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並列世界大戦――陽炎記――
mission 04 repose 3
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グラビトンエンジンが奏でる独特の低いサウンドが車内を満たし、重力制御でもってふわりと浮き上がる自走車が、朝の爽やかな陽射しに洗われ要塞都市東京の街並みを走り抜けた。スポーツタイプのそれは都市の所有物であって、インプラントと連動しており都市内のどこからでも近くにある好みの自走車の呼び出しが可能で、自動運転の恩恵により市民なら誰でも利用できる。ツーシーターの座席に悠希とアデライトは並んで座り、ときおり言葉を交わす。
「せっかくの休日を、ごめんなさい。わたしのために、潰させてしまって」
「別に構わないよ。特に私生活で打ち込んでるものとかもないし、友だちのアパートへ行ったり、コノカが遊びで創作君とハリウッドジェネレーターで作る、自主制作映画を見るくらいだから」
「何それ? 自主制作映画?」
ハーフツインテールにしたくすんだ金髪を揺らし、クールさを感じさせる不思議な甘い声に興味を滲ませアデライトは悠希に振り向いた。今日のアデライトは普段のメイド服ではなく可憐な緑色のワンピースを着ていて、いいところのお嬢様っぽい。悠希は昨夜錦と玲一に見立ててもらった、凝った作りではないくせにラインが自然な灰色の七分丈シャツと黒色のパンツ姿で、ちょっとお洒落な今どきの少年に見えた。今日一日、昨夜二人にも言われたがアデライトにてっと愉しい日にしたい悠希は、茶目っ気を効かせて答える。
「僕があまりにも機械兵のパイロット以外に無頓着で無趣味だったから、遊びでコノカが始めたんだ。コンセプトは僕が決めて、それに従ってコノカが創作君でストーリーを作ってハリウッドジェネレーターで配役や場所なんかを設定して、実写並みの再現度を持つ三Dで映画にする。僕のコンセプトは悪くないんだけど、コノカが改悪するんだ。頼んでない姉燃えを追加して、何の映画だか分からなくなる。僕は、シリアスなものを見たいのに」
「ふふ。サポートAIのコノカとは、うまくやってるのね。面白そう」
今朝食堂でアデライトが合流したとき、プライベートを重視するコノカは悠希との接続を切っていた。接続していたら、悠希の意見に噛み付き口論になっていたことだろう。隣でアデライトは、くすくす小さな拳を口元に宛がい心底愉しそうに笑った。その様子に、悠希はホッとした。これまでの関係が――悠希が一方的に拒絶していただけだったが――最悪だっただけにお通夜モードになったりすることもなくよかった、と。
自走車は、都市内をすいすい進んで行った。信号や交通量がクラウドで管理されていて、最適経路が割り出されるお陰だ。渋滞に捕まることなく、信号はタイミングよく切り替わる。殆ど止まることなく、悠希とアデライトは目的地である新宿へと着いた。降りると、自走車は勝手に走り去って行った。サカキロボティクスの試作品である高級なヒューマノイドの高い感情表出能力を活かし、アデライトは眩しげな表情を可憐な面に浮かべる。
「本物の街並みを間近で見るのは、六年ぶりかしら? 電脳世界の偽物とは、情報量がまるで違うわ。それでもこれは、このヒューマノイドのセンサを通して。実際に見たら、どう感じるのかしら?」
「昔放映された映像を見たけど、向こうの世界は防壁で囲まれていなくて、都市の外へ街並みがずっと続いていた。羨ましいって思ったよ」
「残念だけど、それはただのヴァーチャル世界よ。VRゲームと何ら変わりのない。本物の魅力には、敵わないわ」
幼い日の追憶を懐かしむ悠希の認識をアデライトは訂正し、新宿の街並みに弾むような足取りで踏み入った。歩きながらアデライトが、道路沿いに並ぶビルや建物の上層部を指さす。
「東京の街を走っていて不思議に思ったけど、エアカーの類いは空を走っていないのね」
「戦争が始まってから緊急時の混乱や事故を防ぐために、使用は禁止されてるんだ。要塞都市内の移動は、全て地上の交通機関で行われる」
ビルや建物の上層部にぽっかり穴の開いた空の発着場を指さし尋ねるアデライトに、悠希は表情を曇らせた。本来、日本エリアの中心都市である要塞都市東京は、もっと賑やかな都市なのだ。戦争による逼塞感を嫌でも感じさせられた。アデライトも口調を沈ませる。
「そう。残念だわ。上から街並みを見てみたかったんだけど」
「なら、あそこに行こうよ。有名なランドマークみたいだ。展望台とかあるみたい」
ARデスクトップの右側にある縦バーからナビアプリを立ち上げた悠希は、視界の先にあるすらりと聳え立つビルを注視しその情報を得、アデライトに勧めた。小首をアデライトは傾げて、小ぶりな唇に言葉を乗せる。
「〝yamato tree〟? 不思議な語感ね」
ナビで確認したらしくランドマークの名称を口にするアデライトは、言い慣れない言葉に発音が日本エリアの者らしくなく不安定だ。現在、第一言語には英語が指定されていて、地球上に様々な国が存在していた当時の母国語は第二言語となっていて日常的に悠希も日本語を使うことはないが、それでも小学校から習うので馴染みがあり何よりもDNAに染みついていた。語感から来るイメージを、悠希はそのまま口にする。
「〝yamato 〟っていうのは、日本の別称なんだ。古い言葉で、大昔は日本のことを大和って呼んでいた。だから〝yamato tree〟は、日本の木って意味。ほら、北欧神話なんかの世界樹みたいなノリで付けたんだと思う。昔、ここには日本って国がありましたって証みたいに」
「〝yamato 〟。素敵な響きね。悠希が生まれ育った国の、匂いを感じるわ」
「そう言われると、自信がないな。僕は、習った範囲でしか分からないから」
照れるように答えると、悠希はアデライトを促し目の前に聳え立つ白亜の塔といった趣のビルへと向かった。中は来場者のための意匠が凝らされていて、いかにも愉しむための場所といった雰囲気を伝えてくる。下層は商業施設がメインのようで様々な店舗が入っており、来場者はそれなりに多く喧噪が賑やかだ。取り敢えず展望台へ向かうため悠希とアデライトは、エレベーターに乗り込んだ。かご室が動き出すと、外を眺めるアデライトが口を開く。
「ストックホルムとは、大分違うわ。人工的で都会って感じがする」
かなりのスピードで上昇するので重力が増し身体が重くなった感覚を不快に感じながら、悠希は熱心に外を見詰めるアデライトの横顔を眺めつつ答える。
「不満? アデライトの故郷は、僕のイメージだと風光明媚な場所で観光地だから街並みがとても綺麗で。それと比べたら味気ないかも」
「ううん」
首を振りアデライトは悠希へ振り向き、可憐な面を笑ませる。
「わたしは、こういういかにも都市って場所も好き。勿論、大事な思い出が詰まったストックホルムが一番大好きだけど。あ、ごめん……」
「気にしないでよ。いちいち、そんなことで不機嫌になったりしないから」
嘘だったが不思議と以前のような憎悪を、要塞都市横浜を連想させる話の流れにアデライトから悠希は感じなかった。アデライトは再び口を開こうとしたが、展望室がある最上階の一五〇階へと到着し口を閉ざし、悠希と共に降りた。円形のそこは、外周全てがガラス張りで広大な景色が広がっていた。ただ、残念なことにイベント時間ではないため天井と床のモニタが機能しておらず、謳い文句のまるで空中に浮かんでいる感覚は体感できなかった。お年寄りや子供への配慮で、普段は突然感覚が麻痺するような仕掛けは問題があるため、使用されていないのだ。タタっと駆け出したアデライトが、口調を弾ませる。
「果てが見えないくらい、ずっとこの人工の街並みが続いてる。EUエリアは、中世の街並みの保存が義務づけられてるから、ここまで遠慮のない都市は初めて見るわ」
「全く、子供みたいだ。まぁ外見はそうだけど二〇歳って言ってたから、さすがに」
「何か言った、悠希? わ・た・し・の・歳がどうしたの?」
嘆息気味な悠希の呟きを耳聡く聞き咎めたアデライトは、振り向きにっこりと微笑んだ。背筋に悪寒が走った悠希は、逆鱗に触れぬよう透かさず言い繕う。
「いや、清純可憐な女の子がはしゃぐ様は見ていて微笑ましいって、言ったんだ」
服装がいつもと違い普段の小悪魔的な雰囲気が拭い去られているので、悠希の言葉は決してその場凌ぎの言い訳ではない。再び外へ視線を送り、アデライトは口調を冷ややかにする。
「なら、いいわ。聞き違いだったみたいね。悠希もよかったわね。五体満足何ごとも無く済んで」
ぞぞーっと血の気が引いていく音を、悠希は聞いた。同時に、アデライトに遠慮がないと思う。悠希が知るアデライトは、理想家でありやや完璧主義の嫌いがある女性だった。彼女が思念体――電脳世界人ということもあるが、過去の因縁がなかったとしても自ずと壁ができる相手だった。が、今はまるでそれがない。そう思ったとき、悠希は自分の感情に驚いた。嬉しかった。打ち解けてくれたことに、幸福を感じたのだ。
――僕は、どうしたんだ。それは、アデライトを冷徹な機械である筈がないと、思ったけれど――
俄に湧いた感情に、悠希は戸惑いを覚える。
――第一、アデライトは僕より年上だ。それに、本当の顔すら僕は知らない――
そう。悠希は、アデライトのことを何一つ知らない。悠希が知るアデライトは、軍団長機レガトゥス搭載の思念体。本当の彼女を、見たこともないというのに……。
――なのに僕は、どうしてアデライトを意識しているんだ――
確実に悠希は、アデライトを異性として見始めていた。誤魔化すように円周のガラスを透かし、要塞都市東京の街並みを展望する。
「そう言えば僕、こうしてちゃんと東京の街を眺めたのは初めてだ。機械兵で出撃するとき、モニタ越しに見えはするけど見てはいなかった」
視界に広がる東京の街並みは、アデライトがいうとおり人工物が織りなす大地そのもので、そこに人の営みがあることが不思議に思えて、でもホッとさせられた。遠くの人通りを注視すると、展望システムと連動しAR認識処理で映像が拡大表示されて、人間一人一人を映し出した。自分もそんな人間の一人と、悠希は思えて。属すことのできる、居場所を持った。
拡大映像から視線を外すと、所々街並みに混じる異物が見出された。防衛システムだ。軌条のような砲身をハリネズミのように天に生やした電磁投射砲モジュール。多連装ミサイルランチャー。CIWS。それらが都市の各所に設置され、景観を一層人工的にしていた。外を見たままアデライトが、口調を気遣わしげにする。
「きっと、悠希はそれどころじゃなかったのよ。戦うことに必死だったから」
「……そうかも。アデライトに、要塞都市東京の案内を頼まれておきながらなんだけど、僕は禄にこの街を見て回ったことも、遊んだこともなかったんだなって。申し訳ないって思うよ。東京育ちの寧々なら、もっと色々な場所に詳しいんだけど」
「どうかしら? ここ、素敵だと思うけれど。それに、わたしは悠希にお願いしたかったの。この戦争に、真摯に向き合ってる悠希に。わたしは、悠希のことが知りたいの」
「僕のこと?」
背は自分よりも低いので見上げてくるアデライトに、悠希は頬が赤らむのを感じた。青い瞳が、優しく笑う。
「今日は、まだ長いわ。ゆっくり時間をかけて、分かり合いましょう」
事前に仕込まれた寧々の入れ知恵と思いつきで、悠希はアデライトを自分でもいいと思える場所に案内できた。悠希が行くのが初めての場所が殆どで、いかに自分がこの都市を知らなかったのか思い知らされた。あと回れるのが数カ所というとき、アデライトが喫茶店に寄りたいと提案してきた。瀟洒なその店は調度が凝っていて、ちょっと気分を変えてくれた。アイスコーヒーを飲みながら、悠希は落ち着かなそうに口を開く。
「お昼もそうだったけど、僕だけ悪いね」
「構わないわ。行きたいって言ったのは、わたしだもの。この身体だから、食べたり飲んだりはできないけど、気分を味わうことはできるわ」
「じゃあ、遠慮なく」
今日一日、悠希はできる限り愉しく過ごそうと努力した。今日くらい、アデライトに安らいでもらいたいと思い、でも悠希自身アデライトを異性と意識してしまったこともあり、無理にそうする必要はなかったが。他愛のない会話を交わす途中、アデライトが振った話題に悠希は今日初めて気持ちがざらついた。
「悠希は、アイギス八――澪のことをどう思ってるの?」
「戦場で会ったあいつは、もう昔の澪じゃなかった。あそこまで、現実世界を憎むなんて。今の澪は、電脳世界によって生み出された機械だ」
怒りも顕わな口調の悠希に、アデライトは可憐な面を陰らし青い瞳を切なげにする。
「悠希は、電脳世界人が嫌い? 二つの世界の共存のために、悠希には電脳世界人を人間だって認めて欲しい」
「……それは無理だ。綾咲にも、よく怒られるけど。彼女、今は音信不通だけどあっちの世界に親友がいるから」
確かにアデライトのことは認めた。が、それは彼女一人のことであって、電脳世界人――思念体全てではない。未来の可能性を考え始めた悠希だったが、こればかりは譲れない。
「二つの並列する世界の共存。正直、ピンとこない。互いに平行線の世界は、決して交わることなんてないから。そんなビジョン、思い描けない」
「わたしは、そのためにここにやって来た。悠希には、理解者になって欲しい」
ひたむきな瞳を向けてくるアデライトに、悠希はそれでも応じることはできない。胸に手を当てアデライトは、更に言葉を続ける。
「過去の贖罪のためにも、わたしは優しい未来を勝ち取らなければならない」
高尚で純粋である理想に葛藤していた悠希は、自分の願いを他に依存したようなアデライトの物言いにカチンときた。アデライトが言うべき言葉ではない、と。
「その言い方止めなよ。アデライトは、自分の罪悪感から逃れたいから、そうしたいんじゃないだろう。元から、そうしたいって思ってた。だから、そうしたいんだ」
「……わたしは……」
言い淀むアデライトに、悠希は感情のままを言葉にする。
「過去を捨てろだなんて、僕には言えない。だって、それは僕にとって決して許せないことだから。けど、アデライトは僕じゃない。僕と違う考えでいいんだ。だから、遠慮なんてしないで欲しい。やりたいなら、誰にも遠慮なくやっていいんだ」
勇気づけるような悠希の言葉に、アデライトの青い瞳が見開かれ可憐な面がキリッとする。
「分かった。もう、悠希に遠慮しない。わたしは、やりたいからそうするんだ。でも、悠希も理解者になってくれたら、わたしは嬉しい。手を取って共に歩んでくれたら」
力みが取れたように決意を向けてくるアデライトから、澄んだ清流のような意思を悠希は感じた。それでも、悠希は受け入れることはできない。拒絶を口にせず、悠希は服に隠れたペンダントに指先で触れ話題を変える。
「……君に会いたがってる奴がいるんだ。取り残された廃墟で君に話した、電脳世界に憧れてた幼馴染みの陸。今日のことを伝えたら、話をしてみたいって」
「ここ、悠希?」
「ああ。けっこうボロいだろう? 要塞都市東京が横浜からの難民に宛がったアパート」
アデライトの問いに、アーチをくぐり抜けながら悠希は答えた。陸が住む、うらぶれたアパート。周囲は暮れなずみ、昼と夜とが押し合う時間。キャシャカシャと何かが擦れる音に視線を向けると、段差で旧式の掃除ロボットがひっくり返り蜘蛛のような多脚を蠢かせ藻掻いていた。悠希は近寄ると、かがみ込み助け起こす。
「この前も、こいつここでひっくり返っていたんだ」
「随分、型が古そうね」
「ああ。でもこのアパートと何だか妙にマッチしていて、趣がある」
肩を竦め茶目気味に答える悠希に、アデライトはくすりと笑う。
「ふふ。まぁ、そうかも知れないわね。そういう捉え方もあるわよね」
二人は階段を上り、陸の部屋へ。来訪を告げ解錠されたドアを悠希が開けると、中の陸から声がかけられる。
「来てくれて嬉しいよ、アデライト。悠希、ありがとう」
歓迎する陸は、ベッドの上で上半身を起こしていた。アデライトは、悠希に疑問の視線を投げかけた。少し言い淀むが、意を決して悠希は問いに答える。
「その……陸は、関東総力戦の要塞都市横浜陥落時、大怪我を負ったんだ。身体の六割近くを失って、機械で代替えしている」
「そんな……じゃ、陸はずっとこのまま……」
それまでの偽りの瑞々しい生命力が消え失せたようにアデライト――清らかな少女は凍結した。それを溶かしたのは陸だ。
「アデライトが思い詰める必要はない。電脳世界を恨んだことだってあるけど、でも、そんなことをしたって仕方がないって分かってる。それにこんな僕だって、電脳世界へ行くことさえできたら、人らしく生き直せる」
「陸……そんなことを考えていたのか……」
初めて知る偽らざる陸の本心に、悠希はどう受け止めていいのか分からなかった。これまでは、自分に遠慮をして口にすることがなかった。だが、今ここにはアデライトがいる。だからこそ、陸は言うことができた。陸は、穏やかそうな彫りの深い面を陰らせる。
「ごめんな、悠希。悠希の電脳世界に対する気持ちは知ってる。けど、俺だってもう一度普通に生きてみたいんだ」
淋しげに微笑むと陸は、アデライトに視線を向け趣深い瞳を輝かせる。
「アデライト、澪は向こうの世界でどんなふうなんだろう」
「八――澪は、その、昔とは多分違ってしまっているわ。陸が知ってる澪とは」
「そう? 元気でやってたのかな?」
昔を懐かしむような陸に、アデライトは躊躇いと迷いを口調に乗せる。
「いい悪いは別にして、元気だったわ。電脳世界の代弁者気取りなくらいには」
「そっか。あいつらしい。ははは」
切なげで、でもちょっと愉しそうに陸は笑った。そんな優しい陸を見る悠希は辛い。そっと目を伏せる。
「もう、昔の澪じゃない。思いたくないだろうけど、彼は敵なんだ」
「分かってる、悠希」
表情をすっきりさせる陸に、今日だけは様々なしがらみを忘れていいと悠希は思う。
「もし、僕もあのとき電脳世界へ行っていれば、どうなっていたんだろう? 気に入って向こうの世界の住人になって、愉しくやっていたのかな?」
そう言ってから、悠希は気の迷いだと首を振った。忘れてくれ、と言って。
「せっかくの休日を、ごめんなさい。わたしのために、潰させてしまって」
「別に構わないよ。特に私生活で打ち込んでるものとかもないし、友だちのアパートへ行ったり、コノカが遊びで創作君とハリウッドジェネレーターで作る、自主制作映画を見るくらいだから」
「何それ? 自主制作映画?」
ハーフツインテールにしたくすんだ金髪を揺らし、クールさを感じさせる不思議な甘い声に興味を滲ませアデライトは悠希に振り向いた。今日のアデライトは普段のメイド服ではなく可憐な緑色のワンピースを着ていて、いいところのお嬢様っぽい。悠希は昨夜錦と玲一に見立ててもらった、凝った作りではないくせにラインが自然な灰色の七分丈シャツと黒色のパンツ姿で、ちょっとお洒落な今どきの少年に見えた。今日一日、昨夜二人にも言われたがアデライトにてっと愉しい日にしたい悠希は、茶目っ気を効かせて答える。
「僕があまりにも機械兵のパイロット以外に無頓着で無趣味だったから、遊びでコノカが始めたんだ。コンセプトは僕が決めて、それに従ってコノカが創作君でストーリーを作ってハリウッドジェネレーターで配役や場所なんかを設定して、実写並みの再現度を持つ三Dで映画にする。僕のコンセプトは悪くないんだけど、コノカが改悪するんだ。頼んでない姉燃えを追加して、何の映画だか分からなくなる。僕は、シリアスなものを見たいのに」
「ふふ。サポートAIのコノカとは、うまくやってるのね。面白そう」
今朝食堂でアデライトが合流したとき、プライベートを重視するコノカは悠希との接続を切っていた。接続していたら、悠希の意見に噛み付き口論になっていたことだろう。隣でアデライトは、くすくす小さな拳を口元に宛がい心底愉しそうに笑った。その様子に、悠希はホッとした。これまでの関係が――悠希が一方的に拒絶していただけだったが――最悪だっただけにお通夜モードになったりすることもなくよかった、と。
自走車は、都市内をすいすい進んで行った。信号や交通量がクラウドで管理されていて、最適経路が割り出されるお陰だ。渋滞に捕まることなく、信号はタイミングよく切り替わる。殆ど止まることなく、悠希とアデライトは目的地である新宿へと着いた。降りると、自走車は勝手に走り去って行った。サカキロボティクスの試作品である高級なヒューマノイドの高い感情表出能力を活かし、アデライトは眩しげな表情を可憐な面に浮かべる。
「本物の街並みを間近で見るのは、六年ぶりかしら? 電脳世界の偽物とは、情報量がまるで違うわ。それでもこれは、このヒューマノイドのセンサを通して。実際に見たら、どう感じるのかしら?」
「昔放映された映像を見たけど、向こうの世界は防壁で囲まれていなくて、都市の外へ街並みがずっと続いていた。羨ましいって思ったよ」
「残念だけど、それはただのヴァーチャル世界よ。VRゲームと何ら変わりのない。本物の魅力には、敵わないわ」
幼い日の追憶を懐かしむ悠希の認識をアデライトは訂正し、新宿の街並みに弾むような足取りで踏み入った。歩きながらアデライトが、道路沿いに並ぶビルや建物の上層部を指さす。
「東京の街を走っていて不思議に思ったけど、エアカーの類いは空を走っていないのね」
「戦争が始まってから緊急時の混乱や事故を防ぐために、使用は禁止されてるんだ。要塞都市内の移動は、全て地上の交通機関で行われる」
ビルや建物の上層部にぽっかり穴の開いた空の発着場を指さし尋ねるアデライトに、悠希は表情を曇らせた。本来、日本エリアの中心都市である要塞都市東京は、もっと賑やかな都市なのだ。戦争による逼塞感を嫌でも感じさせられた。アデライトも口調を沈ませる。
「そう。残念だわ。上から街並みを見てみたかったんだけど」
「なら、あそこに行こうよ。有名なランドマークみたいだ。展望台とかあるみたい」
ARデスクトップの右側にある縦バーからナビアプリを立ち上げた悠希は、視界の先にあるすらりと聳え立つビルを注視しその情報を得、アデライトに勧めた。小首をアデライトは傾げて、小ぶりな唇に言葉を乗せる。
「〝yamato tree〟? 不思議な語感ね」
ナビで確認したらしくランドマークの名称を口にするアデライトは、言い慣れない言葉に発音が日本エリアの者らしくなく不安定だ。現在、第一言語には英語が指定されていて、地球上に様々な国が存在していた当時の母国語は第二言語となっていて日常的に悠希も日本語を使うことはないが、それでも小学校から習うので馴染みがあり何よりもDNAに染みついていた。語感から来るイメージを、悠希はそのまま口にする。
「〝yamato 〟っていうのは、日本の別称なんだ。古い言葉で、大昔は日本のことを大和って呼んでいた。だから〝yamato tree〟は、日本の木って意味。ほら、北欧神話なんかの世界樹みたいなノリで付けたんだと思う。昔、ここには日本って国がありましたって証みたいに」
「〝yamato 〟。素敵な響きね。悠希が生まれ育った国の、匂いを感じるわ」
「そう言われると、自信がないな。僕は、習った範囲でしか分からないから」
照れるように答えると、悠希はアデライトを促し目の前に聳え立つ白亜の塔といった趣のビルへと向かった。中は来場者のための意匠が凝らされていて、いかにも愉しむための場所といった雰囲気を伝えてくる。下層は商業施設がメインのようで様々な店舗が入っており、来場者はそれなりに多く喧噪が賑やかだ。取り敢えず展望台へ向かうため悠希とアデライトは、エレベーターに乗り込んだ。かご室が動き出すと、外を眺めるアデライトが口を開く。
「ストックホルムとは、大分違うわ。人工的で都会って感じがする」
かなりのスピードで上昇するので重力が増し身体が重くなった感覚を不快に感じながら、悠希は熱心に外を見詰めるアデライトの横顔を眺めつつ答える。
「不満? アデライトの故郷は、僕のイメージだと風光明媚な場所で観光地だから街並みがとても綺麗で。それと比べたら味気ないかも」
「ううん」
首を振りアデライトは悠希へ振り向き、可憐な面を笑ませる。
「わたしは、こういういかにも都市って場所も好き。勿論、大事な思い出が詰まったストックホルムが一番大好きだけど。あ、ごめん……」
「気にしないでよ。いちいち、そんなことで不機嫌になったりしないから」
嘘だったが不思議と以前のような憎悪を、要塞都市横浜を連想させる話の流れにアデライトから悠希は感じなかった。アデライトは再び口を開こうとしたが、展望室がある最上階の一五〇階へと到着し口を閉ざし、悠希と共に降りた。円形のそこは、外周全てがガラス張りで広大な景色が広がっていた。ただ、残念なことにイベント時間ではないため天井と床のモニタが機能しておらず、謳い文句のまるで空中に浮かんでいる感覚は体感できなかった。お年寄りや子供への配慮で、普段は突然感覚が麻痺するような仕掛けは問題があるため、使用されていないのだ。タタっと駆け出したアデライトが、口調を弾ませる。
「果てが見えないくらい、ずっとこの人工の街並みが続いてる。EUエリアは、中世の街並みの保存が義務づけられてるから、ここまで遠慮のない都市は初めて見るわ」
「全く、子供みたいだ。まぁ外見はそうだけど二〇歳って言ってたから、さすがに」
「何か言った、悠希? わ・た・し・の・歳がどうしたの?」
嘆息気味な悠希の呟きを耳聡く聞き咎めたアデライトは、振り向きにっこりと微笑んだ。背筋に悪寒が走った悠希は、逆鱗に触れぬよう透かさず言い繕う。
「いや、清純可憐な女の子がはしゃぐ様は見ていて微笑ましいって、言ったんだ」
服装がいつもと違い普段の小悪魔的な雰囲気が拭い去られているので、悠希の言葉は決してその場凌ぎの言い訳ではない。再び外へ視線を送り、アデライトは口調を冷ややかにする。
「なら、いいわ。聞き違いだったみたいね。悠希もよかったわね。五体満足何ごとも無く済んで」
ぞぞーっと血の気が引いていく音を、悠希は聞いた。同時に、アデライトに遠慮がないと思う。悠希が知るアデライトは、理想家でありやや完璧主義の嫌いがある女性だった。彼女が思念体――電脳世界人ということもあるが、過去の因縁がなかったとしても自ずと壁ができる相手だった。が、今はまるでそれがない。そう思ったとき、悠希は自分の感情に驚いた。嬉しかった。打ち解けてくれたことに、幸福を感じたのだ。
――僕は、どうしたんだ。それは、アデライトを冷徹な機械である筈がないと、思ったけれど――
俄に湧いた感情に、悠希は戸惑いを覚える。
――第一、アデライトは僕より年上だ。それに、本当の顔すら僕は知らない――
そう。悠希は、アデライトのことを何一つ知らない。悠希が知るアデライトは、軍団長機レガトゥス搭載の思念体。本当の彼女を、見たこともないというのに……。
――なのに僕は、どうしてアデライトを意識しているんだ――
確実に悠希は、アデライトを異性として見始めていた。誤魔化すように円周のガラスを透かし、要塞都市東京の街並みを展望する。
「そう言えば僕、こうしてちゃんと東京の街を眺めたのは初めてだ。機械兵で出撃するとき、モニタ越しに見えはするけど見てはいなかった」
視界に広がる東京の街並みは、アデライトがいうとおり人工物が織りなす大地そのもので、そこに人の営みがあることが不思議に思えて、でもホッとさせられた。遠くの人通りを注視すると、展望システムと連動しAR認識処理で映像が拡大表示されて、人間一人一人を映し出した。自分もそんな人間の一人と、悠希は思えて。属すことのできる、居場所を持った。
拡大映像から視線を外すと、所々街並みに混じる異物が見出された。防衛システムだ。軌条のような砲身をハリネズミのように天に生やした電磁投射砲モジュール。多連装ミサイルランチャー。CIWS。それらが都市の各所に設置され、景観を一層人工的にしていた。外を見たままアデライトが、口調を気遣わしげにする。
「きっと、悠希はそれどころじゃなかったのよ。戦うことに必死だったから」
「……そうかも。アデライトに、要塞都市東京の案内を頼まれておきながらなんだけど、僕は禄にこの街を見て回ったことも、遊んだこともなかったんだなって。申し訳ないって思うよ。東京育ちの寧々なら、もっと色々な場所に詳しいんだけど」
「どうかしら? ここ、素敵だと思うけれど。それに、わたしは悠希にお願いしたかったの。この戦争に、真摯に向き合ってる悠希に。わたしは、悠希のことが知りたいの」
「僕のこと?」
背は自分よりも低いので見上げてくるアデライトに、悠希は頬が赤らむのを感じた。青い瞳が、優しく笑う。
「今日は、まだ長いわ。ゆっくり時間をかけて、分かり合いましょう」
事前に仕込まれた寧々の入れ知恵と思いつきで、悠希はアデライトを自分でもいいと思える場所に案内できた。悠希が行くのが初めての場所が殆どで、いかに自分がこの都市を知らなかったのか思い知らされた。あと回れるのが数カ所というとき、アデライトが喫茶店に寄りたいと提案してきた。瀟洒なその店は調度が凝っていて、ちょっと気分を変えてくれた。アイスコーヒーを飲みながら、悠希は落ち着かなそうに口を開く。
「お昼もそうだったけど、僕だけ悪いね」
「構わないわ。行きたいって言ったのは、わたしだもの。この身体だから、食べたり飲んだりはできないけど、気分を味わうことはできるわ」
「じゃあ、遠慮なく」
今日一日、悠希はできる限り愉しく過ごそうと努力した。今日くらい、アデライトに安らいでもらいたいと思い、でも悠希自身アデライトを異性と意識してしまったこともあり、無理にそうする必要はなかったが。他愛のない会話を交わす途中、アデライトが振った話題に悠希は今日初めて気持ちがざらついた。
「悠希は、アイギス八――澪のことをどう思ってるの?」
「戦場で会ったあいつは、もう昔の澪じゃなかった。あそこまで、現実世界を憎むなんて。今の澪は、電脳世界によって生み出された機械だ」
怒りも顕わな口調の悠希に、アデライトは可憐な面を陰らし青い瞳を切なげにする。
「悠希は、電脳世界人が嫌い? 二つの世界の共存のために、悠希には電脳世界人を人間だって認めて欲しい」
「……それは無理だ。綾咲にも、よく怒られるけど。彼女、今は音信不通だけどあっちの世界に親友がいるから」
確かにアデライトのことは認めた。が、それは彼女一人のことであって、電脳世界人――思念体全てではない。未来の可能性を考え始めた悠希だったが、こればかりは譲れない。
「二つの並列する世界の共存。正直、ピンとこない。互いに平行線の世界は、決して交わることなんてないから。そんなビジョン、思い描けない」
「わたしは、そのためにここにやって来た。悠希には、理解者になって欲しい」
ひたむきな瞳を向けてくるアデライトに、悠希はそれでも応じることはできない。胸に手を当てアデライトは、更に言葉を続ける。
「過去の贖罪のためにも、わたしは優しい未来を勝ち取らなければならない」
高尚で純粋である理想に葛藤していた悠希は、自分の願いを他に依存したようなアデライトの物言いにカチンときた。アデライトが言うべき言葉ではない、と。
「その言い方止めなよ。アデライトは、自分の罪悪感から逃れたいから、そうしたいんじゃないだろう。元から、そうしたいって思ってた。だから、そうしたいんだ」
「……わたしは……」
言い淀むアデライトに、悠希は感情のままを言葉にする。
「過去を捨てろだなんて、僕には言えない。だって、それは僕にとって決して許せないことだから。けど、アデライトは僕じゃない。僕と違う考えでいいんだ。だから、遠慮なんてしないで欲しい。やりたいなら、誰にも遠慮なくやっていいんだ」
勇気づけるような悠希の言葉に、アデライトの青い瞳が見開かれ可憐な面がキリッとする。
「分かった。もう、悠希に遠慮しない。わたしは、やりたいからそうするんだ。でも、悠希も理解者になってくれたら、わたしは嬉しい。手を取って共に歩んでくれたら」
力みが取れたように決意を向けてくるアデライトから、澄んだ清流のような意思を悠希は感じた。それでも、悠希は受け入れることはできない。拒絶を口にせず、悠希は服に隠れたペンダントに指先で触れ話題を変える。
「……君に会いたがってる奴がいるんだ。取り残された廃墟で君に話した、電脳世界に憧れてた幼馴染みの陸。今日のことを伝えたら、話をしてみたいって」
「ここ、悠希?」
「ああ。けっこうボロいだろう? 要塞都市東京が横浜からの難民に宛がったアパート」
アデライトの問いに、アーチをくぐり抜けながら悠希は答えた。陸が住む、うらぶれたアパート。周囲は暮れなずみ、昼と夜とが押し合う時間。キャシャカシャと何かが擦れる音に視線を向けると、段差で旧式の掃除ロボットがひっくり返り蜘蛛のような多脚を蠢かせ藻掻いていた。悠希は近寄ると、かがみ込み助け起こす。
「この前も、こいつここでひっくり返っていたんだ」
「随分、型が古そうね」
「ああ。でもこのアパートと何だか妙にマッチしていて、趣がある」
肩を竦め茶目気味に答える悠希に、アデライトはくすりと笑う。
「ふふ。まぁ、そうかも知れないわね。そういう捉え方もあるわよね」
二人は階段を上り、陸の部屋へ。来訪を告げ解錠されたドアを悠希が開けると、中の陸から声がかけられる。
「来てくれて嬉しいよ、アデライト。悠希、ありがとう」
歓迎する陸は、ベッドの上で上半身を起こしていた。アデライトは、悠希に疑問の視線を投げかけた。少し言い淀むが、意を決して悠希は問いに答える。
「その……陸は、関東総力戦の要塞都市横浜陥落時、大怪我を負ったんだ。身体の六割近くを失って、機械で代替えしている」
「そんな……じゃ、陸はずっとこのまま……」
それまでの偽りの瑞々しい生命力が消え失せたようにアデライト――清らかな少女は凍結した。それを溶かしたのは陸だ。
「アデライトが思い詰める必要はない。電脳世界を恨んだことだってあるけど、でも、そんなことをしたって仕方がないって分かってる。それにこんな僕だって、電脳世界へ行くことさえできたら、人らしく生き直せる」
「陸……そんなことを考えていたのか……」
初めて知る偽らざる陸の本心に、悠希はどう受け止めていいのか分からなかった。これまでは、自分に遠慮をして口にすることがなかった。だが、今ここにはアデライトがいる。だからこそ、陸は言うことができた。陸は、穏やかそうな彫りの深い面を陰らせる。
「ごめんな、悠希。悠希の電脳世界に対する気持ちは知ってる。けど、俺だってもう一度普通に生きてみたいんだ」
淋しげに微笑むと陸は、アデライトに視線を向け趣深い瞳を輝かせる。
「アデライト、澪は向こうの世界でどんなふうなんだろう」
「八――澪は、その、昔とは多分違ってしまっているわ。陸が知ってる澪とは」
「そう? 元気でやってたのかな?」
昔を懐かしむような陸に、アデライトは躊躇いと迷いを口調に乗せる。
「いい悪いは別にして、元気だったわ。電脳世界の代弁者気取りなくらいには」
「そっか。あいつらしい。ははは」
切なげで、でもちょっと愉しそうに陸は笑った。そんな優しい陸を見る悠希は辛い。そっと目を伏せる。
「もう、昔の澪じゃない。思いたくないだろうけど、彼は敵なんだ」
「分かってる、悠希」
表情をすっきりさせる陸に、今日だけは様々なしがらみを忘れていいと悠希は思う。
「もし、僕もあのとき電脳世界へ行っていれば、どうなっていたんだろう? 気に入って向こうの世界の住人になって、愉しくやっていたのかな?」
そう言ってから、悠希は気の迷いだと首を振った。忘れてくれ、と言って。
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