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第3章★心を操る秘薬開発★
第6話☆喪失☆※
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天蓋付きのベッドはとても広く弾力性があった。
裸にされた菫は、馬乗りにした先ほどと打って変わっておとなしくカルラに従った。カルラも全裸になり、もう何度目かわからなくなる程菫の中で果てた。
荒い息をしながら仰向けになり、カルラは横にいる菫を盗み見る。
何を考えているかわからない横顔だった。月の光が窓から降り注ぎ、菫の体に光を当てる。綺麗だった。
「どうだ、初めて傷つけられた気分は」
特に何ともない表情の菫を見て、苦々しい気持ちになってカルラは聞いた。
「……あなたの痛みに比べたら……全然」
話した後すぐぽたぽたと大粒の涙を流した菫は、両手で顔を隠した。
カオスから聞いた菫の話だと、この涙は自分が傷ついたからではなく、きっと自分とカオスに想い馳せての涙なのだろうとは思った。
もっと涙を流させないと、カオスが浮かばれない。カルラはそう思い、もう一度菫の手首を掴んで引き寄せた。
「顎を使って咥えろ。八重歯を立てるなよ」
体力的に厳しそうだったので、カルラは座って菫を跪かせた。
これもおとなしく従う。
カルラの正体を知ってからの菫は、従順過ぎてカルラの方が驚いていた。
「先ほど馬乗りになったりしていたから、お前は遊び人かと思っていた」
「……」
「悪くないな。俺が王女の初めての男っていうのも」
まあ、俺も初めてなんだけど、とカルラは心の中で付け加えた。
とにかく菫を傷つけるためにはどうしたら良いか考えた。口移しのキスも効かず、体を傷つけられてもそれほどダメージを受けている様子ではない。次は何をすればいい?
カルラはため息をついた。
カオスは可愛い妹だった。菫の侍女に選ばれたときは飛び上がるほど喜んだ。カオスのことを気遣ってくれる、優しい王女だということはカオスを通じて知っていた。
自分も菫のことを知った気になり、カオスの話を聞いてはどんどん想いを募らせた。きっと、菫の親兄弟より彼女のことを知っている。ただ勝手に憧れていた。
それは恋に似ていた。
しかし妹を間接的に殺されたという裏切り行為に、カルラは絶望感を覚え、菫を憎み、恨んだ。
「うっ……」
菫の口の中で果てたカルラは、もう何も考えずにいた。ただ菫はカルラを見て大人しくしている。
それを見たカルラはぽたっと大粒の涙を流す。
つらいのはきっと菫だって同じだっただろう。
優しい彼女は、最後まで残ると言ったはずだ。
けれど、周囲の魔人たちから強引に連れ出され、逃げ出さざるを得なかったのは容易に想像できる。王族を途絶えさせないために。
カオスの中の菫は、前向きで楽しく、権力を笠にかけず、ユーモアがあって、とても心優しい人だった。
優しい人だから、きっと人一倍傷付いた。国民を救えなくて、誰よりも涙を流したはずだ。
それでもカルラは許せなかった。大切な妹を殺されたのだ。王族の命がいくつあったって足りない。
悔しくて涙が止まらなかった。そんなカルラを見て、菫はカルラの涙を人差し指でそっと拭った。
「……やめてくれ。同情はされたくない」
菫の手を振り払うと、カルラは顔を反らした。
「カルラ様……もし、あなたがよければ、生き残った倭国民が隠れて暮らしている隠れ里があります。そこに行くのはどうでしょう」
菫の提案に、カルラは首を振った。
「もうあんたの国で暮らしたくない。倭国の王族に復讐することしか考えてない。その隠れ里の存在も、天満納言に伝える」
声が震える。涙が止まらない。カルラは自分を情けなく思う。守れなかったのは自分なのに、誰かのせいにしないとやっていけなかった。
それから3日経ったが、リョウマたちはまだ氷の魔物を討伐出来ていないようだった。しかし、ニンゲンは確保したという連絡があったので、死の監獄には安堵のため息が聞こえて来た。
菫はカルラの部屋で3日間過ごした。この部屋を出るなとカルラは命令していた。
騎士団長の個室のため、大きな風呂やトイレも付いた広い個室で、大体部屋をでなくても大抵の暮らしは出来たからだ。
人の心を操る薬を開発しに行っている以外は、カルラは菫の元で過ごした。休憩時間にも時間を惜しむかのように来て、菫をずっと抱きしめて離さなかった。
復讐とはいえ、自分の欲望も満たしているような部分があった。
その日は、月明かりが綺麗な夜だった。
研究から帰ったカルラは、窓辺に立って月を見上げている菫を見て思わず見惚れた。何を考えているかわからない目をしていたが、月光に映えた彼女の白い肌は美しく、カルラを見る慈愛に満ちた目は綺麗だった。
「おかえりなさい、カルラ様」
笑顔で迎える菫に、カルラは「ただいま……」と言ってしまい、後悔した。ここまで急いで走ってきたのがばれたかと思った。
「今日は満月ですよ」
菫の顔に月の光が反射する。カルラはドアを閉めると窓辺に大股で向かい、菫を抱き締めた。
「月なんか興味ない。アンタの体を見せろ」
「……はい」
菫は少し悲しそうな顔をすると、ベッドに向かう。
きっと自責の念があるのだろう。
だから俺に体を預ける。後ろめたい気持ちがあるから、倭国民のために奉仕をしている気でいる。
倭国民なら、誰にでも乞われたらきっと寝る。
カルラは菫をそう分析していた。
菫を抱き寄せると、潤んだ目でカルラを見る。驚くほど従順なのは、カオスを殺したと責めたから、罪滅ぼしのつもりなのかもしれない。
カルラはもう何も考えないように、菫の唇を貪った。
☆続く☆
裸にされた菫は、馬乗りにした先ほどと打って変わっておとなしくカルラに従った。カルラも全裸になり、もう何度目かわからなくなる程菫の中で果てた。
荒い息をしながら仰向けになり、カルラは横にいる菫を盗み見る。
何を考えているかわからない横顔だった。月の光が窓から降り注ぎ、菫の体に光を当てる。綺麗だった。
「どうだ、初めて傷つけられた気分は」
特に何ともない表情の菫を見て、苦々しい気持ちになってカルラは聞いた。
「……あなたの痛みに比べたら……全然」
話した後すぐぽたぽたと大粒の涙を流した菫は、両手で顔を隠した。
カオスから聞いた菫の話だと、この涙は自分が傷ついたからではなく、きっと自分とカオスに想い馳せての涙なのだろうとは思った。
もっと涙を流させないと、カオスが浮かばれない。カルラはそう思い、もう一度菫の手首を掴んで引き寄せた。
「顎を使って咥えろ。八重歯を立てるなよ」
体力的に厳しそうだったので、カルラは座って菫を跪かせた。
これもおとなしく従う。
カルラの正体を知ってからの菫は、従順過ぎてカルラの方が驚いていた。
「先ほど馬乗りになったりしていたから、お前は遊び人かと思っていた」
「……」
「悪くないな。俺が王女の初めての男っていうのも」
まあ、俺も初めてなんだけど、とカルラは心の中で付け加えた。
とにかく菫を傷つけるためにはどうしたら良いか考えた。口移しのキスも効かず、体を傷つけられてもそれほどダメージを受けている様子ではない。次は何をすればいい?
カルラはため息をついた。
カオスは可愛い妹だった。菫の侍女に選ばれたときは飛び上がるほど喜んだ。カオスのことを気遣ってくれる、優しい王女だということはカオスを通じて知っていた。
自分も菫のことを知った気になり、カオスの話を聞いてはどんどん想いを募らせた。きっと、菫の親兄弟より彼女のことを知っている。ただ勝手に憧れていた。
それは恋に似ていた。
しかし妹を間接的に殺されたという裏切り行為に、カルラは絶望感を覚え、菫を憎み、恨んだ。
「うっ……」
菫の口の中で果てたカルラは、もう何も考えずにいた。ただ菫はカルラを見て大人しくしている。
それを見たカルラはぽたっと大粒の涙を流す。
つらいのはきっと菫だって同じだっただろう。
優しい彼女は、最後まで残ると言ったはずだ。
けれど、周囲の魔人たちから強引に連れ出され、逃げ出さざるを得なかったのは容易に想像できる。王族を途絶えさせないために。
カオスの中の菫は、前向きで楽しく、権力を笠にかけず、ユーモアがあって、とても心優しい人だった。
優しい人だから、きっと人一倍傷付いた。国民を救えなくて、誰よりも涙を流したはずだ。
それでもカルラは許せなかった。大切な妹を殺されたのだ。王族の命がいくつあったって足りない。
悔しくて涙が止まらなかった。そんなカルラを見て、菫はカルラの涙を人差し指でそっと拭った。
「……やめてくれ。同情はされたくない」
菫の手を振り払うと、カルラは顔を反らした。
「カルラ様……もし、あなたがよければ、生き残った倭国民が隠れて暮らしている隠れ里があります。そこに行くのはどうでしょう」
菫の提案に、カルラは首を振った。
「もうあんたの国で暮らしたくない。倭国の王族に復讐することしか考えてない。その隠れ里の存在も、天満納言に伝える」
声が震える。涙が止まらない。カルラは自分を情けなく思う。守れなかったのは自分なのに、誰かのせいにしないとやっていけなかった。
それから3日経ったが、リョウマたちはまだ氷の魔物を討伐出来ていないようだった。しかし、ニンゲンは確保したという連絡があったので、死の監獄には安堵のため息が聞こえて来た。
菫はカルラの部屋で3日間過ごした。この部屋を出るなとカルラは命令していた。
騎士団長の個室のため、大きな風呂やトイレも付いた広い個室で、大体部屋をでなくても大抵の暮らしは出来たからだ。
人の心を操る薬を開発しに行っている以外は、カルラは菫の元で過ごした。休憩時間にも時間を惜しむかのように来て、菫をずっと抱きしめて離さなかった。
復讐とはいえ、自分の欲望も満たしているような部分があった。
その日は、月明かりが綺麗な夜だった。
研究から帰ったカルラは、窓辺に立って月を見上げている菫を見て思わず見惚れた。何を考えているかわからない目をしていたが、月光に映えた彼女の白い肌は美しく、カルラを見る慈愛に満ちた目は綺麗だった。
「おかえりなさい、カルラ様」
笑顔で迎える菫に、カルラは「ただいま……」と言ってしまい、後悔した。ここまで急いで走ってきたのがばれたかと思った。
「今日は満月ですよ」
菫の顔に月の光が反射する。カルラはドアを閉めると窓辺に大股で向かい、菫を抱き締めた。
「月なんか興味ない。アンタの体を見せろ」
「……はい」
菫は少し悲しそうな顔をすると、ベッドに向かう。
きっと自責の念があるのだろう。
だから俺に体を預ける。後ろめたい気持ちがあるから、倭国民のために奉仕をしている気でいる。
倭国民なら、誰にでも乞われたらきっと寝る。
カルラは菫をそう分析していた。
菫を抱き寄せると、潤んだ目でカルラを見る。驚くほど従順なのは、カオスを殺したと責めたから、罪滅ぼしのつもりなのかもしれない。
カルラはもう何も考えないように、菫の唇を貪った。
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