機体からの脱出にも使用できるのさ」
「そんなこと、どうとでも言える。本物の澪だって言い張るなら、証拠を見せてみろ」
誇らしげに語るネズミに、悠希はぴしゃりと叩き付けた。ネズミは、悠希の足下で前肢を持ち上げ見上げる。
「困った奴だよ、本当に悠希は。いいよ。じゃあ、子供の頃の話をしよう。僕と悠希は、陸の家へと出かけた。真面目な陸はお茶を出す母親の手伝いをしていて、リビングには僕と悠希の二人だけ。僕たちは悪ふざけしてチェストの上に飾ってあった、陸の父親自慢の陸上競技会で優勝したトロフィーを床に落として、工学クリスタルでできたそれを壊してしまった。困った僕たちは、ゴミ箱の中にそれを咄嗟に隠した」
「どうしてそれを?」
「おい、まだ話の途中だ。その日は、夕方まで陸の家で遊んで帰宅した。けれど、翌日そのトロフィーが見つかって陸の奴は大目玉。お優しい悠希は、僕の家に来てこう言ったんだ。正直に言おうってね。嫌だって僕は答えたけど悠希がしつこくて、陸の家へ行って本当のことを話して謝った。ま、怒られもせず許してもらえたけどね」
語り終えたそのネズミの話に、悠希は衝撃に目が眩みかけた。発する声が震える。
「……本当に……澪……なのか?」
「だから、そう言ってる。僕が正真正銘の澪だって、証明になっただろう」
澪を名乗る得意げなネズミを見詰め、悠希は薄ら寒さを覚えた。今朝その死に涙すら流した相手だったが、死者が蘇ったかのように感じて。再会の感動のない戸惑いの中、悠希は確信した。確かにこのネズミは、澪に違いない。
「僕に会いに来たって? 今更直接会ったって、僕たちに感動の再会なんてあり得ない。僕たちは敵同士だった。昔を懐かしんで、笑顔で語り合える筈はないんだ。何が目的だ、澪」
その機械仕掛けの小動物を澪と認識したところで、悠希は眉目を吊り上げ表情をキツくし厳しい口調で糾弾し問い質した。それを受けた澪は、ネズミのアンドロイドであるので表情は分からないが、微かに首を傾げ口調は淋しげだ。
「あんまりな言いようだね、悠希。僕は本当に君との再会を願って、敵地にまでやって来たっていうのに」
「そんな言葉に騙されるほど、僕が馬鹿だとでも。本当のことを言え、澪。そっちはそんな成りだ。その上、澪の言うとおりここは敵地。逃げ場はない」
「分かったよ、悠希。降参だ」
小さなネズミの首を振り澪は、それまでの砕けた口調を真面目なものへと変える。
「助けて欲しい、悠希。僕は、要塞都市東京に取り残されてしまった。電脳世界へ帰る手段がない。頼れるのは、悠希しかいないんだ。……陸も東京にいることは確認したけど、彼では僕の助けにはならない。頼む、悠希」
「虫がいいな。よりによって、僕を頼るなんて。戦場での僕たちの関係を、忘れたのかい? 互いに相手を殺したいと思うほど、僕たちは憎しみあっていた。それが、助けて欲しい? 冗談だよな」
真摯な態度の澪に対して悠希は、責め立てる口調で最後の方は音階を外した。悠希は、腹立たしかった。自分にしがみつくな、と。敵としてあれだけ悠希たちを苦しめた強者だったというのに自分に媚びるな、と。二本足立ちだった澪は前肢を下ろし、まるで土下座をするみたいに頭を床にこすりつける。
「まだ、死にたくない。頼む、悠希。このとおりだ。今の僕は悠希と戦った、アイギスじゃない。まるきり非力なネズミの姿だ。もう、悠希たちの強敵たり得ない。悠希から見たらゴミ同然のそんな僕は、この窮地にどうすることもできない。悠希の情けに縋るしかないんだ」
「そんな真似をするな!」
這い寄り悠希のブーツに顔を近づける澪に、嫌悪感と共に悠希は激しい怒りを覚えた。同時に、哀れに感じる。尊大さとそれを支える強さを持った敵だった澪が、恥も外聞もなく命乞いをしている。悠希が憎む比類なき悪――まるで電脳世界を代弁する存在と映っていた澪は、最早何の力もなく、悠希が倒したいと願った故郷の怨嗟と怨念に匹敵する存在ではなかった。これでは、悠希の怒りは行き場を失う。足下でうずくまる澪に、これまであった筈の憎しみはもうなかった。澪は、顔を振り上げ必死の口調になる。
「見捨てないでくれ、悠希。僕は、君だけが頼りなんだ」
「破壊したりしない。澪は、方面軍参謀機。僕一人の一存で、どうにかできる相手じゃない。ガイア軍に引き渡す。澪は自分の責任を果たすべきだ」
死に物狂いな澪に対して、悠希は冷厳な冷徹さを纏った。最早悠希が倒したいと願う強敵たり得ない澪は、感情で相対する相手ではなくなった。だから、兵士としての義務を果たそうと決めたのだ。ネズミの姿の澪は、脱兎の勢いで悠希のブーツからズボンへと駆け上り、肩へ飛び乗り必死に言い募る。
「駄目だ、悠希。幼馴染みを売るつもりなのか? 兄弟同然だった、僕たちだぞ。生き方が食い違っただけで見捨てるなんて、悠希には情はないのか? 血の通わぬ人の心を無くした演算するだけの冷徹な機械だとか電脳世界人のことを言っておいて、悠希こそ己の職分をこなすだけの感情を失った機械じゃないか!」
我が儘で自分勝手、自分の行動をすぐ棚に上げる。子供時代の悠希が知る、まるきり澪そのものだ。指がペンダントへ伸びた。懐かしい記憶が、澪に対する激情を失った悠希に蘇る。
――子供の頃は、どうだったかな。澪が裏切るような真似をして。もうこんなことしないって言う澪を、仕方がないなって陸が許して。でもまた、似たようなことを澪が繰り返して、また許して――
逡巡を読み取るように澪の前肢が悠希の顔に触れ、冷静を取り戻した口調で語りかける。
「そうか。考えは変わらないか。なら、提案がある。ガイア軍に引き渡されるにしても、手土産が欲しい」
「手土産?」
「ああ。ガイア軍には、賓客として受け入れてもらいたい」
「図々しいな。澪に殺されていった、現実世界軍の兵士が何人いることか」
「これは戦争だ、悠希。戦いで命を落とすことは、宿命だ。僕が手土産を作ることを悠希が手伝ってくれるなら、電脳世界を脱したいと願っている思念体と現実世界との橋渡しができる。頼む、悠希。僕に現実世界に対する功績を作らせて欲しい」
「何だって? そんな思念体が、アデライトの他にもいるのか?」
その提案は、悠希の意表を突いた。これまで、考えもしなかったことだ。悠希は、電脳世界を滅ぼすことばかりを考えていて、そこで暮らす善良な思念体の存在を考えもしなかった。悠希の揺らいだ心に、澪の言葉が染み入ってくる。
「ああ。悠希は誤解しているようだけど、僕は電脳世界という体制に属していたから、それに従って行動したまでだ。何も好きであんなことをしてたわけじゃない。僕は、現実世界に戻りたい。他の、僕のように帰還を望む仲間たちを助けたいんだ」
「見え透いたことを。信じられないな。電脳世界人は、冷徹な機械だ」
心に打ち込まれてしまった楔を振り払うように己の信念を口にする悠希に、澪はさらに深く食い込ませようとハンマーのように鋭い言葉を振るう。
「その機械と悠希は組んでるんだろう? だったら僕だって。僕たちだって」
「アデライトは、機械じゃない。少なくとも僕は、そうは思えない。仲間だって思ってる」
「矛盾してるよ、悠希。僕と同じ思念体であるアデライトは機械じゃないと言っておいて、他の思念体を全く認めようとしない。まるきりの差別じゃないか。助けを求めている者たちがいるのに、手を差し伸べないなんて」
澪の言葉に反論できない悠希の中で、希望にも似た光が差し込んでくる。
――電脳世界人でも、救える者がいる――
今でも電脳世界を滅ぼしたいとの悠希の願いは変わってはいないが、殺伐とした破壊のみが支配するようにならずに済む。そして、澪。
――僕は、もう澪を殺せない。昔の日々を、思い出してしまった僕には。澪が本心で帰還を望んでるとは思えないけど、もうこいつは無力だ――
この提案に乗れば、澪はガイア軍に迎え入れられるだろう。そうなれば、澪はもう電脳世界の方面軍参謀機としての力を振るうことはない。悠希、澪、陸。三人の幼馴染みが、同じ都市で再び暮らす。
「いいだろう、澪。僕たち現実世界の平和は、電脳世界が在る限り得られない。けど、助けられる思念体は救いたい。現実世界に戻りたい者たちを、見捨てられない。彼らを助けて、僕は電脳世界をこの手で必ず滅ぼして見せる」
「よかった。正しい選択だよ、悠希。これで、昔のように僕たちは手を取り合える。早速で悪いんだけど、悠希。このボディは、小型のアンドロイドだから稼働時間が短い。あと数時間しか保たないから、手頃なヒューマノイドボディの傍まで運んで欲しい。そのボディを、僕が乗っ取るから。そうすれば、このボディをスリープモードにできる」
悠希の決意に、赤い目を光らせ澪は声を満足そうにさせた。
〈全く。悠希を一人にできないわね〉
カフェから切断していたコノカと繋ぎ事情を話すと、真っ先に反対され呆れられる。
〈敵の参謀機の提案に乗るだなんて。今ならまだ間に合うわ。守啓連隊長に事情を話して、彼をガイア軍に引き渡すのよ〉
「コノカだったか? サポートAIの君に、人間の情が分かるとは思えない。僕と悠希には、永い年月の付き合いがあるが君にはない。そして、それがいかに重要かが君には分からない」
〈何ですって! 敵だったあなたに、友情のなんたるかを説かれたくないわね。昔より今よ。故郷を失ってからの悠希が、どれだけ苦しんできたかわたしは知ってるわ。薄っぺらい友情を振りかざすのは止めなさい〉
澪の言葉にコノカが噛み付き、悠希は溜息混じりに促す。
「言い争いは、後にして。澪にボディーを提供する。周りに怪しむ人間がいない、適当なヒューマノイドを探して。
第二条だよ。人間に与えられる命令に、応じなければならない」
〈知らないわよ、悠希〉
基地内のヒューマノイドのうち悠希が呈示した条件に合うものをコノカが探し出し、AR認識処理で表示した基地内マップにマーキングした。そこへ向かう道すがら、悠希はアデライトに連絡を取った。アデライトもコノカと同様の反応だ。銀鈴が厳しい。
〈澪の口車に乗っては駄目よ、悠希! 今すぐ澪から離れなさい〉
「平気だよ、アデライト。澪はもう僕と争うつもりはないよ。それより、現実世界に戻りたがっている思念体を救い出せるんだ。アデライトにも協力してもらいたい」
〈悠希、君は騙されてる〉
「文句は、後で聞くよ。今、ちょっとやることがあるから、切るよ」
区画が変わりそれまでと違って、一定間隔で気密隔壁の出っ張りが壁から突き出ている廊下へと差し掛かった。ときおりネズミは姿を隠し、見失う。慌て悠希は、ネズミを追って走り出すと、隔壁の陰に隠れたネズミはその出っ張りを伝って上へといつの間にか移動していた。小さく文句を、悠希は呟く。
「全く、好き勝手に動いて」
一定以上の距離を開けないよう、悠希はつかず離れずネズミを追った。ネズミは、平面から上下立体の活動範囲を得て、気ままさでもってランダムに動いた。それでも、悠希を気にかけているらしく、ときおり振り向いては悠希を確認していた。追いかけっこをしているうちに、次第に悠希はそのネズミに愛着らしきものを抱き始める。
――頭を冷やすのにちょうどいい。こんな他愛もないことをしていれば、小難しいことなんて考えない。僕は、澪のことでナーバスになってがんじがらめになっているんだ。澪は、幼馴染みだ。けど、僕が殺した澪は、人間じゃない。昔の澪じゃないんだ。なのに僕は、思念体の澪を人間のように感じてしまった。それは間違いだって思えればいいけど、どうしてか陸の顔がちらつく。澪を機械だって断じてしまうことを、許してこない――
一つ、悠希は溜息を吐いた。
――いいさ。無理に答を出さなくても。昨日の今日で、僕も感情が高ぶっているんだ。時間が経てば、正しい解釈に落ち着くさ――
奥へ奥へと進んでいったネズミは枝道で折れ、今は使用されていない大きな部屋の入り口で歩みを止めた。そこはちょうど奥まって、訪れる者の誰も居ない人気の全くない場所だった。ちょこちょこ動き悠希と正対に向き合ったネズミは、前肢を持ち上げ身を起こしまっすぐ見据えてきた。そうするとこの取るに足りない小動物に、威厳めいた風格が漂った。まるでこれから何ごとかでも告げられるような錯覚を悠希は覚え、思わず身構えてしまった。
苦笑が、悠希の端正な面に浮かんだ。ネズミが話し出す筈などないというのに、何を馬鹿なと。ところが、その束の間の安堵は裏切られる。
「やぁ、悠希」
人語を操るネズミにびくりと身体を硬直させ、心臓が止まるほど悠希は驚いた。一体何が間違ってネズミが話し出す怪異が起きたのかと疑ってネズミを注視すると、それは殆ど本物と見分けがつかないほど良くできているが、作られた人工物であることが体毛の質感からどうにか判別できた。苛立たしげな声を、悠希は上げる。
「……動物型のアンドロイド? 全く、誰かの手の込んだ悪戯か? こんなときに質の悪い。名前を知ってたから、目的は僕だ。錦か? 久留美川博士もいるから、協力を頼んだとか」
「悪戯なんて、酷いな。せっかく、悠希に会いに来たっていうのに。こんな成りだから人目のあるところでは話せなくて」
罵る悠希にネズミは、苦笑する気配をやや甲高い声に滲ませた。悠希の顔を見詰めていたネズミの赤い目が全身をなぞるように動き、感慨深く再び口を開く。
「もうすっかり悠希は大人だな。僕はあっちの世界へ行ったとき生成されたアバターを成長させずに使ってたから、大人になったらどんな姿になっていたのか分からない。六年前に悠希と別れて、直に会うのは今日が初めて。見かけたとき、悠希だとすぐには分からなかった。だけど、やっぱり昔の面影がある。昔一緒に遊んだ悠希だって分かったよ」
「一体何を言ってる? 僕のことを知ってるふりして、やっぱり五寧の悪戯なんだろう?」
問い質しつつも嫌な予感が、悠希の中で湧き上がった。こんなことを話すのは、悠希が知るある人物だけだ。けれど、悠希の理性は正常に機能している。入埜第三小隊の皆なら、事情をよく知るアデライトや寧々でなくとも、おおよそその人物と悠希の関係は知っている。だから悠希を引っかけようとすれば、このような問答を仕込むことも可能な筈だ。心が冷える。
――一体、何のつもりなんだか――
こんな真似を仕掛けた誰かにもし悪意の欠片もないお茶目な悪戯だとしても、仕掛けられた悠希にとっては心に痛みを感じるし傷つきもする。できる人物は、小隊員と芽生のうち誰か。この心ない行為は、小隊長を務める悠希にとって心にしこりを残してしまう。どうしようか思案しつつネズミを見詰めていると、小首を傾げ甲高い声音を不満げにする。
「だから、違うって。全く、疑い深いな。昔の悠希は、そんなことなかったぞ」
「なれなれしく、僕を騙そうとするな。僕を担ぎたい奴のところまで、案内してもらおうか」
親しげに話しかけてくるネズミに、悠希はじっと冷たい眼差しを注いだ。ネズミは悠希に歩み寄りながら、抗議の声を上げる。
「分からないのか? 僕だよ。加々美澪。対面するのは六年ぶりだからって、僕を忘れてしまったのかい? 酷いな」
「分かってるよ。僕を填めるために、おまえが澪の真似事を演じてるってことは」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ。僕は今はこんな成りだが、正真正銘の加々美澪だ。悠希や陸の幼馴染みのな」
「……陸のことまで……。昨日僕は、澪をこの手で殺し――破壊した。澪を構成する量子コンピューターが、ただの屑鉄になったことも確認した。ふざけたネズミのアンドロイドが、澪の筈がないんだよ」
恐らく通常のヒューマノイドやアンドロイドのようにクラウドで特化型AIが動かしているのではなく、汎用人工知能が使われているらしいネズミの会話はとても自然だ。やはり芽生が関与している可能性が高いが、パイロットである小隊員のサポートAIを用いても可能だ。困ったように、ネズミは首を振る。
「疑い深い奴だな。これが、アイギスの本体なんだよ。機械兵では活動不可能な場所での行動能力が加味されてね。最上位機種に近しい方面軍に基本一体存在する最新鋭機だから、新機構が搭載され本体が動ける構造になってる。当然、機体からの脱出にも使用できるのさ」
「そんなこと、どうとでも言える。本物の澪だって言い張るなら、証拠を見せてみろ」
誇らしげに語るネズミに、悠希はぴしゃりと叩き付けた。ネズミは、悠希の足下で前肢を持ち上げ見上げる。
「困った奴だよ、本当に悠希は。いいよ。じゃあ、子供の頃の話をしよう。僕と悠希は、陸の家へと出かけた。真面目な陸はお茶を出す母親の手伝いをしていて、リビングには僕と悠希の二人だけ。僕たちは悪ふざけしてチェストの上に飾ってあった、陸の父親自慢の陸上競技会で優勝したトロフィーを床に落として、工学クリスタルでできたそれを壊してしまった。困った僕たちは、ゴミ箱の中にそれを咄嗟に隠した」
「どうしてそれを?」
「おい、まだ話の途中だ。その日は、夕方まで陸の家で遊んで帰宅した。けれど、翌日そのトロフィーが見つかって陸の奴は大目玉。お優しい悠希は、僕の家に来てこう言ったんだ。正直に言おうってね。嫌だって僕は答えたけど悠希がしつこくて、陸の家へ行って本当のことを話して謝った。ま、怒られもせず許してもらえたけどね」
語り終えたそのネズミの話に、悠希は衝撃に目が眩みかけた。発する声が震える。
「……本当に……澪……なのか?」
「だから、そう言ってる。僕が正真正銘の澪だって、証明になっただろう」
澪を名乗る得意げなネズミを見詰め、悠希は薄ら寒さを覚えた。今朝その死に涙すら流した相手だったが、死者が蘇ったかのように感じて。再会の感動のない戸惑いの中、悠希は確信した。確かにこのネズミは、澪に違いない。
「僕に会いに来たって? 今更直接会ったって、僕たちに感動の再会なんてあり得ない。僕たちは敵同士だった。昔を懐かしんで、笑顔で語り合える筈はないんだ。何が目的だ、澪」
その機械仕掛けの小動物を澪と認識したところで、悠希は眉目を吊り上げ表情をキツくし厳しい口調で糾弾し問い質した。それを受けた澪は、ネズミのアンドロイドであるので表情は分からないが、微かに首を傾げ口調は淋しげだ。
「あんまりな言いようだね、悠希。僕は本当に君との再会を願って、敵地にまでやって来たっていうのに」
「そんな言葉に騙されるほど、僕が馬鹿だとでも。本当のことを言え、澪。そっちはそんな成りだ。その上、澪の言うとおりここは敵地。逃げ場はない」
「分かったよ、悠希。降参だ」
小さなネズミの首を振り澪は、それまでの砕けた口調を真面目なものへと変える。
「助けて欲しい、悠希。僕は、要塞都市東京に取り残されてしまった。電脳世界へ帰る手段がない。頼れるのは、悠希しかいないんだ。……陸も東京にいることは確認したけど、彼では僕の助けにはならない。頼む、悠希」
「虫がいいな。よりによって、僕を頼るなんて。戦場での僕たちの関係を、忘れたのかい? 互いに相手を殺したいと思うほど、僕たちは憎しみあっていた。それが、助けて欲しい? 冗談だよな」
真摯な態度の澪に対して悠希は、責め立てる口調で最後の方は音階を外した。悠希は、腹立たしかった。自分にしがみつくな、と。敵としてあれだけ悠希たちを苦しめた強者だったというのに自分に媚びるな、と。二本足立ちだった澪は前肢を下ろし、まるで土下座をするみたいに頭を床にこすりつける。
「まだ、死にたくない。頼む、悠希。このとおりだ。今の僕は悠希と戦った、アイギスじゃない。まるきり非力なネズミの姿だ。もう、悠希たちの強敵たり得ない。悠希から見たらゴミ同然のそんな僕は、この窮地にどうすることもできない。悠希の情けに縋るしかないんだ」
「そんな真似をするな!」
這い寄り悠希のブーツに顔を近づける澪に、嫌悪感と共に悠希は激しい怒りを覚えた。同時に、哀れに感じる。尊大さとそれを支える強さを持った敵だった澪が、恥も外聞もなく命乞いをしている。悠希が憎む比類なき悪――まるで電脳世界を代弁する存在と映っていた澪は、最早何の力もなく、悠希が倒したいと願った故郷の怨嗟と怨念に匹敵する存在ではなかった。これでは、悠希の怒りは行き場を失う。足下でうずくまる澪に、これまであった筈の憎しみはもうなかった。澪は、顔を振り上げ必死の口調になる。
「見捨てないでくれ、悠希。僕は、君だけが頼りなんだ」
「破壊したりしない。澪は、方面軍参謀機。僕一人の一存で、どうにかできる相手じゃない。ガイア軍に引き渡す。澪は自分の責任を果たすべきだ」
死に物狂いな澪に対して、悠希は冷厳な冷徹さを纏った。最早悠希が倒したいと願う強敵たり得ない澪は、感情で相対する相手ではなくなった。だから、兵士としての義務を果たそうと決めたのだ。ネズミの姿の澪は、脱兎の勢いで悠希のブーツからズボンへと駆け上り、肩へ飛び乗り必死に言い募る。
「駄目だ、悠希。幼馴染みを売るつもりなのか? 兄弟同然だった、僕たちだぞ。生き方が食い違っただけで見捨てるなんて、悠希には情はないのか? 血の通わぬ人の心を無くした演算するだけの冷徹な機械だとか電脳世界人のことを言っておいて、悠希こそ己の職分をこなすだけの感情を失った機械じゃないか!」
我が儘で自分勝手、自分の行動をすぐ棚に上げる。子供時代の悠希が知る、まるきり澪そのものだ。指がペンダントへ伸びた。懐かしい記憶が、澪に対する激情を失った悠希に蘇る。
――子供の頃は、どうだったかな。澪が裏切るような真似をして。もうこんなことしないって言う澪を、仕方がないなって陸が許して。でもまた、似たようなことを澪が繰り返して、また許して――
逡巡を読み取るように澪の前肢が悠希の顔に触れ、冷静を取り戻した口調で語りかける。
「そうか。考えは変わらないか。なら、提案がある。ガイア軍に引き渡されるにしても、手土産が欲しい」
「手土産?」
「ああ。ガイア軍には、賓客として受け入れてもらいたい」
「図々しいな。澪に殺されていった、現実世界軍の兵士が何人いることか」
「これは戦争だ、悠希。戦いで命を落とすことは、宿命だ。僕が手土産を作ることを悠希が手伝ってくれるなら、電脳世界を脱したいと願っている思念体と現実世界との橋渡しができる。頼む、悠希。僕に現実世界に対する功績を作らせて欲しい」
「何だって? そんな思念体が、アデライトの他にもいるのか?」
その提案は、悠希の意表を突いた。これまで、考えもしなかったことだ。悠希は、電脳世界を滅ぼすことばかりを考えていて、そこで暮らす善良な思念体の存在を考えもしなかった。悠希の揺らいだ心に、澪の言葉が染み入ってくる。
「ああ。悠希は誤解しているようだけど、僕は電脳世界という体制に属していたから、それに従って行動したまでだ。何も好きであんなことをしてたわけじゃない。僕は、現実世界に戻りたい。他の、僕のように帰還を望む仲間たちを助けたいんだ」
「見え透いたことを。信じられないな。電脳世界人は、冷徹な機械だ」
心に打ち込まれてしまった楔を振り払うように己の信念を口にする悠希に、澪はさらに深く食い込ませようとハンマーのように鋭い言葉を振るう。
「その機械と悠希は組んでるんだろう? だったら僕だって。僕たちだって」
「アデライトは、機械じゃない。少なくとも僕は、そうは思えない。仲間だって思ってる」
「矛盾してるよ、悠希。僕と同じ思念体であるアデライトは機械じゃないと言っておいて、他の思念体を全く認めようとしない。まるきりの差別じゃないか。助けを求めている者たちがいるのに、手を差し伸べないなんて」
澪の言葉に反論できない悠希の中で、希望にも似た光が差し込んでくる。
――電脳世界人でも、救える者がいる――
今でも電脳世界を滅ぼしたいとの悠希の願いは変わってはいないが、殺伐とした破壊のみが支配するようにならずに済む。そして、澪。
――僕は、もう澪を殺せない。昔の日々を、思い出してしまった僕には。澪が本心で帰還を望んでるとは思えないけど、もうこいつは無力だ――
この提案に乗れば、澪はガイア軍に迎え入れられるだろう。そうなれば、澪はもう電脳世界の方面軍参謀機としての力を振るうことはない。悠希、澪、陸。三人の幼馴染みが、同じ都市で再び暮らす。
「いいだろう、澪。僕たち現実世界の平和は、電脳世界が在る限り得られない。けど、助けられる思念体は救いたい。現実世界に戻りたい者たちを、見捨てられない。彼らを助けて、僕は電脳世界をこの手で必ず滅ぼして見せる」
「よかった。正しい選択だよ、悠希。これで、昔のように僕たちは手を取り合える。早速で悪いんだけど、悠希。このボディは、小型のアンドロイドだから稼働時間が短い。あと数時間しか保たないから、手頃なヒューマノイドボディの傍まで運んで欲しい。そのボディを、僕が乗っ取るから。そうすれば、このボディをスリープモードにできる」
悠希の決意に、赤い目を光らせ澪は声を満足そうにさせた。
〈全く。悠希を一人にできないわね〉
カフェから切断していたコノカと繋ぎ事情を話すと、真っ先に反対され呆れられる。
〈敵の参謀機の提案に乗るだなんて。今ならまだ間に合うわ。守啓連隊長に事情を話して、彼をガイア軍に引き渡すのよ〉
「コノカだったか? サポートAIの君に、人間の情が分かるとは思えない。僕と悠希には、永い年月の付き合いがあるが君にはない。そして、それがいかに重要かが君には分からない」
〈何ですって! 敵だったあなたに、友情のなんたるかを説かれたくないわね。昔より今よ。故郷を失ってからの悠希が、どれだけ苦しんできたかわたしは知ってるわ。薄っぺらい友情を振りかざすのは止めなさい〉
澪の言葉にコノカが噛み付き、悠希は溜息混じりに促す。
「言い争いは、後にして。澪にボディーを提供する。周りに怪しむ人間がいない、適当なヒューマノイドを探して。
第二条だよ。人間に与えられる命令に、応じなければならない」
〈知らないわよ、悠希〉
基地内のヒューマノイドのうち悠希が呈示した条件に合うものをコノカが探し出し、AR認識処理で表示した基地内マップにマーキングした。そこへ向かう道すがら、悠希はアデライトに連絡を取った。アデライトもコノカと同様の反応だ。銀鈴が厳しい。
〈澪の口車に乗っては駄目よ、悠希! 今すぐ澪から離れなさい〉
「平気だよ、アデライト。澪はもう僕と争うつもりはないよ。それより、現実世界に戻りたがっている思念体を救い出せるんだ。アデライトにも協力してもらいたい」
〈悠希、君は騙されてる〉
「文句は、後で聞くよ。今、ちょっとやることがあるから、切るよ」
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