上 下
82 / 84
【IF番外編√】★天界国黒騎士団長・闇のゼンタ★

1★ゼンタ&菫★【恋路】

しおりを挟む
ゼンタ「美しい……」

菫「……?」

ゼンタ「今日も美しいな……カボシ姫」

菫「ああ、カボシ姫を見ているの」

ゼンタ「うわああ! お、驚かせるなバカ!」

菫「えっ、ごめんなさい。渡り廊下の端っこにいるから気になって……」

ゼンタ「こ、こ、このことは誰にも言うなよ、わかったな」

菫「わかった」

ゼンタ「いてて。振り返ったとき、お前の爪が俺の頬に当たったぞ……」


菫「……あっ、少し血が出てきてしまいましたね、ごめんなさい」


ゼンタ「別に……」

菫「ハンカチ、あてますね」

ゼンタ「うわっ、急に近づくなよ」

菫「ん? カボシ姫、亘の元に走り出しましたね」

ゼンタ「は?」

菫「あっ、抱きついた!」

ゼンタ「ああ……ワタルさんのこと、お気に入りだからな。自分の護衛はいつもワタルさんを指名している」

菫「ふふ、そうなの」

ゼンタ「? 何故笑う?」

菫「いや、亘、嫌そうな顔して抱きつかれてるな、と思って。カボシ姫に気に入られるなんて贅沢なのにね」

ゼンタ「そうなんだよお前! わかっているな。ワタルさん、いつも嫌がっているが、俺には理解できない。むしろ光栄ではないのか?」

菫「そうですよね」

ゼンタ「あんな美しい人に頼られて嫌がるなんて、どうかしているだろ」

菫「……難儀な恋をしているのね」

ゼンタ「恋⁉ そんなんじゃない! そんな陳腐な言葉を使いカボシ姫を愚弄するな」

菫「陳腐⁉ 恋を陳腐と切り捨てるのは愚弄に当たらないの?」

ゼンタ「うるさい。お前いつもうるさいな……お前だって旦那が美しい姫に抱きつかれているぞ。ヤキモチ妬かないのか?」

菫(あっ、わたしが亘を好きだと思っているんだっけ)

菫「そうですね……」

ゼンタ「綺麗な姫にあんなに慕われたら本望だろうに。年増好きにはカボシ姫の魅力がわからないのかな」

菫(亘が年増好きというの騎士団長内では公認なんだな……)

菫「カボシ姫は何歳なのでしょうか?」

ゼンタ「20歳だ」

菫「あら、ゼンタ様より年上? 亘が18歳だから、ゼンタ様は18より下なんですよね?」

ゼンタ「16だよ、悪いか!」

菫「えっ16歳なの?」

ゼンタ「そうだよ! バカにするな」

菫「えっ、しませんよ。すごいと思います。その年で騎士団長を務めて、団員をまとめて。大変なこともきっとあるでしょう。自分より年上や長くいる方には、色々言われるでしょうし……すごいね、ゼンタ様」

ゼンタ「お、お前になにがわかる……」

菫「あなたの苦労はわかりませんが、大変だと想像はつきますよ。頑張っているのね」

ゼンタ「……」

菫「ゼンタ様? どうしたの、うつむいて」

ゼンタ「お、おい、突然覗き込むな! 離れろ」

菫「わっ……」

ゼンタ「! わ、悪い! 痛かったか?」

菫「大丈夫ですよ、少し手の甲をひっかいただけです」

ゼンタ「血が出てる……悪かった、医務室に行こう」

菫「えっ、これくらい平気ですよ。それに今動いたらカボシ姫を見失いますよ」

ゼンタ「それはいい。今はお前の手の甲に痕が残らないかが心配だ」

菫「え? 今はカボシ姫を護衛中じゃないの?」

ゼンタ「は?」

菫「カボシ姫を遠くから見守って、怪しい人がいないか見ていたんでしょ?」

ゼンタ「ええと……」

菫「誰にも言うなって言ってたから、秘密で仕事をしてるんじゃないの?」

ゼンタ「違う……ただ俺が見ていたかっただけだ。今はお前の怪我が心配なんだ。一緒に医務室に行こう」

菫(あっ、仕事じゃなかったのか! じゃあわたし、ゼンタ様の恋路を邪魔する形で声をかけちゃったのね!)

菫「すみません、馬に蹴られてきます……」

ゼンタ「なんで⁉」

菫「医務室は本当に大丈夫です。じゃあ、わたしはこれで……」

ゼンタ「どうしたんだよ? 医務室が嫌なら俺の部屋で手当てしようか?」

菫「いえいえ。こんなの舐めておけば治りますから」

ゼンタ「……じゃあ早くやれよ」

菫「え?」

ゼンタ「早く舐めて治せ」

菫「ふふ、あとでやりますから。心配ありがとう」

ゼンタ「そんな言葉はいらないんだよ。俺が見ているところでやれよ。そうしないと安心できないから」

菫(……えっ?)

菫「わ、わかりましたよ」

ゼンタ「……おい、そんな表面上舐めるくらいじゃ治るわけないだろ。手、貸して」

菫「え?」

ゼンタ「俺が舐める」

菫(えーーーー⁉)

菫「ちょっ……ゼンタ様……ふ、ふふっ、くすぐったい……」

ゼンタ「おい、引っ張るなよ。舐めづらい」

菫「……んっ……」

ゼンタ「変な声だすな……」

菫「……」

ゼンタ「……目を潤ませるな! 俺が変な気分になるだろ」

菫「……ゼンタ様のせいです」

ゼンタ「は? はあ? 俺は純粋な気持ちでだな……」

菫「ゼンタ様の頬は?」

ゼンタ「は?」

菫「わたしがさっきひっかいたゼンタ様の頬。少し血がでましたけど」

ゼンタ「俺のはいいんだよ」

菫「あら、わたしはダメでゼンタ様はいいの?」

ゼンタ「俺はいいの。お前は痕が残ったら困るだろ。おい、舌出すな! 近づくなよ」

菫「お返し」

ゼンタ「いいよ、俺は! やめ……ろ……っ」

菫「頬は自分では舐められませんものね」

ゼンタ「や、やめ……んっ……」

菫「ゼンタ様も良い声出しますね……かわいい……」

ゼンタ「……変な舐め方するなよ……ワタルさんに誤解されるぞ……」

菫(悔しい……わたしが年下の男の子に翻弄されるなんて、何かの間違いだわ)

ゼンタ「も、もうやめろ……あっ……」

菫「はい、終わり。危なかったね」

ゼンタ「なにが!」

菫「もう少し下の方引っ掻いてたら、唇に当たってたから」

ゼンタ「は?」

菫「ああ、危なかったね、じゃなくて、惜しかったねって言えば良かったのかな?」

ゼンタ「な、なんだお前! この魔女め! 俺を誑かすなよ」

菫「あら、仕掛けてきたのはあなたの方ですよ」

ゼンタ「……」

菫「妊娠したら、責任取ってね」

ゼンタ「は、肌をなめたくらいで妊娠するか! バカ!」

菫(危なかった……やり込められるところだった……年下の男の子、侮れないな……)

☆終わり☆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

3.戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の愛人候補になる3★空中楼閣籠城編★

喧騒の花婿
恋愛
2.戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の愛人候補になる2 ★陰陽師当主編★ の続きの物語です。 天界国青騎士団長ヒサメと、 異世界から神隠しに遭ったニンゲンが かどわかされ 倭国の人質となってしまった。 倭国側の要望は、天界国に幽閉されている 竜神女王とヒサメの人質交換と、和平交渉。 天界国はヒサメを無事取り戻し、 倭国との和平交渉を有利に進めることが できるだろうか。 ★R15です。苦手な方は気をつけて下さい。 該当の話にはタイトルに※が付いています。 ★設定上、魔界は14歳が成人であり、アルコールを飲める年齢になります。 ★閑話は、時系列順不同です。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

2.戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の愛人候補になる2 ★陰陽師当主編★

喧騒の花婿
恋愛
【戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の 愛人候補になる1 ★月読教改革編★】 の続きの物語です。 ★2.陰陽師当主編★は6章で終わります。 ★3.空中楼閣籠城編★に続きます。 天倭戦争で逝去した倭国王室陰陽師長 稲田 八雲の跡取り問題が表面化しつつあった。 本妻、マユラとの間に子供ができず 愛人を複数抱えていた八雲。 愛人の子供、太一は 果たして本家に認められ 次期当主として稲田家に君臨する ことができるだろうか。 ★R15です。苦手な方は気をつけて下さい。 該当の話にはタイトルに※が付いています。 ★閑話は、時系列順不同です。 ★IF番外編√は 本筋以外の魔人と恋愛したら という、もしも√を書いています。 本編とは異なる設定ですので、 ご了承下さる方はお気を付けて 読んで下さると幸いです。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

開発者を大事にしない国は滅びるのです。常識でしょう?

ノ木瀬 優
恋愛
新しい魔道具を開発して、順調に商会を大きくしていったリリア=フィミール。しかし、ある時から、開発した魔道具を複製して販売されるようになってしまう。特許権の侵害を訴えても、相手の背後には王太子がh控えており、特許庁の対応はひどいものだった。 そんな中、リリアはとある秘策を実行する。 全3話。本日中に完結予定です。設定ゆるゆるなので、軽い気持ちで読んで頂けたら幸いです。

処理中です...