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第4章★リョウマVS裕★

第2話☆ライデン退治☆

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「菫、俺の怪我は大丈夫だ。ライデンを倒しに行こう」


 リョウマが力強く言う。カルラも頷くと菫をみた。


「魔人の命を優先にしなくては、騎士をやっている意味がないな。菫、考えの選択肢に俺とリョウマも使って。アンタの力の一部だから」


 2人を見上げると、力強い視線で菫を見ていた。


「それはダメです。2人に何かあったらわたしもう生きていけない」


「バカだな、菫。俺たちの力を見くびってないか?」


 カルラが菫の目線に合わせて背を屈めながら言う。


「ああ。侮辱しないでもらおうか、俺たち天界国騎士団長を」



「……すみません。ちょっと、受け身でしたね」



「ああ。魔人の命が最優先だ。行こう」



 3人は頷きあうと、国境の町を出て、ライデンのいる小さな森の中へと向かった。





 森の中とはいえ、ライデンのいる場所はすぐにわかった。雷がライデンの大きな体に落ちていたからである。



 ただ、雷が落ちるごとに、ライデンの立派な鬣が風に靡き、元気になっていくようだった。


 まるで大きなライオンのように遠吠えをすると、落ちてくる雷をまるで避雷針のように吸収していた。



 体長は大きく、魔人の数倍の身長があるだろう。


 体は1つだが、首から三叉に分かれており、ライオンのような顔が3つある。体の色は黄色で、鬣は金を帯びていた。


「こっわ。体が1つに目が6つ。動体視力、良さそう……」


 木の陰に隠れながらカルラが言う。


「一気に畳み掛けるしかないな。あいつに気付かれる前にカルラと俺で1つずつ首を切り、最後に残った首を切る」


「闇雲に切るよりは……」


 リョウマの言葉に菫は少し考える。


「体が1体に、頭が3つあるということは、思考が3つあるけれど、体は1つしかないということです。しかし、今まで生き残っているということは、リーダーとして体に指令を出している頭があるはず。そのリーダーの頭をなくせば、他の2頭は混乱するのでは?」


 菫の言葉にカルラも頷く。


「真ん中の首が司令塔じゃないかな。他の2つに比べて、首があまり動いていない。左右2つの首が目の役割をしていると思う。真ん中の首一点集中攻撃が効くと思う」


「わかった。俺が左右2体の囮になる。カルラはそのスキに司令塔を倒せ」


「了解~」


 剣を抜いたリョウマは、迷いなく木の陰から飛び出し、左の首めがけて剣を振った。


 リョウマが攻撃するスキに、カルラも剣を抜く。


「カルラ様、お気を付けて……」


 思わず声をかけた菫に、カルラは微笑んで頷いた。


「うん、行ってきます」


 カルラはそう言うと、菫を安心させるように彼女の頭をそっと撫でた。


 カルラも飛び出し、真ん中の首目掛けて攻撃を始めた。


 リョウマは完全に剣技に頼り切っているようだが、カルラは剣はあまり得意ではないようだった。


 懐から和紙を取り出すと、御札のようにしてライデンに向かって投げる。和紙がライデンの体にそっと付くと、不思議な光が出て、ライデンの体が爆ぜた。


 真ん中の顔がカルラに向かって大きな咆哮を上げた。その瞬間、カルラの右腕に雷が直撃する。


「ぐっ……」


 右腕を押さえたカルラが、その場に倒れる。
菫は急いでカルラの元に向かうと、彼を引き連れるように木の陰に隠れた。


「カルラ様!」


 急いで右腕を治療する。もちろんヒサメのような力はないので、普通に塗り薬と包帯に頼るしかなかった。


「情けねー……アンタ一人護れないなんて……」


 息を荒くして呟くカルラに、菫は首を振った。


「わたしはカルラ様に救われました。護って下さっていますよ」


「やはり俺は力が弱いな……アイツと違って……」


「カルラ様?」


 最後の方はカルラの声が聞こえなかった。ライデンの咆哮にかき消されたからだ。


「くそっ、切れない! 硬いぞ、こいつの体!」  


 リョウマが叫ぶ。


「リョウマ様、尻尾は切れますか? 尻尾を切れば、バランスを崩して立てないはず」


「やってみる!」


 菫の言葉にリョウマが頷くと、尻尾へと攻撃を切り替えた。


 まだ治っていないので、右腕をかばうようにしている。


「リョウマ、ライデンの尻尾には伝説の鏡が入っていると伝えられている! 尻尾の上部を切れ、鏡を傷つけるな!」


「わかった!」


 カルラの声にリョウマは答えると、攻撃対象を尻尾へと変更する。


「菫、俺も行ってくる。手当て、ありがとう」


 カルラが微笑むと、剣を掴んで木陰から飛び出した。


 菫は周囲を見渡すと、何か武器になりそうな石を集める。


「お前は弱いから誰の役にも立たない」

「魔物1匹も倒せないなんて、上に立つ資格もない」

「王女か……あれは王子たちと違い、何の力もない欠損品ですよ」

「人質として他国に出すくらいしか価値がないのでは?」

「顔だけは整っているから、天界国王や邪神国王の慰み者として献上するのも良いかもしれぬな」

「倭国の役にも立てない飾りなど、金だけ使う廃棄物だな」

「ははは、廃棄物か。上手いことを言う」



 空耳か、大臣たちの笑い声が聞こえた。役立たずの王女。


 何の力もない出来損ない。


 菫は昔言われたことを思い出し、しばらくぼうっとしてしまった。


   しかし、雷の音で我に返ると、カルラやリョウマが尻尾を攻撃しやすいよう、正面に向かい石を投げた。


 一瞬ライデンの動きが止まり、3体の視線を菫に合わせる。


 菫は囮になりやすいよう、わざとらしく音を立て逃げた。


 咆哮が聞こえ、菫の方へライデンが向かってくる。


「菫!」


 2人の声が聞こえたが、菫は構わず囮として逃げ出した。


「菫、危ない!」


 ライデンの前足の牙が菫に当たる直前、フワリと菫の体が持ち上がる感覚がした。


「大丈夫かい、お嬢さん?」


 菫をさらうように横抱きにして見下ろしていたのは、眉目秀麗な男だった。


 くせっ毛を無造作に靡かせ、漆黒の目と髪を持った、体格の良い青年が、菫をじっと見つめていた。


☆続く☆
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